第28話 ミニマリズムの落とし穴

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minimalist


Chapter 4.1
ミニマリズムの落とし穴

これまでミニマリズムの良い面ばかりに触れてきましたが、実はミニマリズムにも欠点があります。それ自体に欠点があるというよりも、ミニマリズムを取り入れた人たちが陥りがちな落とし穴がある、と表現した方が正確かもしれません。

今回と次回のコラムでは、これらの具体的な例を挙げていきたいと思います。

<落とし穴・その1>
モノを減らすこと自体が「目的」になってしまう。
モノを処分しているときの爽快感、部屋が見違えるようにすっきりしていく快感。とてもワクワクするものです。
しかし、この刺激や快感をもっと味わいたいがあまり、必要な物まで処分したり、他人の持ち物まで許可なく手を付け始めてしまう。これはミニマリズム初心者がとてもはまりやすい落とし穴です。

自分らしく生きるための棚卸しのはずが、片付け自体が人生の「目的」になってしまう。また、少なければ少ないほどよいと信じるようになったり、モノを敵視したり、他のミニマリストにライバル心を燃やし始めることもあります。
目に見えるものでないと分かりにくいので、モノの数のみにこだわり続け、さらに大切なはずの人間関係、時間、精神面といった方面のミニマリズムについてはすっかり忘れてしまうことも。

競争心というのはプラスに働くこともありますが「私はあなたより豪華な家に住んでいる、いい仕事をしている」と自慢するのと「私はあなたよりミニマリスト」と勝ち誇るのは実は同じこと。
勝ち負けやマウンティング(格付け)だけに価値を置く世界にどっぷりと浸かっているということです。

どれも、何のためにミニマリズムを始めたのかが分からなくなってしまっている状態。これでは本末転倒ですね。
こういった意味では、モノを処分し過ぎて何もなくなってしまった空っぽの部屋と、汚部屋・ゴミ屋敷という両極端に見える部屋はほぼ同じ精神状態から生まれているといえます。

…とはいえ、程度の差こそあれ多くのミニマリストが一度は通る道。それほど気にしなくても大丈夫。

(「あ、やってしまった!」と気がついて軌道修正できるように、ここに書いておいたというワケです。)

万が一モノを処分しすぎて慌てる事態になっても、借りたり買い直したりすればほとんどの場合済むことですし、後でいい笑い話になるはず。個人的にはモノまみれの現代なだけに、少しやり過ぎぐらいでちょうどいいんじゃないかな、とも思います。

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<落とし穴その2>
周りへの批判やパトロールを始めてしまう
ミニマリズムに限ったことではないけれど、人によってはある考えやメソッドに熱中するあまり「やっていない人を見下し」たり、「その程度じゃダメだと批判」したり、「あなたもやりなさいと強要」するという行動をとってしまうことがあります。

また「あいつはきちんとできていない」と、頼まれていないのにパトロールを始めてしまう場合もあります。

例えばインターネットの世界はこの「○○パトロール」「○○ポリス」が山のようにいる場所。ある人がミニマリズムを取り入れ、すっきりした部屋の様子をソーシャルメディアのコミュニティに投稿すれば「参考になった」「頑張れ」といったコメントの他に、面識もない人から「その程度じゃミニマリスト失格だよ」「ミニマリストなのに○○が好きってどうよ?!」「○×なんてあり得ない」「いまどきは電子書籍でしょ?その本処分したら」といったミニマリスト・ポリスたちのヘイト・コメントが寄せられます。

同じミニマリストでも年齢や居住形態、家族構成などによってその様子は全く違うもの。それに仕事や、住む場所、趣味、好みも違います。ミニマリズムの取り入れ方だって人それぞれ違う。
こういったことを想像することができないというのは、他人の身になって考えることができない状態になっているということ。

またこのように相手への配慮が希薄な上、やたらと感情的に批判するという行為は、本人の自信のなさ・不安定さから生まれているケースが多いように感じます。相手をけなしたり攻撃することで優位に立って安心したい。つまり「弱い犬ほどよく吠える」ということですね。

加えて。
同居人や子どもが「買い物好き」「捨てられない」「片付けない」タイプだと同じ家に暮らしているだけに確かに悩ましいもの。つい説教とグチを連発したくなるのは分かりますが、それでは家がすっきりどころかどんより居心地の悪い空間になってしまいそう。

このテーマについてはコラム22回目パッキング・パーティQ&A」で触れたので、興味のある方は参考にしてくださいね。

次回は落とし穴その3&その4についてです。では、また!

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写真家&ライター。東京で広告制作・編集と撮影の仕事を経て2003年渡英。フリーランスで活動中のアーティスト。ロンドンをベースにアーティストや作家をモデルにした絵画的なテイストを持つポートレート制作などを行う。英国をベースとしたエキシビションを開催。日常系ミニマリズム研究家。「あぶそる〜とロンドン」編集長、江國まゆ氏と共に2018年に『ロンドンでしたい100のこと(自由国民社)』(執筆&撮影)、そして2020年には『レス・イズ・モア 夢見るミニマリストでいこう。』を出版。

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