020 | よく噛んで、食事を楽しもう

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前号では、流行りのダイエットなど食べ物にスポットを当てましたが、何を食べるか以前のところで大切なことがあります。基本中の基本なのに忘れられがちな「どうやって食べるか」ということ。仕事や家事などで慌ただしくしているため、手早に食事を済ますという人は要注意かも!?

 食事の際には、頭の切り替えを

オフィスのデスクでコンピュータの画面を見ながら、サンドイッチやサラダ・パックのランチを飲み込むように食べる、という人が圧倒的に多いような気がします。自宅では、テレビを見ながら食事する人も少なくないようです。こういった人たちにランチのことを聞くと、大半の人は何を食べたか思い出せても、味や食感の記憶がほとんどないという人が多いのです。これは、食べることに集中していない証拠。一体何が問題なのでしょう?

以前にストレスと神経系のお話をしましたが、食べたものの消化と吸収は、副交感神経(休息と消化の神経)支配下で促されます。相対する交感神経にスイッチが入ったまま食事をすると(食事中に、ストレスを感じているか、仕事のことを考えているか、ブルー・ライトの画面を見ている、など)、消化機能がサポートされないため、重くだるい感じや、お腹の張り、栄養不足など、各種の不調を招きます。また、交感神経のスイッチを入れたままで長時間いると、神経の切り替えもうまくできなくなります。自律神経の乱れは、倦怠感、イラつき、集中力低下、高血圧、動悸や睡眠障害といった体調不良の元となり、さらには、心臓発作、喘息、自己免疫疾患、がん、鬱、糖尿病などの病気とも深い関わりがあるため(1)、日頃から予防対策に励むのが理想的といえるでしょう。

消化は頭から始まる?

食べたものから最大限に栄養素を吸収するには、まずリラックスして食べ物に集中する必要があります。消化は、食べ物を見ることから始まると考えてください。食事を始める前に、目の前の食べ物を見ることによって、視覚神経が食べ物の情報を脳に送り、唾液分泌を促します。食べ物の匂いを嗅ぐことも同じです。次によく噛んで食べること。よく噛むことによって、噛んだ食べ物の表面面積が大きくなり、消化されやすくなります。また、唾液にはアミラーゼという炭水化物の消化に必要な酵素も含まれています。例えば、お米をよく噛むと徐々に甘くなるのは、炭水化物が糖に分解されるため。唾液は消化液の分泌も促すため、消化全体を助けることになります(2)。また唾液や胃酸は殺菌機能も備えているので、足りないと悪玉菌やカビ、寄生虫などを腸内に通し、消化不良に加えて、さらなる問題を引き起こすことにもなりかねません。

食事中の飲み物は、最小限で。

飲み物は、最小限で。

仕事では、五感全部を使って食べることに集中する「マインドフルネス・イーティング」をお勧めしています。これは、食べ物を見る・香りを楽しむ・味や風味を楽しむ・食感(噛んだ時の音も含む)を楽しむ・ 温度を感じる・喉を通って胃に入るのを感じる・などなど、一口食べるごとに「100%食事を体験」する方法です。また、食べ物がどこから来て、どうやって自分の手元に届いているのか、などということに思いを寄せてもいいでしょう。そして、植物性でも動物性でも、わたしたちのエネルギー源となるその命に、感謝したいものです。

マインドフルネス・イーティングは、消化機能をフルにサポートするだけでなく、自律神経のバランスを整えるのにも有効なため、特にランチタイムに取り入れるのがいいと思います。意識の切り替えは、職場を離れてランチ・ブレイクをとる方が簡単ですが、それが現実的でない人もいます。デスクを離れることができないという人たちには、食事の前に深呼吸(腹式)を2〜3回して、食べる準備段階を取り入れるようアドバイスしています(ジョギング前のウォーミング・アップのようなもの)。頭が切り替わらないまま食事するのを避けるためです。それでも難しいという人には、腹式呼吸の際に目をつぶってまずはお気に入りの場所(小鳥がさえずる森や、虹を作る美しい滝、太陽が燦々と照るビーチ、など)をイメージし、それを五感で感じてもらいます。

食べ物に集中してよく噛まないと、唾液の分泌も少なくなりがちなため、お茶や水、コーラやジュースなどの液体で喉の奥に流し込むのが癖になっている人もちらほら。これでは、消化液が薄くなって食べたものがうまく消化吸収されなくなります(3)。食事中はスープ類を除いて、飲み物の量を最小限にするのが理想的。また、ストレスを抱えている時には、落ち着くまで食事は控えた方がいいでしょう。(ここでも、意識の切り替えやストレスを振り切ることが、大切なことだとおわかりいただけたでしょうか?)

食べることは生きている限り(通常)毎日必要なこと。毎日のちょっとした心がけが、食事そのものを楽しくありがたく思えるものにしてくれます。しあわせ度アップにもつながるのでは?

 

参照:

  1. Murray, MT & Pizzorno J. (2012). The Encyclopedia of Natural Medicine. 3rd edn. New York: Atria Paperback. pp.204-205
  2. Kent, M. (2000). Advanced Biology. Oxford: Oxford University Press. pp.167
  3. Pitchford, P. (2002). Healing with Whole Foods. 3rd edn, California: North Atlantic Books. pp.253.

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About Author

徳永 ゆり子

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。京都で8年、ロンドンで7年間グラフィック・デザイナーとして働いたのち、2004年にナチュラル・ヘルスの世界に入る。ナチュロパス、ニュートリショナル・セラピスト、ホリスティク・プラクティショナー。CThA、BANT正規会員。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックを拠点に、ロンドン内で活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

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