<Meringue roulade メレンゲルーラード>
メレンゲ大好きのイギリス人。第4話で、焼いたメレンゲにクリームとフルーツをのせる「パブロヴァ」というお菓子をご紹介しましたが、それの変化バージョンともいえるのが本日のお菓子「メレンゲルーラード」。
Roulade (ルーラード)とは「巻いたもの」を意味するフランス語からきており、イギリスではロールケーキのことをルーラードと呼びます。ストロベリールーラードとか、チョコレートルーラードといった具合。つまりメレンゲルーラード=メレンゲのロールケーキということ。メレンゲ=堅く乾燥焼きされたもののイメージが強い私たち日本人にとって、メレンゲでロールってどういうこと??と思ってしまいますよね。でもパブロヴァのときのメレンゲを思い出してください。イギリスのメレンゲは外はサクサク中ふんわり。なので巻けてしまうのです。パブロヴァと同様に卵白にお砂糖を加えながら泡立て、しっかりしたメレンゲを作ったらあとは、ロールケーキの時の要領。天板に薄く延ばして焼き、冷めたらクリームをひろげて、さぁ Roll it up !
メレンゲですからもちろんひび割れしますが、そんなことはお構いなし、中が柔らかいのですっかり折れてしまうことはありません。みしみしみし~っと言わせながら巻くのは結構楽しいものです(^^)フィリングはというと、外は甘いメレンゲなので、クリームには甘みはほとんど必要なし。できれば酸味のあるフルーツをプラスするとさらにおいしくいただけるのはやはり、パブロヴァと一緒。結局形が違うだけで構成は一緒ですから。
イギリスでは夏のベリーの季節にいちごやラズベリーを巻くのが人気ですが、日本でいちごのシーズンに作るのなら、ブッシュドノエル代わりにするのも手。ひび割れた表面がまるで木の表皮のようですから。ちなみにイギリスでは、ブッシュドノエルのことは「Yule Log (ユールログ)」といいます。Yule Log とはクリスマスに燃やす特別な大きな薪のこと。12日間燃やし続けるという その薪には幸運や豊穣への願いが込められています。そんな習慣も今はほぼ消えてしまったようですが ケーキにはまだその名残が残っています。
さて、イギリスのロールケーキ、「ルーラード」の他に実はもう一つ違う呼び名があります。それは私たちにもおなじみの「Swiss Roll (スイスロール)」。ルーラードは巻いたもの全般を意味するので、チキンルーラードやサーモンルーラードなどとお料理にも使われることがあるのですが、「スイスロール」はジャムやクリームを巻いた甘い物だけに使われる呼び名。
何故イギリスでスイスロールと呼ばれるにいたったかは定かでないのですが、ヴィクトリア女王がスイス訪問の際に持ち帰ったというのが通説。でもどうやらそれも怪しいらしく、、、結局真相は藪の中。余談になりますが、実際スイスに行ってよく遭遇したのはロールーキではなく、「ジャポネ(日本人)」というお菓子。アーモンドやヘーゼルナッツ、バタークリームなどを使ったケーキなのですが、何故これがジャポネなの?という姿。これと同じく、スイスの人はきっと、何故これがスイスロール?と思っているのかもしれませんね。
メレンゲルーラードから、ユールログやスイスロールへと流れてきた今日の「イギリスおかし百科」。どこまでも流れていきそうなので、今日のところは『イギリスでは通じそうな「ロールケーキ」が通じず、通じなそうな「スイスロール」が通じますよ』というお話しで筆をおくことにします~☆