第51話 Bara brith ~バラブリス~

0

okashi


<Bara brith バラブリス>

ウエルッシュケーキと並んでウエールズ地方を代表するお菓子が「バラブリス」。ドライフルーツとスパイスが入ったローフ型のケーキです。

赤いドラゴンの旗がはためくウエールズのマーケットには沢山のバラブリスが並んでいます☆

赤いドラゴンの旗がはためくウエールズのマーケットには沢山のバラブリスが並んでいます☆

さしあたって「ケーキ」とご紹介しましたが、実はこれをケーキとするか、はたまたブレッドとみなすかでウエールズでは意見はふたつに分かれます。というのもこのバラブリスにはイーストで膨らませるタイプとベイキングパウダーで膨らませるタイプとの2タイプが存在するため。ある人は「伝統的なバラブリスはイーストを使って発酵させ、出来るだけ早く食べるのが美味しいのよ」と言い、ある人は「ベイキングパウダーを使って焼いて、時間を置いてしっかり落ち着かせてから食べるのが美味しいのよ」と言います。昨今ウエールズでよく見かけるのは簡単に作れて日持ちのする後者のタイプですが、探せばイーストタイプも見つけることができます。いずれにせよ、薄くカットしてたっぷりとバターを塗ったバラブリスは、とにかく紅茶と合う飽きのこない味わいです。barabrith2

もともと独立した1国家であったウエールズ地方にはウエールズ語が今も存在するのですが、バラブリスはウエールズ語で「斑点のあるパン」の意味。もちろん斑点とは中に入っているカランツやレーズンをさしています。今でこそウエールズ中で使われている「バラブリス」と言う名称ですが、もともとはウエールズ北部のみで使われていたものでした。北部では伝統的にイーストタイプのものが作られており、ブレッドという意味のbrithという語を充てていたのもうなづけます。かたや南部ではどんな名で呼ばれていたのかと言うと、cake を意味するteisen という語をつかいteisen dorth」(dorth= loaf の意)と呼ばれていました。つまり「ローフケーキ」の意。ベイキングパウダーまたは重曹を使って膨らませる、ローフ型のフルーツケーキとも言える南部のそれにぴったりの名前ですね。とは言え、ウエールズでは10人いれば12~13のレシピがあるといわれるバラブリス。人によってドライフルーツを紅茶に漬けてから加える人、漬けない人、バターなどの油脂やマーマレードを入れる派、入れない派、スパイスの種類や量も様々。みなそれぞれの家族から受け継いだ、あるいはお気に入りの配合があるのですから、ブレッドタイプとケーキタイプの二つの大きなくくりに分けようとするのも意味がないのかも知れません。

はじめからたっぷりのバターが塗られてでてきたバラブリス☆

はじめからたっぷりのバターが塗られてでてきたバラブリス☆

もともとバラブリスはまだオーブンを村で共同で使っていた時代、オーブンの残り火で、その日余ったみんなの残り物のパン生地を集めたものに、ドライフルーツを加えて焼いたものだったとか。あるいは、パン生地を作るのが遅くなってしまい、オーブン待ちの列の最後尾になってしまった婦人がパンの味をごまかすために、カランツを少し加えたのがはじまりなのだという説も。当時はオーブンにパンを入れる順番が遅くなると、オーブンの温度が下がり始めてしまい美味しく焼けなかったのだそうです。確かに残り生地や、最適の温度で焼けなかったパンでも、甘いドライフルーツが入っていれば美味しくなりそうですものね(笑)。時が経ち、各家庭ごとにオーブンを持てるようになった今も、作り続けられているバラブリス。その事実がこのお菓子の美味しさを物語っています。

寒い日には身も心もあたたまる味わい☆

寒い日には身も心もあたたまる味わい☆

風がひどく吹きすさぶある寒い日、たまらず逃げ込んだウェールズのティールーム。暖炉の炎もさることながらそれ以上に、一切れのバラブリスと温かいミルクティーが冷えた身体を芯から温めてくれました。あのバラブリスの美味しさを今でもよく憶えています。

 

Share.

About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

コメントを残す