024 | 長寿のサイエンス #1 老化の要素

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クリスマス〜お正月シーズンで老化促進のアクセルを踏み続けた人、気を引き締めた生活に戻っていますか?前号に続きDr.レオから学んだ最新情報や、長寿の研究に携わっているリサーチャーたちの調査結果などを合わせ、からだの中から若々しくいるために必要なことなどを、3号分に分けて取りあげる予定です。

Dr.レオによると、40〜50代に体調不良や病気になる人が一気に増えるのは、かつて人間の寿命が子育て終了後そう長くはなかったことと関係するそう。これは生物的にご用済みの状態に達したということらしいです(1)。理論的には理解できるものの、改めて聞くと何だかショッキングな話です。グッド・ニュースは、こころとからだのメンテをしっかりしていれば、老化の進行を遅くすることができるということ。

アンチ・エイジング

特に化粧品業界では「アンチ・エイジング(老化防止)」ということばが頻繁に使われていますが、わたしたちのDNAには、書き換えることのできない生命の終了がプログラムされています。生まれた日から一日も絶えることなく老化は止まりませんが、最良の状態を維持しながら健康に長生きすることは可能です。なので、体制としては「アンチ・エイジング」でも、実際の現象からすると「ヘルシー・エイジング(健康的な老化)」と呼ぶ方が忠実な表現でしょう(ただし「ヘルシー・エイジング」では、売れるものも売れなくなってしまいますよね…)。当然ながら、逆にからだの負担になり機能を阻止するようなものが、老化を進めます。

老化に拍車をかけるもの

若さを保つには、いくつになってもフレッシュな気持ちでいることが大切だと思います。もちろん、具体的に何が老化を進めるのかを把握することも有効。その知識をもとに対策を練ることができるので、老化の進行をむやみに早めることは少なくなるはず。ちなみに関連のある情報は、今までの記事でかなりをカバーしています。過去の記事を読む時間がないという人のために、以下にざっくりとしたところをリスト・アップしますね。ご参考までに。

A. 不健康なライフスタイル
不適切な睡眠
(詳しくは002号で。以下関連記事の号数にリンクをつけています)
食事の方法・内容・タイミング
・早食い(よく噛まない)……消化システムにとって負担 (020号)
・砂糖や炭水化物の過剰摂取と間食……代謝のバランスを崩し、脳の退化も進める (021023号)
・農薬/加工食品/GMO等 ……発がん性など、害になるものが圧倒的に多い (007008009号)
・偏った食事……からだに必要な栄養素のバランスが崩れる (019号)
・食品や飲み物のプラスチック容器……環境ホルモンの害は人間のみならず、自然界全体に悪影響 (2)
排出/発汗
・慢性便秘……出て行くべき毒素を溜め込み、使用済みホルモンのリサイクルも促す (012号)
・慢性下痢(IBSなど)……電解質のバランスが崩れ、栄養素も吸収困難な状態に (3)
・汗をかかない……滞りを促し免疫力を弱くするかも (4)
運動/アクティビティ
・運動不足……人間は動くようにデザインされているので、動かないと代謝が落ち不健康に (5)
・運動過剰や働きすぎ……過剰に交感神経を刺激し、体内の酸化を進める=老化促進 (6)
・長時間座った状態……座ったまま動かないのは病気の原因となり、寿命を縮めるというデータが… (5)
・外に出ない……体内時計が整わない(003号)、日光によるビタミンD合成もできない (014号)
・変化のない毎日……対応できる機能を使わないでいると、免疫システムが怠け者になる?(7)
・自然に触れない生活……個人的に、人間は自然から離れて暮らすようにはできていないと思う (010号)
社会性や精神状態とこころの健康 (004015016017018号)
化粧品/バス・トイレタリー/ハウス・クリーニング商品
・発がんの危険やアレルギーの原因になる物質が使われていたりするので、要注意 (8)
そして、個人的に強調したいのが…
・思考を制限し、それに基づく行動をとること……例えば、年齢による思考の枠を作ってしまうこと。これは豊かな人生の可能性を遮断するだけでなく、老化促進(心身とも)の大きな要因だと思います。

ロンドンの空気も、老化促進!?

ロンドンの空気も、老化促進のもと!?

B. 汚染されている環境に暮らすこと
大気汚染
(排気ガス・工業廃棄物・農薬・重金属 ・放射能など)
・現在ロンドン(特に中心部)の大気汚染は、WHO規定の上限を超えている状態!? (9)
(011号)
(農薬・処方箋薬・その他の薬品・プラスチック類・重金属・工業廃棄物・放射能など)
食品 (007008019号)
・農薬・GM農地・抗生物質(動物性食品に含有される)、その他自然破壊につながる農地開拓など
電磁界/非電離放射線(電磁波として知られるもの) (005号)
・携帯・ワイファイ・コードレス商品・電化製品 ・電線など
衣料品等(生地の種類にかかわらず、合成の染色剤や加工に使う薬品なども環境汚染につながる)
・合成繊維……プラスチックの変形と思えば、人体にも環境にも悪い。でも完璧に避けるのは困難 (10)
・遺伝子組み換えの綿……GM農地のすべては、環境破壊につながるシステムを導入 (007号)

C. 個人のDNA情報
かなり長期で無茶をしても病気にならず、実際の年齢より若く見える、という人たちに時折遭遇します。これは、その人の持つDNAがたまたまダメージを保護できるものである可能性も考えられます。その逆に、DNAレベルで特に弱い部分へのサポートが足りない場合は、健康に気を使っているつもりでも問題や不調が改善されなかったりします。民族的な傾向は多少あるものの、個人によって弱い部分と強い部分は異なります。簡単にできる唾液のテストで健康に関係するDNAを調べることもできますが、どこが弱いかを知らない人は、家族や親戚の病歴などがある程度のヒントになります。自分で「ここが弱いな」と思うところのある人は、その部分のサポートを強化するといいでしょう。

D. 炎症の慢性化
関節炎、皮膚炎、鼻炎のように、症状の名前が「〇〇炎」は炎症が関係する症状。連続して3か月以上続くと慢性ということになるようです。またリウマチ、潰瘍性腸炎、セリアック病、乾癬などの自己免疫疾患も、症状がある期間は慢性的な炎症を起こしていることになります。その他では、痛みや熱を持った部分が炎症のサイン。炎症は、英語でinflammation(インフラメーション)。近年ではinflammaging(インフラメージング=インフラメーション+エイジング)とも呼ばれ、老化を促進するものとして理解されています。上記A〜Cが炎症を慢性化させる要素になります。炎症がない人は、それぞれの項目で特にダメな部分を改善して、予防策をとるのが理想的です。

上記につけ足したい要素はまだたくさんありますが、エンドレスになりそうなので今回はここまでに。今後詳しい内容を少しずつ取りあげますね。ここまできて、わたしたちの暮らしている環境自体が、老化を促進することにお気づきでしょうか? 残念ながら完璧な対策法を紹介することはできませんが、基本的にはこれらの反対方向へ向かえばいいのです。できると思うことから、徐々に取りかかってみてはいかがでしょう。

昨年は、なかなか原稿に手がつけられない状態が続いたので、改善点を少しずつクリアしてもう少しピッチをあげたいと思っています。オタク的な内容になりがちですが、みなさんとシェアしたいトピックは山のようにあるので、本年もどうぞよろしくおつきあいくださいませ!

 

参照:

  1. Pruimboom, L. (2011). ‘The real story on insulin: reinventing the pancreas’, CAM magazine. September. pp. 20-25
  2. National Institutes of Health. (2010). ‘Endocrine Disruptors’, U.S. Department of Health and Human Services, May,
  3. Lehrer, JK. (2017). Practice Essentials, Overview: Irritable Bowel Syndrome. Medscape. [Online}. Available at: https://emedicine.medscape.com/article/180389-overview? (Accessed: 02 January 2018)
  4. Pilch W, et al. (2013). ‘Effect of a Single Finnish Sauna Session on White Blood Cell Profile and Cortisol Levels in Athletes and Non-Athletes’, Journal of Human Kinetics, vol.39/2013, 127-135. doi: 10.2478/hukin-2013-0075
  5. Diaz KM, et al. (2017). ‘Patterns of Sedentary Behavior and Mortality in U.S. Middle-Aged and Older Adults: A National Cohort Study’, Annals of Internal Medicine, 167(7):465-475. doi: 10.7326/M17-0212
  6. Brooks KA, Carter JG. (2013). ‘Overtraining, Exercise, and Adrenal Insufficiency’, Novel Physiotherapies, 3(1). doi:10.4172/2165-7025.1000125
  7. Pruimboom, L. (2017). Intermittent Living: the vaccine against the deleterious, ageing effects of modern life. [IHCAN conference: Ageing] 18 November.
  8. Epstein S, Fitzgerald R. (2009). Healthy Beauty: Your Guide to Ingredients to Avoid and Products You Can Trust. 1st edn. Dallas. BenBella Books, Inc.
  9. Taylor, M. (2017). ‘Revealed: every Londoner breathing dangerous levels of toxic air particle’. The Guardian. [Online]. Available at: https://www.theguardian.com/environment/2017/oct/04/revealed-every-londoner-breathing-dangerous-levels-of-toxic-air-particle (Accessed: 02 January 2018)
  10.  Claudio, L. (2007). ‘Waste Couture: Environmental Impact of the Clothing Industry’, Environmental Health Perspectives, 115(9), September. pp. A450
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About Author

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。ナチュロパス、ファンクショナル・メディスン・プラクティショナー、ニュートリショナル・セラピスト(mCMA, mBANT, CNHCreg, CFMP)。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックと並行して、オンライン・クリニックでも活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

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