016 | 笑いのサイエンス

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元気よく新年をスタートしましたか? 今号も、しあわせ度アップに関連するトピックから、笑いとその身体的効果などを取りあげます。あまり笑うことのない人は、これを機に、笑うことを毎日のエクササイスに加えてみてはいかがでしょう?

一番の薬?

「笑いは一番の薬」と言われるものの一つ。まさにそのとおりだと思います。助けが必要な人は「ラフター・クラブ(laughter club)」など笑いのエクササイスで、間違いなく大笑いできますよ。インストラクターの導きで「はっはっは〜っ!」「ふっふっふ〜〜っ!」とみんなで声を出して笑うふりをしながら、徐々に大笑いの波を作るもの。大笑いの後は、気分爽快だと思います。医療関連機関でも、調査の一環または代替療法の一部として「ラッフィング・セラピー(laughing therapy)」などの名のもとに、笑いを取り入れるところが各地にあるようです。では、笑うことが一体どういう風に薬になるのでしょう?

 笑いの力と免疫システム

例えば、目の前に部屋が二つあります。一つは数人が喧嘩をして怒鳴ったりわめいたりしている部屋、もう一つは楽しそうに笑う声が聞こえてくる部屋。どちらかを選ぶなら、みんな笑う声のする部屋に行くはず。笑いには、人を引き寄せる力があります。なぜなのでしょう? この状況をひっくり返してみれば、わかりやすいと思います。例えば、怒りや悲しみなどの笑いづらい状況下では、気は滞り、フリークエンシーが下がります。フリークエンシーが下がると免疫力も低下し、その度合いによってかかりやすい病気の重さも変わります。笑いはその逆にあるので、フリークエンシーを上げるアクティビティともいえるでしょう。ということは、理論的には、免疫力を上げるということ?(フリークエンシーについては、今後レポートする予定です。)
答えはまさにそのとおりで、笑いには、驚くほどに免疫システムを整える効果があるとレポートされています。例えば、単純に滑稽な映画やビデオなどを観て大笑いすれば、NK(ナチュラル・キラー)細胞内の免疫反応に関わる遺伝子によって、機能促進の調整シグナルが送られたり(1)、(リウマチなど)炎症の元となる物質、サイトカインが制御されたりするようです(2)。これは主だって、喉の奥に通っている迷走神経を刺激するためという理解でいます。この神経を刺激するには、咳き込んで涙が出るくらい大笑いするのが効果的。ご存知のとおり、免疫システムはからだを守る防御システムなので、特に強化したい部分です。コメディやお笑い系のビデオで免疫力強化を図っているという人にはまだ会っていませんが、有効な手立ての一つであることには間違いなさそう。
ちなみに、その逆にある怒りの感情は、サイトカイン(IL-6)を作り、C反応性蛋白(CRP)と呼ばれる炎症マーカーの血中レベルを高くして、炎症を促します(1)。こころの奥に怒りをため込んでいる人は、笑いで発散するもの有効そうです。ため込むと、感情の爆発はもちろん、炎症による体内の噴火も起こしかねないのでご注意を。

にっこりすることも、お忘れなく

日頃のにっこりも、お忘れなく

脳との関係

前号で、慢性のストレス思考が脳を傷めることを学びましたよね。ということは、反対のことをすると脳にいいということ? 答えはもちろん、イエス! 単純ですが、笑うなど反対のことをすれば、情報の伝達に欠かせない神経細胞(ニューロン)の樹状突起と呼ばれる部分が長く広く育って(3)、神経伝達ネットワーク「ニューロンネット」を広げます。ポジティブ思考は、必ずしもハッピー思考とは限りませんが、両者とも脳神経細胞を元気にするものと考えていただければいいと思います。本当の笑み・つくり笑い・眉間にしわを寄せる、の三つを比較した調査によると、内容は多少異なるものの、本当の笑みとつくり笑いの両方が、前向きな感情とつながっているとレポートしています(4)。なので、日頃からにっこりしていれば、楽しい気分の時に得る心身への効果がある程度期待できるのでは?と思います。

 こころや心臓の健康にも有効?

その他では、メンタル・ヘルスや循環器系の健康にもいいようです。
韓国のリサーチ・グループが、乳がん患者の不安感・気分の沈み・ストレスに対する笑いの効果を試験的に小規模で調査。一回目のセッションですでに効果が見られたため、第一線の補完療法として薦められるのでは?としています(5)。
去年には、日本の研究チームが「Laughter is the Best Medicine?(笑いは一番の薬?)」というタイトルで、高齢者を対象に循環器系疾患と笑いの調査結果を発表しています。それによると、笑わないかほとんど笑わない人が心臓病にかかる率は、毎日笑う人より1.21倍高いようです(6)。同レポートでは、脳卒中か心臓病と診断された人は、診断されていない人に比べて笑いの頻度が低い、ともしています。

少々古いのですが、2009年のコメンタリー文献をもとに笑いの効果をまとめると、笑いはストレスと痛みを緩和し、治癒力を改善。身体的には、笑いによって心拍や呼吸数が上がり、酸素吸入量が増加。その後追って、心拍・呼吸数・血圧が下がり、筋肉の弛緩が促されるとのこと(7) 。なんだか、自律神経も整える感じですよね。この文献では、まだ質問が残るとコメントしながらも、ストレス緩和効果はストレス・ホルモン低下を意味し、笑いと免疫システムとの関連を説明するメカニズムの一つになり得るとしています。

笑いが全てをカバーするとは思えませんが、強力なナチュラル・メディスンであることには間違いなさそうです。「笑う門には福来たる」は、そのとおりかもしれませんね。たくさん笑って、健康度としあわせ度をアップしましょう!

 

参照:

  1. Brod S, Rattazzi L, Piras G, D’Acquisto F. (2014). ‘As above, so below’ examining the interplay between emotion and the immune system. Immunology; vol.143. pp.311–318. doi:10.1111/imm.12341
  2. Koopman F, et al. (2016). Vagus nerve stimulation inhibits cytokine production and attenuates disease severity in rheumatoid arthritis. PNAS July. vol.113, no.29. pp.8284–8289. doi:10.1073/pnas.1605635113
  3. Opacka-Juffry J. (2016). Brain Responses to Stress; Early Life Stress and its Long-Term Effects. [CAM conference: Nutrition resolution: breaking the cycle of stress and chronic inflammation.] 5 November.
  4. Johnson K, Waugh C, Barbara L, Fredrickson B. (2010). Smile to see the forest: Facially expressed positive emotions broaden cognition. Cogn Emot. February 19; 24(2): 299–321. doi:10.1080/02699930903384667.
  5. Kim S.H. et al. (2015). Laughter and Stress Relief in Cancer Patients: A Pilot Study. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. vol.2015, http://dx.doi.org/10.1155/2015/864739
  6. Hayashi K, et al. (2016). Laughter is the Best Medicine? A Cross-Sectional Study of Cardiovascular Disease Among Older Japanese Adults. J Epidemiol. vol.26, no.10. pp.546-552. doi:10.2188/jea.JE20150196
  7. Strean W. (2009). Laughter prescription. Canadian Family Physician. Vol 55: October. pp.965-967
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About Author

徳永 ゆり子

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。京都で8年、ロンドンで7年間グラフィック・デザイナーとして働いたのち、2004年に補完・代替療法の世界に入る。CAM(コンプリメンタリー/オルタナティブ・メディスン)プラクティショナー。CThA、BANT正規会員。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックを拠点に、ロンドン内で活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

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