世界遺産キュー王立植物園で過ごす真夏の1日

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Uk☆エコ・ガーデニング格闘記


ロンドン南西部に位置する世界遺産、キュー王立植物園。テムズ川河畔に広がる326エーカー(約132ヘクタール)の広大な敷地内には複数のグラスパレス(ガラスの温室)、歴史ある建築物、様々な様式のガーデン、アート・ギャラリー、湖、森林、カフェ、レストランなど楽しめる施設があります。1759年にジョージ三世の母オーガスタ妃がキュー宮殿の周囲に9エーカーの庭を造ったことからロイヤルガーデンとして始まった歴史あるガーデンです。ロンドンから30分ほどで広大な緑のスペースを楽しめるとあって、観光客だけでなく地元の人にも人気のスポットで2017年の訪問者数は180万人。とにかく広大なので1日で全て周るのは至難の業。私は毎回半分見て終わりといった感じです。しっかり見たい方(特に植物)は公式サイトで季節のハイライトやイベントを調べて、効率よくまわれるよう事前にプランをたてていくことをお勧めします!

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キューのメインの見どころの一つは敷地内に点在する大小様々なグラスパレス。ビクトリア様式の繊細でエレガントなデザイン、白く塗られた金属製のフレームが青空と緑の芝生に映えてフォトジェニックなキューのアイコンです。敷地内で最大規模のテンぺレート・ハウスは1860年に建設が始まり1863年にオープンされたもの。5年かけて行われた大改修が終わり今年5月に再オープンされました。改修前、改修中にも訪れたのですが、5年って長いようであっという間ですね。15,000枚のガラスが交換されペンキで真っ白に塗りなおされた温室の中には沢山の温帯性植物が植えられています。改修前は天井近くまで育って窮屈そうにした植物がありましたが、植栽されたばかりの現在のすっきりした姿にちょっと驚きました。これらの植物もこの先長い時間をかけて太陽を求めて上へ上へと伸びていくんでしょうね。10年後、20年後と変わっていく姿を見たいものです。階段を登って上から見る眺めは圧巻ですので忘れずチェックして下さいね。外の景色もけっこう良いですよ。

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テンぺレート・ハウスの中ではアフリカ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、アジア、太平洋諸島の温帯気候で育つ植物を見ることができます。キューは楽しい観光スポットとしてだけではなく、植物に関する権威ある研究機関としての役割もあり、植物コレクションは世界一と言われています。中には絶滅の危機に瀕した植物や非常に珍しいものもあり、各国の関連機関と提携してそれらの植物を守るための活動を続けています。また、世界中の種子を保管する種子銀行(ミレニアム・シード・バンク)の設備を分園であるWakehurstに設置しています。現在スクールホリデー中ということで子供が楽しめるイベントがいくつか行われています。テンペレート・ハウスの中では巨大なノームが説明のお姉さんとともに館内の植物を案内してくれる無料イベントが開催中。子供向けかなと思ったのですが覗いてみると大人も十分楽しめる内容でおすすめです。

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キューの有名な装飾建築物の一つパゴダ。著名な建築家ウィリアム・チェンバーズにより1762年に完成された中国風の建築物で10階建て高さ約50メートル、253段の階段を登るとキュー敷地内とその向こうに広がるロンドンの景色を堪能できます。現在のロンドンで高さ50メートルと言うと大した事ないかもしれないですが、18世紀に当時の人々がこの眺望を楽しんだのかと思うと少し感慨深いかも?もちろん園内や周囲の風景も激変してると思いますが。こちらも最近大改修が終わった所で、2018年7月から9月30日まで一般公開されています。入園料とは別料金でチケット購入が必要ですが、改修費に大分かかっているでしょうし、今の所限定公開(30分ごとに35人まで限定)なのでせっかくの機会だしと登ってみました。オンラインでの前売りは30分毎に25枚、残りの10枚はキューの入口のチケット売り場とパゴダ1階で販売されているそうです。私は当日朝(平日)キューの入口で購入しましたが、平日だったからか少人数だったからか無事購入できました。

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園内には勅使門(Japanese Gateway)と日本庭園、バンブーガーデンに囲まれた民家(Minka House)など日本のプレゼンスを感じられる箇所もあり日本人としては嬉しい限り。Japanese Gatewayは1910年の日英博覧会の際に作られたもので、京都の西本願寺の勅使門の5分の4サイズのレプリカだそうです。門近くに植栽された桔梗が満開、シュウメイギクの開花がポツポツ始まっていました。日本庭園周辺のアジサイは満開、園内のアジサイも満開でしばらく楽しめそうでした。別の場所にある民家は1900年頃に日本の岡崎市で建築されたもので2001年にキューに寄贈されたそうです。建物内の土間や外の縁側を見ると日本の風土にあった伝統的な建築物の良さを改めて感じます。日本庭園を通じて日本文化に親しんでいただける場になっているようです。

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今年は30度近い猛暑と雨の降らない夏で我が家の庭の植物がかなり疲れた様子になっているので、乾燥と日差しに強い植物を見てみようとメディタレイニアン・ガーデンに寄ってみました。地中海性気候は冬に一定量の雨が降るものの、夏は日差しがきつく乾燥するのが特徴。蒸散量の少ない硬く小さい葉、強い日差しを反射するシルバーリーフなどは乾燥や強くきつい日差しに耐え、地植えであればほぼ水やりをしなくても平気なのでローメンテナンス・ガーデンにも向いています。ただ水が多いと根腐れを起こすので水はけの良い土壌、そして日当たりの良い場所でないと生育が上手くいかないことが多いです。訪れた7月にはシスタスやアガパンサス、ペラルゴニウム、エキウム、各種ハーブの花が咲いていました。いかにも地中海といったオリーブからコルク樫、アービュータスなど樹皮が面白い木々もあって楽しめました。

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夕方になったのでグラスパレスの一つ、1844年に建設されたパーム・ハウスを覗いてみました。その名の通りヤシの木がいっぱいなのですが、ヤシ類の約70%が熱帯雨林で生育しているのでその環境を再現するため湿度が高い状態に保たれていて真夏の昼間はちょっとしたサウナのよう。パーム・ハウスが植物でいっぱいになり手狭になってきたため、その2倍のサイズで建設したのが先に紹介した1863年オープンのテンペレート・ハウスです。ハウス内の約4分の一の植物が絶滅危惧種で既に自然界から絶滅した植物も見ることができます。パーム・ハウスも階段を登って上から眺めることができるのですが、天井に届く勢いの植物たちに覆い隠されていて全体を見渡すことは難しいものの、ハウス前面のパーテアや池など外の風景は一見の価値あり。パーテアはウィリアム・ネスフィールドによるデザインで1848 年に造園されました。時と共に消えてしまったパーテアは1920年に復活され、年に2回ベッディングプラントの植え替えを行い、現在に至ります。

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パームハウスの中にはヤシやソテツ、美しい観葉植物以外にも果物、スパイス、たばこ、コーヒー、茶の木、サトウキビや建築資材、繊維、香料、薬品などに利用される、人類の生活に欠かせない植物で埋め尽くされています。これらの植物は世界中から集められ各国の植民地で栽培されイギリスに莫大の富をもたらせました。ある意味パーム・ハウスはイギリスの植民地時代の歴史の証明と言えるかもしれません。ハウスの裏側にはローズ・ガーデンが作られ、古い品種から沢山のデビッドオースチンをはじめとするイングリッシュ・ローズが咲き乱れています。真夏の暑い時期は少し花が減りますが、オリビア・ローズ・オースチン、ムンステッドウッド、レディ・エマ・ハミルトン、ヤング・リシダス、グラハム・トーマス、プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケントなどは見事に沢山の花を咲かせていました。さすが人気品種、納得です。

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パーム・ハウスの横にある小さなグラス・ハウス、ウォーターリリー・ハウス。こちらも1852年に建設された歴史あるガラスの温室です。他のグラス・パレスと比べると規模は小さく装飾も少ない建物ですが、中の植栽が見事です。オオオニバスの大きなお盆のような葉っぱとスイレンの色とりどりの大きな花が素晴らしく、入った瞬間に誰もが「おぉ~」と声をあげてしまうほどのインパクト。池の周りを大きなラベンダーカラーの花の咲くクライミングプラントが縁取り、周囲には葉のカラフルな植物で彩られていてとても綺麗です。片隅にはおなじみの稲が植えられていたのですが丁度お米が実って穂が垂れ下がっていて懐かしい気持ちになりました。ちなみにオオオニバスは南米で発見された際は別の学名がつけられたのですが、後に当時の女王ビクトリアの名前にちなみ現在の学名Victoria amazonicaに変更されたとか。ビクトリア朝時代に貴族がこぞって栽培していたそうです。庶民がガーデニングを楽しめる時代に生まれて良かったと思ってしまいました。

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園内のグラス・ガーデン。グラス類は世界に9000種ほど存在するそうですが、ここには550種のグラスが植えられています。既に開花が始まっているものも多く、穂が風にそよいでいました。秋に近づくと色づいてまた一層綺麗ですし、冬に霜や雪が降った後の姿もなかなか趣があって良いです。グラスは2月ごろに切り戻し、株分けしてまた植えられるそうです。グラス・ガーデン前には1882年にピレネー山脈の谷を模してデザインされたロック・ガーデンがあります。6大陸をエリアごとに分けて植栽され、岩山のようなロックガーデンの間を歩いて見学できます。2006年には高山植物用のディビス・アルパイン・ハウスが作られ、夏の暑さや冬の長雨に弱いデリケートな植物が植栽、展示されています。

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夏から秋にかけてのお楽しみ、グレイト・ブロード・ウォーク・ボーダーズ。パーム・ハウスからキュー宮殿やオランジェリーに向かってズドーンと延びる散歩道の両側を彩るダブルボーダー。元々はパーム・ハウスができた際にフォーマルな散歩道として作られたのですが、当時の雰囲気を残しつつ遠近法を強調するために新たに西洋イチイの木のトピアリーと共に3万本の植物が植えられ2016年に完成しました。ハイシーズンは6月から9月ですが、春の球根や晩秋に咲くお花やシードヘッドが楽しめる植物もあって長い時期楽しめるように植栽が工夫されています。グラス・ガーデン手前にあるプリンセス・オブ・ウェールズ・コンサバトリー(写真右下)は閉まっていて中が見れず。ウェールズ公妃というとダイアナ妃を思い出しますが、この温室につけられた名前が指すのは歴代5番目のウェールズ公妃、オーガスタ妃だそう(ダイアナ妃は9番目)。こちらは複合的な温室で、一つの温室の中に10の違った育成環境(砂漠地帯~熱帯雨林)が整えられています。綺麗なお花も多いので写真が撮れず残念です。グラス・ガーデンの奥にあるデュークズ・ガーデン(写真左下)はいつも人がいなくて静か。

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今回は初めてキュー・エクスプローラー(写真右上)という5ポンド(子供は2ポンド)で1日乗り放題というトレインのチケットを購入。乗車ポイントが園内のメインアトラクション近くに7か所あり、乗り降り自由、乗車中はガイドが園内の解説をしてくれます。全体を一周すると約40分ほどなので、とりあえず軽く全体を見てみたい方や初めての方で一周して園内の感じをつかんでからお気に入りポイントに行きたい方などに良いかもしれません。乗車ポイントが少なめ、次のトレインが来る時間を考えて動かないといけない、乗客でいっぱい(実は所々空いてるけどみんな席を詰めない)だったりして、ハイシーズンの昼間に効率よく活用するにはコツが必要かも。庭の細かい所まで見ようと思うと歩いて行かないといけない場所も多く、私は結局朝に1周しただけ。この日は30度越えでカンカン照りだったのでいつも以上にみんな(私も)歩きたくなかったのでしょう。ただ今まで見てなかったエリアが見れたり、ガイドさんの面白い説明が聞けたので一周しただけでも利用価値はあるなと思いました。朝や夕方、オフシーズンは余裕で乗れるそうです。

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今回はキュー宮殿とクイーンズ・ガーデン、オランジェリーの辺りを見る時間がなかったです。その周辺にはカフェやツリーハウス、子供が遊べるプレイエリアがあり、2019年にはチルドレンズ・ガーデンもオープンされる予定でお子さん連れの方にはおすすめのエリアです。この夏は子供連れ家族のために不思議の国のアリスも演じられてるそうです(別途チケットが必要)。園内でアフタヌーンティやランチを楽しむのもいいですね。レストランの一つPavilion restaurantは改修中で2019年春に再オープン予定なので要注意です。観光施設内の食事は高くてイマイチなことが多いですが、場所代だと割り切ってがっつり食べて雰囲気を楽しむのも良し、食べ物を持参してピクニックでも良し、ですね。他にもアートギャラリーやガーデン、温室で見逃したところがあるので、また違う時期にどこまで1日でまわれるかチャレンジしてみたいです。皆さんはどの程度見れてるのかとっても気になります。1日で全部見てるビジターさんはいらっしゃるんでしょうか?

ガーデン名 Royal Botanic Gardens Kew
最寄り駅 Kew Gardens(地下鉄ディストリクトライン)、Kew Bridge(ナショナル・レール)
住所 Royal Botanic Gardens, Kew, Richmond, Surrey, TW9 3AE
電話番号 020 8332 5655
営業時間 毎日朝10時開園
閉園時間、各施設の閉館時間は季節により異なるのでこちらでご確認下さい。
URL https://www.kew.org/

★情報は2018年7月時点のものです。事前に必ず公式サイトで詳細を確認してからお出かけ下さい。

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About Author

ちょしっち

在英16年、ロンドン郊外の自宅の庭で節約とリサイクル・無農薬をテーマに土いじりに奮闘、花や木、ハーブ、野菜や果樹などいろいろ挑戦中。ロビンなどの小鳥に癒されつつも、庭を荒らす狐やリスに頭を悩ます日々。フラワーショーやガーデン巡り、ガーデンセンターでの底値チェックに余念がない、植物オタク。庭と旅とお笑いをこよなく愛し中年生活を満喫中。ブログ「イギリスの片隅で庭仕事」http://gardenuk.blog.fc2.com/もよろしくお願いします!

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