地上の楽園:ケルムスコット・マナー

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Uk☆エコ・ガーデニング格闘記


先日オックスフォードシャー州、コッツウォルズの村にあるマナーハウス、ケルムスコット・マナーに行ってみました。デザイナー、クラフトマン、詩人、社会主義者であり、ビクトリア朝時代にアーツ・アンド・クラフツ運動を牽引したウィリアム・モリスの別荘として使用されたお屋敷です。モリスはケルムスコット・マナーを初めて見た際に一目ぼれし、マナーハウスを見た帰りの電車の中で書いた友人の手紙の中で、「地上の楽園」と称したそう。行く前から大興奮です!

IMG_0668_convert_20151001182630モリスの著書の表紙にも使われた景色は今もそのまま

モリスはケルムスコット・マナーのガーデンや自然から多くのインスピレーションを受け、そこから現在も愛される多くのデザインをうみだしたと言われています。モリスのデザインした壁紙やファブリックには多くの植物や動物が描かれていますが、彼が当時見た風景、インスピレーションを受けた庭や周囲の景色が今もそのまま保存、復元され管理されています。

IMG_0673_convert_20150924040121スタンダード仕立てのバラ

お屋敷は1600年前後に建てられ、現在は歴史的価値の高い建造物としてグレード1の指定を受けています。モリスは友人でもあった前ラファエル派の画家ロセッティと共同で1871年に屋敷のリースを開始、数年後にロセッティは去り、以降はモリスと彼の家族が使用したそうです。モリスの理想とするコミュニティの家として中心的な役割を果たし、完璧なライフスタイルの象徴とされたマナーハウス。地元で調達した建築資材とこの地方に伝わる建築手法で建てられた建物を愛したモリスは、屋敷の概観にはほとんど手を加えなかったそうです。

IMG_0682_convert_20150924040336壁や窓の下が多くの植物で覆われ建物と庭が一体化してます

屋敷の中には17世紀前後にマナー・ハウスを建てたターナーとその子孫が所有していた家具類、ロセッティが選んだ装飾品、モリスがロンドンの所有していた家のためにデザインされた物などが展示されています。モリスの妻や娘の手がけた刺繍の作品もあって手芸好きにはたまりません。特にモリスの寝室にあるベッドのペルメットの刺繍が素晴らしいです。彼はターナー家が使用していた17~18世紀に作られたベッドを愛し「ケルムスコットのベッドに捧げる」詩を書いたのですが、彼の詩を娘がデザインしペルメットに刺繍したそうです。また彼女はカーテンやベッドスプレッドのデザインも行い、母(モリスの妻)や友人とともに刺繍を施したそうです。

IMG_0543_convert_20150924032042各部屋にスチュワードさんがいるので何でも質問できます

マナーハウスの中から見る風景は昔の資料の中にある景色とほぼ変わりありません。ケルムスコットの村はテムズ川のすぐそばにあります。こんなところからテムズは流れているのかと思って調べると、コッツウォルズの村からロンドンを通って海に流れこむイギリスで2番目に長い川(全長346km)だとか。

IMG_0587_convert_20150924033241マナーハウスから徒歩2分でテムズ川沿いのパスに出れます

テムズ川とその周辺でモリスが見つけ庭に持ち帰った植物、動物をモチーフに、彼の娘がデザインしモリスの妻が刺繍を施したコット・キルトが、モリスの妻のベッドルームに期間限定で展示されていました。現在は別家族に所有されているものを一時的に借りて展示しているのですが、その購入のため募金を募っているそうです。

IMG_0604_convert_20150924033720紅葉が始まっていました

建物裏にある小さな庭。9月も末になるとお花が少なくなってきますね。庭は現在マナーハウスを管理・運営している団体によって復元されたそうです。ビクトリア朝時代によく使われていた植物を中心に、モリスのデザインや彼とその家族が残した資料にあった植物の記録を参考に植栽したんだとか。お屋敷の前には大きなマルベリーの木がありました。

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モリスは初めてマナーハウスを訪れた際に垣根と高い壁に覆われた庭をいたく気に入り、建物同様、庭の構造にもほとんど手を加えることがなかったそうです。

IMG_0697_convert_20150924040635棒に支えられていたマルベリーの木

当時あったキッチンガーデンは現在はローンガーデンになっていてハーブなどが周囲に植えられていました。一説によるとモリスはそのキッチンガーデンでイチゴを食べている鳥を見つけて、有名な「イチゴ泥棒」のデザイン(リバティでも販売されてますね)のインスピレーションを受けたといわれています。モリスにゆかりある別の場所を訪ねた時にも同じような話を聞いたので、本当のところはどこなのかわからないんですけどね。敷地内には同じくインスピレーションを受けたといわれる大きな柳の木もあって、なんだか感動してしまいました。

IMG_0693_convert_20150924040457ローンガーデンでくつろいでいた猫

当時の建物の一部は現在カフェやショップ、展示室として利用されています。ショップにはここぞとばかりにモリスグッズが並んでいて、つい散財してしまいました。ステーショナリーからインテリアやキッチングッズ、ファブリック、ジュエリー、本、バッグ、なんでもござれです。お茶や買い物の時間も十分見越してマナーハウスを見学することをおすすめします!残念ながら私はマナーハウスに向かう道中の渋滞で予定より遅く着いたため、お茶する時間がなく弊店間際にあわてて買い物するはめになりました。とほほ。公式サイトで情報をご確認の上、たっぷり楽しめるようプランをたててからお出かけください!

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ガーデン名 Kelmscott Manor
住所 Kelmscott Manor, Kelmscott, Lechlade GL7 3HJ
電話番号 01367 252486
営業時間 水、土曜日 11.00am – 5.00pm
URL https://www.sal.org.uk/kelmscott-manor/

★情報は2015年10月時点のものです。事前に必ず公式サイトで詳細を確認してからお出かけ下さい。

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About Author

在英20年、ロンドン郊外の自宅の庭で節約とリサイクル・無農薬をテーマに土いじりに奮闘、花や木、ハーブ、野菜や果樹などいろいろ挑戦中。3年間のカレッジ生活を経て園芸とガーデンデザインの資格を取得。フラワーショーや造園現場の通訳・コーディネイト、デザインや園芸相談、メンテナンスサービス、ガーデンガイド等10年ほどやってます。庭と旅とお笑いをこよなく愛する植物オタク。ここ数年家族の闘病等でガーデニングもブログもサボってました(;^ω^)ぼちぼち復活できるかな?ブログ「イギリスの片隅で庭仕事」http://gardenuk.blog.fc2.com/もそのうち復活する予定。

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