第16話 「ミニマリズム界のキーパーソンたち・1」

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minimalist


Chapter 2.6
ミニマリズム界のキーパーソンたち・1

「ミニマリズムって何かルーツがあるの?」先日、このような質問をいただきました。どうもありがとうございます!

英語圏の国では現在、片付けだけでなくデザインやファッション、ライフスタイルなども含め、意図的に無駄を削ぎ落としていく思考を総称して「ミニマリズム」と呼ぶのが一般的になりつつあります。何か特別なルーツがあるというよりは、ネットを介して生まれた同時多発的な動き(詳しくは第2話を読んでみてくださいね)。共通項ももちろんありますが個々の考え方は違うし、重要視している箇所も違います。
その一方でミニマリズム的思考というのは老子がいた紀元前からあり、古今東西の人々が様々な格言を残しているため、彼らの言葉をよりどころにしている人たちも多いです。

他にも質問・感想などありましたら、コメント欄か私のサイト経由(コンタクトのページ)で遠慮なくメッセージを送ってくださいね。

さて、どうしたらすっきりとした生活が送れるのか、他の人の例を知りたいという単純な好奇心から始まった私のミニマリスト・ウォッチ。そしてその後に誕生したミニマリズム・ムーブメントに魅了されてすでに10年近くになります。

ミニマリストっていったいどんな人たちなんでしょう?

脳科学者、作家、TV司会者、建築家にデザイナー、ファッション・ブロガーなど、仕事や研究の一環としてミニマリズムを提唱する人たちはかなりの数に上ります。また普段はそれぞれの仕事に就いているごく普通の人たち、学生、専業主婦(or夫)にワーキングペアレンツたちも個々のブログやYouTubeなどの各メディアで情報を発信。
ほんの一部しかご紹介できないのが残念ですが、今回はアメリカの作家系ミニマリストの中から数人ピックアップしてみました。
(※顔写真は彼らのサイトより拝借しています。)

まずは「ザ・ゼン・ハビッツ(The Zen Habits)」というシリーズで有名なベストセラー作家、レオ・バボータ。『減らす技術』というタイトルの本(英語タイトル「The Power of Less」)が日本でも出版されているのでご存知の方もいるかもしれませんね。彼は6人の子どものパパで、かつてはいくら働いてもまったく生活が楽にならず、ストレスだらけでヘビースモーカーで太り気味。

ある日牛乳を買う小銭すらなく、子どもの貯金箱からお金をこっそり抜き取っている自分の姿にはっとし「変わらなくては」と一大決心。2006年よりミニマリズム思考をベースにお金や健康状態をはじめ、生活すべての大変換にひとつづつ挑みました。

その後、新聞記者という前職を生かし「ゼン・ハビッツ」というサイトを立ち上げミニマリズムに関するエッセイを数多く発信、現在では数百万人の読者を抱えるベストセラー作家に。「大切なことをまず見極め、それ以外のものを取り除く」というポリシーはとてもさわやかでシンプルです。

グアム出身で現在は米サンフランシスコ在住なのですが、引っ越しの理由は「車移動が基本のアメリカにあって、サンフランシスコは公共交通機関のみで自由に行動できるから」。6人の子どもたちのお迎えや移動に運転手として駆り出される手間をカットしたということですね。トレードマークの坊主頭も、不健康な生活を改める過程でマラソンを始めたので、ヘアケアを楽チンにしたいからなんだそう。

家族・仕事があるからライフスタイル改革なんて無理、という言葉はこの人を見ていると単なる言い訳でしかないなあと感じます。家族や仕事があるからこそ、さらに大切になるんですね。お坊さんのような穏やかな語り口が好印象の、シンプルライフ系の第一人者です。

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一念発起、ストレスパパからベストセラー作家に転身したレオ。

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次は「ザ・ミニマリスト」こと、ジョシュア・フィールズ・ミルバーンとライアン・ニコディマスの2人組。このコラムで何度か登場したミニマリズムにまつわる
米ドキュメンタリー「Minimalism: A Documentary About the Important Things(日本未公開・筆者訳『ミニマリズム:大切なことにまつわるドキュメンタリー』/2016)」の製作者でもあります。

この2人は小学校時代からの幼なじみ。家庭が貧しく生活保護を受けながら育ったものの、就職先で頭角を現しお互いあっというまに大出世。2人ともハードに仕事をこなしつつ贅沢三昧な生活を送っていたものの、心はストレスと次の買い物のことばかりで落ち着かず、たくさん稼いでもそれ以上にお金を使ってしまうローン浸りの日々を送っていました。

そして20代後半のある日、忙しさのあまり疎遠になっていたジョシュアの母親が闘病生活の末に他界、しかも同じ月にジョシュアと妻の離婚が成立します。母親が暮らしていたマンションいっぱいの遺品を整理していた彼は、人とモノの真の関係に気付き、1年近くかけリッチだけど幸せではなかったこれまでの生活を整理。かつての夢だった作家活動を始めます。


同じ職場で働いていた親友のライアンは、ストレスの塊だった彼がすっかり穏やかに変貌したことに感銘を受け、自分も変わろうと「パッキング・パーティ」というユニークな実験プロジェクトを考案。そしてその経験をシェアしようと2人で「ザ・ミニマリスト」という名前でブログを開始したところ、大きな反響を得て現在に至ります。

週1回配信の彼らのポッドキャストやウェブサイト、数々の著作には彼らの知恵や情報が満載です。
日本では『あるミニマリストの物語ー僕が余分なものを捨て人生を取り戻すまで(原題:Everything that Remains)』ほかが出版されています。

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左がジョシュア、右がライアン。2人併せて「The Minimalists」。

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後述のコリン・ライト(左)と一緒の1枚。3人は共同で出版社を立ち上げ、インディペンデント系の書籍を出版しています。

そして「エグザイル・ライフスタイル」というサイトを運営する若手のキーパーソン、コリン・ライト。二十歳そこそこで起業し大成功したものの、旅に憧れても多忙のため実際には一度も米国を出たとことがなく「このままでは20代が終わってしまう、どんなにお金があっても20代を買い戻すことはできない」とある日マイホームも含めた一切を処分し、ショルダーバッグに全財産を詰め込みフルタイムの旅人になることを決意します。

そして前述のサイトを立ち上げ、読者に自分の行き先を投票で選んでもらい、その旅先で4ヶ月を過ごしてその生活をレポート。そして4ヶ月ごとに読者投票で次の国へ…という生活を過去数年に渡って続けています。
全財産の入ったショルダーバッグの中身はその時々によって変化するけれど50~70アイテム程度。これで旅先から会社を運営し、新たに出版社を立ち上げ、執筆やセミナー活動を行う。携帯電話とコンピュータを駆使するデジタル・ヒッピーといった雰囲気を漂わせています。まだ30歳前後と若いですが「ザ・ミニマリスト」のジョシュアがミニマリズムを始めるきっかけを作ったのがこの人です。

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講演会も数多くこなす美声のコリン。

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フルタイムの旅人生活について「ホームレス(Homeless)生活じゃなくてホームフル(Home-full)生活だよ」とコメント。

…主要な人たちを紹介しているだけで軽く10話分になってしまいそう。次回も延長して彼らの一部をご紹介したいと思います。

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写真家&ライター。東京で広告制作・編集と撮影の仕事を経て2003年渡英。フリーランスで活動中のアーティスト。ロンドンをベースにアーティストや作家をモデルにした絵画的なテイストを持つポートレート制作などを行う。英国をベースとしたエキシビションを開催。日常系ミニマリズム研究家。「あぶそる〜とロンドン」編集長、江國まゆ氏と共に2018年に『ロンドンでしたい100のこと(自由国民社)』(執筆&撮影)、そして2020年には『レス・イズ・モア 夢見るミニマリストでいこう。』を出版。

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