超アナログな作風で知られる奇才漫画家・森泉岳土さんが、次回作の取材で来英された。
私は共通の友人の紹介で、10日間にわたる氏の取材日程のうち、ロンドンでの取材のほんの一部に同行させていただいた。取材対象はイギリスの大邸宅だ。
この10日間、氏が実際に足を運ばれたカントリーハウス、ステートハウス、美術館はざっと見積もっても20を下らない。現地慣れされていないにもかかわらず、プリマスからヨービル → オックスフォードまで、辺鄙な場所にある邸宅見学という目的を達しながら一日で移動する離れ業もやってのけられた氏の情熱は、間違いなく次回作に生かされるものと今から楽しみでならない。
そんな、森泉岳土さん ^^
大の漫画好きの私ではあるが、ロンドン生活も長くなると守備範囲を広げることが難しい。それが友人の紹介で、初めて森泉岳土なる異能を知るにいたったわけだが・・・彼の作品はすごい。ドンピシャ私好み ^^
作風を一言で表現させていただくのはおこがましいのであるが、お土産にいただいた作品を拝読するにつけ私が担当編集者なら(笑)、単行本の帯文は間違いなく:
現代社会にジワリとしみわたる、珠玉の寓話集。
みたいな感じなのだ。
しかも画風がただものではない。
独特の描線クオリティや間(ま)を感じさせるアナログな絵を生み出す手法は、初期の頃を含めて今でもときどき「水をのせた下絵に墨を落として、細かいところは爪楊枝や割り箸を使って線を引く」というものだという。これだと細かい線が描けないので、原画はなんと4倍のサイズで作るのだとか。詳しくはこちらのページに森泉さんが作品づくりについて答えたインタビューが載っているので、興味ある方はぜひ。描くのにオソロシク時間がかかりそうだが、タマシイもたっぷり入ってそう♪
初の長編『夜よる傍に』(よるよるそばに)は、とても不思議なお話。東京の深夜、月明かりで本を読む少女、ニューヨーク、田舎に引っ込んだ謎の絵本作家、巡りめぐるセレンディピティ、間違った夜明け、そして、如何に朝を迎えるか。結局、出会うべき物語が交錯し、力を蓄えた夜が戻ってきて・・・新しい夜明けが始まるのだ。比類なき寓話 ^^
いろいろとお話を伺ううち、まず幻想文学好きで趣味が一致。ポーやダンセイニなどのゴシック系のほかアレクサンドル・グリーンなどロシア系ファンタジー、イギリスの児童文学、日本の幻想小説などなど来し方を振り返れば嗚呼、断然好みが似通っていますネ、みたいな話で盛り上がったのであるがw それもそのはず〜 森泉さん、無類の読書好きでなんと、名作のコミック化もされているのだ。
現時点ではカフカの『城』、ポーの「盗まれた手紙」、ドストエフスキーの「鰐」、漱石の『こころ』から「先生と私」、そして国内初の春樹作品のコミカライズとなる 「螢」がラインナップ。『城』を16ページにまとめられたという森泉さんの手腕は電子版で拝見したいと思う♪
それで、森泉さんの魔法の手が、今度は西洋の大邸宅を描くというのだ。
あの作風で西洋屋敷が登場するゴシックな話が出来上がったら・・・と思うと、今からクラクラが止まらない ^^(あ、ゴシックな話になるかどうかは知らないですが、あくまで私のイメージw)。ちなみにロンドンではハムステッド・ヒースの北端に佇む新古典主義の屋敷、ケンウッド・ハウスにご一緒させていただいた。森泉さんのご希望でキュレーター氏が案内するツアーに参加したのだが、北ロンドンに住んで◯年、恥ずかしながらこのようなツアーに参加するのは初めてで、心から楽しませていただいた。
東京に戻られてしばらく、「リハビリを兼ねて、まゆさんを描いてみました」、と送ってきてくださったのが、こちらのイラスト! 私、わりと和風テイストの装いが好きでモンペ風パンツの登場も多いのですが、そんな私のシルエットを墨の描線で見事とらえていただいて、すごく嬉しかったです! 多謝♡
イギリス各地をとても生き生きと取材され、すべてに大きく心を開いて体験吸収をされていた森泉さん。こういった純粋な視点が名作を生み出していくのだろう。森泉岳土という漫画家さんに出会えて、人生にまた楽しみが増えた。いつか森泉さんの手になる賢治作品を読んでみたいな♪