044 | レジリエンスの大切さ

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各種の規制に包まれた生活環境が続くなか、状況に影響されることなく元気にお過ごしでしょうか。今号では、今まで以上に必要とされるレジリエンスを中心に、より健康的な毎日への意識選択や、丈夫さのアップグレードに役立ちそうなアイデアなどを取り上げます。

進行方向の違い

経済などをはじめ、あらゆる方面で「レジリエンス(resilience:回復力/弾力性)」が問われている今日この頃。特に欧米を中心に、わたしたちの暮らしからは「元に戻る」という選択肢はすっかり姿を消し、突如として「新たな通常」を築き上げていくことが目前の課題となっています。現在、世界中で各種の規制措置がとられて「問題」は表面的にコントロールされているものの、その核部分には触れないため、とても不思議な現象が起きているように見えます。

不安定な状況でも、可能な限りこれを前向きに捉えて行動していきたいものです。もっとも身近なところでは、食品の選択が大きな差を作るものの一つ。例えば、最近発表されたイタリアでの調査によると、調査対象となった1,932人中、半分以上の人がロックダウン中に野菜や果物よりもチョコレートやアイスクリーム、またはスナック菓子などを普段より多く食べ、約20%の人が体重の増加を報告したそうです(1)。同調査では、42.7%の人が不安の高まりを感じていたため、不安定な精神状態がこれらの菓子系に導いたことが伺えます。(ちなみに、砂糖と高脂肪の組み合わせや高脂肪と食塩の組み合わせは、ストレス時に多くの人が選ぶ典型的な「コンフォート・フード」系です。)お菓子やスナック類は、多くが高カロリーで栄養素を伴わない「空のカロリー(empty calories)」のカテゴリーに入るため、ストレスの解消や精神的な欲求を一時的に助けても、健康とは反対方向に進みます。例えば意識の方向を変えて、からだに必要な食べものを最大限に楽しめる形で供給すること選べば、状況に影響されることなく心身とものしあわせや健康促進を可能にするでしょう。意識的な選択は、判断基準を自分や周りの人たちに有益なものに変えるだけで、結果に違いを作ります。この違いが長期になると、その差は大きくなるはず。意識のシフトは、年齢や状況に関係なく、いつからスタートしても決して遅すぎるということはありません。

季節の果物はいかが?

モード設定は、自分で選ぶ

健康や丈夫さに必要不可欠な要素といえる、マインドセット。過去の号でも何度かストレスやマインドセットについて取り上げてきましたが、ダメージの大きさが回復力や回復スピードと反比例するわけではなく、状況をどのように捉えるかということが決め手となります。この数ヶ月で、心の病が悪化し、家庭内暴力や自殺者が増えていることなども気がかりです。突如として機能を失った生活環境の変化や、無理のある規制、そして将来への不安などが重なり、不安定な精神状態を悪化させているのでしょう。報道がネガティブな情報を繰り返し配信しているため、無意識でいると、自動的に不安感を高める方向に誘導されることが懸念されます。

では、どうすればいいのでしょう?答えは単純で、前述のとおり「意識を変える」ことです。これが、全てにつながります。

ダメージから立ち直る力

心身ともに厳しい状況を迎えたなら、あなたは一体何を選びますか?希望を失わずにいることなどが、不可能と思われることを可能にするケースは少なくありません。末期癌で、余命数週間の診断を受けた人たちを奇跡的に回復させる力は、一体どこからやってくるのでしょう?この「力」なる部分は、すべての人が内に秘めているもので、意識の限界を作ることが可能性のドアを閉ざしてしまうという理解でいます。逆に、誤診であったにもかかわらず、癌の診断を受けたショックからそのストレスを跳ね返すことができず、弱くなって死んでしまった人の話を聞いたこともあります。また、新薬で行われるトライアルのデータなどにも、同じ類の現象が見られます。例えば、「プラセボ(偽薬)」のグループにいる人たちには、当人たちの知る由なく新薬グループと同様に、新薬の効果や副作用の比較目的で、何も入っていない錠剤などが処方されます。トライアル中、偽薬の服用で症状の改善を体験する人たちが必ずいるのも、意識/無意識の部分が体内の機能を操作するためだと考えられます。同じ偽薬の服用で副作用を伴う人たちも、もちろん存在します。これを現在の状況に当てはめると、不安を選べばさらなる不安を呼び、新たな可能性作りを選べばレジリエンスをサポートするということになりそうです。まさに「病は気から」ですね。

レジリエンスの要素

レジリエンスとは、難しい状況に対する順応性と回復のプロセスで、個人の意識コントロール、前向きな姿勢、楽観的な対応、社会的なサポートなどが要素となって、特には免疫システムを保護します。ここでいう個人の意識コントロールとは、難しい状況下でも前向きな姿勢と楽観的な対応を意識的に選んで、ネガティブな感情が起こす体内のストレス反応(炎症系)から身を守ること。社会的なサポートとは、周りの人たちとのネットワークを通じたサポートで、小さくは家族や友人といったスケールから、大きくはコミュニティや社会組織などが、ストレス時のクッション的な役割を担うようです。(2)

すべての物事が二面性を持つため、前向き志向や楽観的でいることは、同じコインの表と裏のどちらを選ぶかということに例えられるでしょう(=同じ物事の二面性のうちポジティブ面を選んで、向上心やしあわせに焦点を当てる)。選択肢がないと思われる状況下でも、受け止めかたを選ぶというオプションは常に存在します。

また、「ポジティブ心理」で知られる心理学者のマーティン・セリグマン氏による、3種の幸せを実践することなども、意識のシフトに有効でしょう。これらは(3):
*心地のよい生活……日常生活の基本的なことや自然環境に対する、日々の感謝
*よい人生……個人のユニークさを発見し、それを活かして豊かな生活を築くこと
*意味のある人生……個人の特性を活用して、一個人のスケールより大きな目的を持つこと

幸せは「探すもの」ではなく「実践するもの」が、ポイントです。

美しい光景に感謝!

社会的隔離は、難しい状況

過去20年ほどの自殺者とオピオイド系鎮痛剤使用による死亡者の増加は著しく、現在アメリカでは5分半に一人というスピートで、これらによる死亡者が増加中です。これに比例して、孤独感を抱えている人も過去20年で倍以上に増えているため、この現象が新しいタイプのエピデミック、特には「孤独感による行動のエピデミック」として、このところの深刻な問題となっています。(4)

上記のような事態が、現在の状況と重なり状態を悪化させているようです。社会的な隔離による影響は、短期では混乱や怒り、隔離期間が長くなると、感染への恐怖、フラストレーション、倦怠感、不適切な物資の供給、不適切な情報の提供、経済力低下、などによるストレスの高まりとして記録されています(5)。各種の規制によってウイスル感染のコントロールを試みても、その他の問題が次々と浮上すること自体が、大きな問題なのではないでしょうか。

ロックダウンやその他(年齢や行動)の規制は、特に一人暮らしのお年寄りや、日頃から鬱や不安症を患う人にとって、危険な状況を作りかねない面も持ち合わせています。また、ロックダウン前後から救急医療使用者が大幅に減り、何らかの疾患やリスクのある人たちが、主には感染を恐れて医療的処置を求めなくなったことも報告されています(6)。この報告書によると、大幅な減少と同時に、心停止による救急車の出動が3月には前月比で45%増加し、処置の必要な人たちが助けを求めずに長く待ちすぎたことを物語っています。恐怖の心理は、救急医療に限らず各方面でコロナ感染以外の問題を起こしているため、レジリエンスの重要な要素である「社会的サポート」の機能自体を問う状況が浮き彫りとなっています。世界規模でのストレス緩和が大きな助けとなりそうですが、さらに多くの人が意識のコントロールというオプションを選んで、「気をつける」ことと「恐怖に支配される」ことを切り離して見ない限り、「感染の恐怖」という意識の感染を止めることはできないかもしれません。

 

参照:

  1. Scarmozzino F and Visioli F. (2020). ‘Covid-19 and the Subsequent Lockdown modified Dietary Habits of Almost Half the Population in an Italian Sample’, Foods, 9(675), doi:10.3390/foods9050675
  2. Dantzer R, Cohen S, Russo S, Dian T. (2018). ‘Resilience and immunity’, Brain, Behavior, and Immunity, 74;28-42. https://doi.org/10.1016/j.bbi.2018.08.010
  3. Seligman, M. (2018). The Pursuit of Happiness. Available at: http://www.pursuit-of-happiness.org/history-of-happiness/martin-seligman-psychology (Accessed: 25 May 2020).
  4. Jeste D, Lee E, Cacioppo S. (2020). ‘Battling the Modern Behavioral Epidemic of Loneliness’, JAMA Psychiatry. Available at jamapsychiatry.com (Accessed: 11 March 2020).
  5. Brooks S, et al. (2020). ‘The psychological impact of quarantine and how to reduce it: rapid review of the evidence’, Lancet, 395:912-2, https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30460-8
  6. Wong E, et al. (2020). ‘Where Are All the Patients? Addressing Covid-19 Fear to Encourage Sick Patients to Seek Emergency Care‘, NEJM Catalyst, May 14, doi:10.1056/CAT.20.0193
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About Author

徳永 ゆり子

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。京都で8年、ロンドンで7年間グラフィック・デザイナーとして働いたのち、2004年に転職。ナチュロパス、ニュートリショナル・セラピスト、ホリスティック・プラクティショナー。CThA、BANT正規会員。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックを拠点に、ロンドン内で活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

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