025 | 長寿のサイエンス#2 若さの要素

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長寿に関する連続記事の第2回。前号で大まかな老化の原因を把握していただけましたか?全部は無理でも、何か一つできそうなことを見つけて実行すれば、有効な老化防止のアクションになります。今号では「ブルー・ゾーン」の長寿地域リストに入っている沖縄に、なぜ100歳を超える人が集中したのかを探った「Okinawa Centenarian Study(沖縄長寿研究)」の情報を中心に、若さを保つための要素を紹介します。

 長寿に欠かせないもの

日々の健康に気を配るのは、もちろん大いに有効です。その裏には、何がどうして有効なのかという理由があるはず。様々な角度から長寿に関する研究が進んでいますが、どこをどう回っても切り離せないのが、細胞の活動をコントロールするDNA(遺伝子)のお話。DNAの研究では、未だに新たなことがどんどん発見されている状態ですが、細胞の寿命をコントロールするテロメアの長さと特定のDNAが、長寿に関与していることがわかっています。

 テロメア

各細胞の中には核があり、核の中にあるDNAが細胞の活動を促進/制御しています。そのDNAの端には、細胞分裂の度に短くなっていくテロメアと呼ばれる部分があります(靴紐の先端部分のようなものと考えてください)。そして、そのテロメアが一定の短さになると細胞死を促し、老化が進みます(1)。単純には、テロメアが早く短くなれば、寿命は縮む方向に向かうということ(2)。テロメアに関する各種の調査によると、食品から運動まで幅広いものがテロメアの健康をサポートするそう。例えば、カロリー制限(3)やメディテーションやヨガ(4,5)なども有効なものとしてレポートされています。ちなみに、テロメアを早く短くするのは、命の危険には繋がらない低度の慢性的な炎症(6)など。

長寿の鍵を握るDNA – FOXO(フォクソ)

長寿に関するリサーチでは「沖縄長寿研究」のように長寿地域の人たちを調査したものもたくさんありますが、生命を操作する遺伝子の研究にも注目が集まっています。FOXO(フォクソ)と呼ばれる遺伝子グループを刺激する物質やアクティビティなどの調査が、テロメアの研究と重なりながら各種の分野で行われています。FOXO3は、人間の寿命をコントロールする遺伝子のマスターと考えられていて、例えば、FOXO3Aという遺伝子の配列はGG、GT、TTと3種あります。GGとGTの人はTTの人と比べて炎症時の炎症マーカー(CRP)がかなり低めですが、人口の約70%はGの遺伝子を持っていないそう(7)。興味深いのは、沖縄長寿研究や日系ハワイ人の長寿研究で活躍しているウィルコックス(Wilcox)兄弟の研究チームによる2016年のレポート。日本人・白人・黒人のFOXO3と寿命を比較した調査で、日本人のFOXOA3・GG/GTタイプとともにTTタイプも、他の人種グループより明らかに生存率が高いとデータが出ています(8)。でも、日本人だから油断していいとは限らないので、みなさんには、無理のない範囲でできることを取り入れていただきたいと思います。もちろん、打つ手はいろいろとあるのでご安心を。例えば、FOXO遺伝子を最良の状態に保つには、テロメアと同様にカロリー制限(1,7)や、沖縄で使われている伝統的な食材など(9)が効果的とレポートされています。(詳細は、次号で紹介しますね。)

 沖縄といえば、ゴーヤ?

沖縄といえば、ゴーヤ?

若さを保つ食事とアクティビティ

老化を進めるのは、体内の酸化。酸化と聞いてしっくりこない人は、からだの中が錆び始めるような現象だと考えれば、わかりやすいと思います。世界中どの長寿地域にも共通しているのが、食事による抗酸化物質の摂取と適度な運動、そして家族との団欒や地域コミュニティとのつながり。科学的な根拠など、かけらも知らない昔の人たちが、毎日のように食べたり飲んだりしたものには、テロメアやFOXOをサポートする要素がたくさんあったのです。また、沖縄を含む「ブルー・ゾーン」に暮らす長寿の人々は、自然に囲まれた環境に暮らし、心身ともに活発なライフスタイル。もちろんこれらも、FOXO遺伝子を刺激し、テロメアの長さを保つのに有効です。

次号では、日頃から簡単に取り入れることのできる食品を中心に、長寿&ヘルシー・エイジングの実践版を予定しています。

 

参照:

  1. Fox, T. (2014). Anti-ageing – Turn back the clocks. [CAM conference: Anti-Ageing] 10 May.
  2. Rafie N, et al. (2016). Dietary patterns, food groups and telomere length: a systematic review of current studies, European Journal of Clinical Nutrition. Feb;71(2):151-158. doi: 10.1038/ejcn.2016.149.
  3. Sharples A, et al. (2015). Longevity and skeletal muscle mass: the role of IGF signalling, the sirtuins, dietary restriction and protein intake. Aging Cell, 14:511-523. doi: 10.1111/acel.12342
  4. Jacobs TL, et al. (2011). Intensive meditation training, immune cell telomere activity, and psychological mediators. Psychoneuroendocrinology. Jun;36(5):664-81. doi: 10.1016/j.psyneuen.2010.09.010.
  5. Tolahunase M, Sagar R, Dada R. (2017). Impact of Yoga and Meditation on Cellular Aging in Apparently Healthy Individuals: A Prospective, Open-Label Single-Arm Exploratory Study. Oxidative Medicine and Cellular Longevity. Jan;1-9. doi: org/10.1155/2017/7928981.
  6. Pruimboom, L. (2017). Intermittent Living: the vaccine against the deleterious, ageing effects of modern life. [IHCAN conference: Ageing] 18 November.
  7. Willcox, C. (2017). Secrets of Living Longer (and healthier) from those that have Lived the Longest. [IHCAN conference: Ageing] 18 November.
  8. Willcox B, et al. (2016). The FoxO3 gene and cause-specific mortality. Aging Cell, 15:617–624. doi: 10.1111/acel.12452
  9. Scapagnini, G. (2017). Nutrients and Gene Expression. [CAM conference: Nutrients and Gene Expression] 18 March.
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About Author

徳永 ゆり子

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。京都で8年、ロンドンで7年間グラフィック・デザイナーとして働いたのち、2004年にナチュラル・ヘルスの世界に入る。ナチュロパス、ニュートリショナル・セラピスト、ホリスティク・プラクティショナー。CThA、BANT正規会員。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックを拠点に、ロンドン内で活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

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