第36話 「比較」をミニマイズ

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Chapter 5.5

「比較」をミニマイズ

現在、ロンドンのカフェ&ギャラリースペースで個展をやっています。

前から密かに憧れていた展覧会。今年始めにロンドン・日本で活躍されているアーティスト島田カオルさんの個展に伺い、そこで「やっぱり私もやってみたいなあ。『いつか』じゃなくて1年以内ぐらいがいいなー」とあらためて思ったところ、会場を物色したりアプローチをする前に向こうからお話がやってきてびっくり。

小さな個展とはいえ、テーマを決めるにあたっては「自分はどうしたいのか」というのを改めて真剣に考えたり、いろいろ調べたり教えてもらったりと勉強になりました。

周りからのヘルプもたくさん頂いて、バタバタしながらも当日には全てが揃い、「おっ、これこそパーキンソンの法則!」と感心し、つい何でもミニマリズムと照らし合わせてしまう自分に苦笑。

でも、大切なモノを見極めてピンポイントでエネルギー照射、というのはやはり基本なんだなあと実感しました。残りは放っておいてもホントに大丈夫。

もちろん仕事、家事、家族、友人、趣味などエネルギーを注ぐ対象がその時々で変わるのもありです。

全てに同時にまんべんなくフォーカスしようとしてエネルギーが分散してしまうよりはいい。あれもこれも同時に作業をこなすマルチタスクより、1つのことに集中するシングルタスクのほうが結果が出やすいということですね(※1&2)。

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さて、エキシビション開始直前にはいろんな気持ちを体験しました。

最初は「これで本当にいいんだろうか」「会場のライティングがしっくりこない」「主催の方がいい顔をしなかったらどうしよう」などなど、いろんな不安が頭をもたげました。

そして展示をするからにはやっぱり気に入ってもらいたい。つまらない、ダメと思われるのはやっぱり怖い…。

でも作業を続けているいちに、さすがに腹が決まるというか、次第にどうでもよくなってきました。

  • これが今できる私のベスト
  • 自分が尊敬する人たちの足元にも及ばないかもしれないけど、これが私
  • 私だって好き嫌いがある、それは相手のせいじゃない。立場が反対でも同じだよね
    ただ願うだけじゃなくて、実現したことが嬉しい
  • 協力や応援をしてくれる人、わざわざ足を運んでくださる人がいるなんてありがたい

…ちゃんとできていないと批判されたり、しょぼいと思われたり、誰かと比較されたり。そんなことを最初は恐れていたのですが、周りが何を思うかはコントロールできないし、自分と他人をあれこれ比較して思い煩うこと自体にまったく利点がないことに改めて気がつきました。

冷静に分析するならともかく、ただ比較しても何かが変わる訳じゃない。どちらかといえば自分にマイナスに働いている気がする。だったら潔く省いてしまった方がいい。

という訳で、前置きが長くなりましたが、今回のテーマは比較や周りの目を気にする気持ちをミニマイズすること。

容姿、年齢、収入、社会的地位、家族、才能、性格など周りと自分を比較ばかりしていると、どうしても自分の足りない点ばかりが見え、相手の優れている点ばかりにフォーカスしてしまいがち。もし「自分はできる」と小さな世界で優越感に浸る事ができても、周りの状況が変わればそんな順位はすぐ変わってしまう。

「もっと自分に自信を持てたら」という声を聞くけれど、優越感=自信ではないんですよね。

人より上を目指すよりも「いろいろ欠点や至らない点があっても、それは罪でも何でもない。自分らしさの一部なのだからいいじゃない」と、まず比較や否定をやめて自分と仲良くなる。上下・優劣のピラミッド構造の中で自分がどの位置にいるのかを気にするより、まず、ぽーんとそのピラミッドから飛び出してしまうということです。

そして「相手がどう思うかは相手の問題であって、自分ではコントロールできない。逆も同様」と意識する。これが本来の意味での自信(=自分を信じる)につながるのだと思います。もし変えたい点、進みたい地点があるなら、そこからスタートしていく。

「欠点だらけの自分を認めてしまったら、成長しないのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

「自分はだめだ、まだまだ足りない」と自分を追いつめ歯を食いしばって前進することが美徳とされる風潮もありますが、実際には非常に苦しく、自分を責め続けるプレッシャーにつぶされてしまったりとダメージも大きい。

それよりも「あなたはそれでいいんだよ。こうすればもっといいかも。そうそう、がんばって〜」と自分が自分の親友になってエールを送りながら前進する方がスムーズです。

そして、この考え方に馴染んでくると「なんでこの人はああなんだろう」と対人関係で悩む事が減っていくのも面白い。
その人はそういう人であって、変えることできないと理解できるようになるから。それを認めた後、どうするかは自分次第で決められるから。振り回される事が減っていくんでしょうね。

私は子どもの頃、トマトが大嫌いでした。でも、それってトマトのせいじゃないですよね。私の当時の嗜好にたまたま合わなかっただけ。

トマトの方もいちいち「あの人に嫌われた!お皿の脇によけられて無視された!私って食べ物として失格なの?やっぱりトマトじゃなくってステーキになるべき?」と嘆いたり、誰かの意見に振り回わされる必要はない。

この「トマト」が動物でも「あの人」でも、はたまた立場が入れ替わっても同じこと。
(余談ですが、大人になった今はトマトが好き。時間やその時の気分でころころ変わる、好みや評価ってその程度なんですよね)

もう一つ、冷たいように聞こえるかもしれない事実。

実はみんな自分の生活に忙しくて、だれも周りの事(=あなたのこと)なんて真剣に気にしていない。つまり、ステイタスだの評価だの世間体だのあれこれ気にしているのは自分だけ。

だから基本的には展覧会をしようとしまいと、どんな格好や行動をしようと、何が好きだろうと、せいぜい話のネタになる程度で、誰かを本気で患わせることなんてまずありえない。

そう気がついたら、好きなように生きるが勝ち、ですよね。

<「マルチタスクよりシングルタスク」について追記>
※1
グレッグ・マキューン著『エッセンシャリズム』にも同様の記述があります。この本はビジネス書ですが、生活にも役立つ考え方が満載されていて、深いレベルでのミニマリズムを知るのにぴったり。オススメ図書の一冊です。

※2
同時にいろんな作業をこなしていると、とても効率的で生産性も上がっている「気分」になります。しかし英科学誌「ネイチャー」によると、実際には処理能力などのパフォーマンスが著しく低下し、ストレスホルモンのコルチゾールが増え、脳細胞がダメージを受けてしまうのだとか。

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About Author

ネモ・ロバーツ

ポートレート写真家&ライター。日本で広告制作と撮影の仕事に関わったのちロンドンへ。在英邦人向け週刊誌での仕事を経てフリーランスに。ミニマリズム研究家。グルメやオーガニック食などに関するトピックにも目がなく、作家ケリ・バックマスターとともに、都会における野草採集と英国の多国籍ベジ・カルチャーについて紹介するユニークなレシピ本『Street Food −Urban Foraging and World Food』を出版(撮影)。 不定期ブログ:nemoroberts.wordpress.com

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