026 | 長寿のサイエンス#3 実践編-食品

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前号で長寿の鍵を握る遺伝子などについて学んだところで、次は老化にブレーキをかける実践的な内容に移りましょう。今号では、テロメアやFOXOをサポートする食品を紹介します。

 食べ物のヒーリング・パワー

「薬膳」という言葉があるように、食べ物は健康をコントロールするのに欠かせないものです。もちろん、よく噛んで食事を楽しむことが基本となりますが、野菜や果物などが持っている自然の治癒力を使わない手はありません。各種の研究により、世界に散らばるブルー・ゾーン地域では、ポリフェノールなど抗酸化物質が多く摂取されていることもわかっています。

 老化進行を防ぐ食品

沖縄長寿研究によると、長寿沖縄人の食卓に普段から登場したのは(1,2):
1)昔からある万病薬ウコン(ターメリック)。有効成分のカークミンがスーパー・パワーを発揮
2)脳の老化を防ぐオメガ3を含む魚類(サバ、イワシ、など小さめの天然魚が安全)
3)長寿の経路を刺激する、わかめ。腸を整える繊維(プレバイオティック)食品かつ抗酸化食品
4)色素に含まれる抗酸化物質アンソシアニンでパワー・アップの紫芋、抗炎症スコアかなり高め
5)ポリフェノール(抗酸化物質)を含有し、腸内善玉菌にも好まれる、日本茶(緑茶)
6)赤い色素にアスタザンシンという抗酸化物質が含まれる、シーフード(鮭、エビ、カニなど)
7)苦味が肝臓などの消化器系に働きかける、ニガウリや苦菜

上記の多くは、スーパー・フードの類。ターメリックは、カレーを食べる人種が毎日のように使っているスパイス。今のところ、どこからどう見ても万能薬のカテゴリーに入ることもあり、カークミンの研究は注目の的です。ターメリック・ラテがこのところ流行っているのにも納得(これはインドなどでは、昔からゴールデン・ミルクとして知られる飲み物)。魚は、養殖魚だと抗生物質やGMOの餌が使用されているので、天然魚を選ぶのが安全です。また、マグロなど大きい魚は重金属の蓄積が懸念されるので、摂取は控えるか最小限にするのがベスト。わかめは、日系やオリエンタル系のスーパーで買えます。酢の物、サラダ、スープやお味噌汁など、簡単に用意できるのが利点。緑茶は、ターメリックが流行る前の「グリーン・ティー」ブームで抹茶と一緒にロンドンに浸透。アスタザンシン含有食品に関しては、エビの安全性が問われるので、注意する必要がありそうです(詳しくは別の機会で)。紫芋は、近頃ヘルス・フード・ストアでなくても売っているので、近所のお店をチェックしてみてください。ちなみに、わたしの住んでいる地域(イースト)には、ニガウリを食べる人種がいるらしく、近所のテスコで一時期(シーズンだったのかも)売られていました。余談ですが、同じコーナーには定番で里芋、大根、オクラもあります。イタリア人お気に入りのビター、ラディッチオ(レタスの一種で苦味が強い)も同コーナーに加わっているのを最近発見しました。

沖縄人は、流行る前から使っていた。

沖縄人は、流行る前から使っていた。

日本食関係では、イソフラボン含有の納豆や味噌など、大豆発酵食品の摂取による長寿効果も期待できそうです(2)。大豆食品については、いつか別の記事で詳しく紹介しますね。関連した内容では、去年に日本人のリサーチ・チームが米飯の研究結果を発表。これは、伝統的な日本食がなぜ健康食として知られるのかを探ったもので、内容はお米そのものではなく、一緒に食べるお味噌汁・納豆や緑茶などが、心身ともの健康促進につながっているという結論に至っています(3)。加えて、何世代にもわたって海藻を食べてきた日本人の腸内細菌には、海中で海藻を食べるバクテリアが影響して、海藻の特殊な炭水化物を分解する酵素を作る遺伝子を持つものがいるそう(4)。この研究の比較対象となったアメリカ人の腸内には、この分解酵素を持つバクテリアが全く見つからなかったため、これは日本人特有としています。日本人が海藻類を食べると、他の人種より効果的に代謝できるということです。

そして、世界の各ブルー・ゾーン地域で摂取されている食品は(2):
*抗炎症&抗酸化作用で知られる、エクストラ・バージン・オリーブ・オイル
*再び登場、魚などのオメガ3含有食品(=脳の健康は、最も重要!?)
*抗酸化物質のレスベラトロール含有、赤ワインが代表。でも飲みすぎは健康の妨げに…
*ざくろに含まれるエラジック・アシッドは、腸内細菌の助けで寿命を延ばす物質に変換するそう
*チョコレートの原料、カカオ豆(農薬を避ける目的で、オーガニックを選びましょう)
など、メディトレニアン(地中海領域)・ダイエットに登場する食品が多く、これらはテロメアを長く保つと報告されています(5,6,7)。

最後に、寿命に関係のあるたんぱく質SIRT-1を活性化させ、寿命を20〜70%伸ばすとされる物質(8):
*レスベラトロール…赤ワイン・ナッツ・ココア
*カルセチン…玉ねぎ・ベリー類・りんご・ブロッコリ・緑茶・にんにく・リーク
*フィセチン…いちご・ぶどう
*ルテオリン…柑橘類・タイム・パセリ・ミント・バジル・プロポリス・はちみつ
*ケンプフェロール…りんご・玉ねぎ・赤ワイン・ぶどう・ギンコ(銀杏)・ハイペリカム
*アピゲニン…アーティチョーク・パセリ・セロリ・バジル・プロポリス・はちみつ
*ゲニステイン…大豆
*ダイゼイン…大豆
*ナリンゲニン…グレープフルーツ・はっさく(処方箋薬服用の方は、注意書をチェックしてください)
など。

上記の食品を使った食事や定期的なファースティングなどで細胞の活性化を助けながら、精神面での若返りも試みましょう。そして、気持を若々しく保つことに加えて大切なのは、体内の環境。DNAレベルで、テロメアやFOXOをサポートするのはもちろんのこと、過去数号で取りあげた腸の健康をはじめ、各臓器がちゃんと機能する状態を保つのが理想的です。

*当初、長寿関連の記事を3号分で予定していましたが、この号がかなり長くなってしまうため、今回は食品のみに限定することにしました。次号、実践版のパート2では、食品以外で長寿と健康をサポートするライフスタイルやアクティビティを紹介します。

 

参照:

  1. Willcox, C. (2017). Secrets of Living Longer (and healthier) from those that have Lived the Longest. [IHCAN conference: Ageing] 18 November.
  2. Scapagnini, G. (2017). Nutrients and Gene Expression. [CAM conference: Nutrients and Gene Expression] 18 March.
  3. Koga M, Toyomaki A, Miyazaki A, Nakai Y, Yamaguchi A, Kubo C, et al. (2017). Mediators of the effects of rice intake on health in individuals consuming a traditional Japanese diet centered on rice. PLoS ONE. 12(10): e0185816. https://doi.org/ 10.1371/journal.pone.0185816
  4. Hehemann JH, Correc G, Barbeyron T, Helbert W, Czjzek M, Michel G. (2010). Transfer of carbohydrate-active enzymes from marine bacteria to Japanese gut microbiota. Nature. Apr;464(8). doi:10.1038/nature08937
  5. Rafie N, Golpour Hamedani S, Barak F, Safavi SM, Miraghajani M. (2017). Dietary patterns, food groups and telomere length: a systematic review of current studies. Eur J Clin Nutr. Feb;71(2):151-158. doi: 10.1038/ejcn.2016.149.
  6. Freitas-Simoes TM, Ros E, Sala-Vila A. (2016). Nutrients, foods, dietary patterns and telomere length: Update of epidemiological studies and randomized trials. Metabolism. Apr;65(4):406-15. doi: 10.1016/j.metabol.2015.11.004.
  7. Marti A, Echeverria R, Morell-Azanza L, Ojeda-Rodriguez A. Telomeres and diet quality. Nutr Hosp. Oct 24;34(5):1226-1245. doi: 10.20960/nh.1181.
  8. Fox, T. (2014). Anti-ageing – Turn back the clocks, [CAM conference: Anti-Ageing] 10 May.
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About Author

徳永 ゆり子

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。京都で8年、ロンドンで7年間グラフィック・デザイナーとして働いたのち、2004年に転職。ナチュロパス、ニュートリショナル・セラピスト、ホリスティック・プラクティショナー。CThA、BANT正規会員。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックを拠点に、ロンドン内で活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

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