友人夫婦の間に昨年11月に誕生したAちゃんの洗礼式に参列するため、9月初めにギリシャに行ってきました。
ギリシャ人の旦那さんはギリシャ北東部マケドニア地方にあるセレス(Serres)の出身。街の中心部から車で東へ15分ほどの丘の中腹部にある浮世離れした修道院で執り行われたのですが、両親がロンドン在住ギリシャ人と日本人のカップルであるため、ギリシャ国内の各都市はもちろん、日本、イギリス、スペイン、メキシコ(!)など世界各地から約150名の参列者が集まった盛大な式でした。
正教会の洗礼式は、いわば信者にとっては人生の始まりを記念する重要な儀式。輝かしいイベントに、大勢の親類縁者友人がお祝いに駆けつけるのですね。私も初ギリシャをテサロニキ経由で楽しんできました ^^
同じキリスト教でもカソリック、プロテスタント、そして正教では洗礼式のしきたりや行い方も全然違うんですね。ドラマなどで赤ちゃんの額にちょろちょろっと水をかけているのを見たりしますが、これはカソリック/プロテスタント式だそうで、正教はすごいです。ざぶんざぶんと赤ちゃんを水盤の中に三度たっぷりと浸して拭いた後、オリーブ油を身体に塗ってクリスチャンとしての魂を目覚めさせるのです。当の赤ちゃんは何事かと思って泣いちゃうんですけれどね ^^;
この日は夏の終わりの晴天に恵まれ、式の前のいっとき、集まった人々が旧友を温め合っていました。あら、お久しぶり! おやおや、あそこの子は大きゅうなったなぁ、歳を取るはずじゃわい・・・なんて声が聞こえてきそうな、正午前。
さて、ギリシャ正教の洗礼式がどのように進行するかについてはAちゃんのお母さんが事前に詳しく教えてくれたので(さんくすKちゃん!)、右往左往することなくなじめました。式よりもずっと前に、まずは赤ちゃんのゴッドファーザー/ゴッドマザー(名付け親。今では本当に名前を付けるケースは少ない)を親しい友人にお願いするところから始まります。同じ正教の人でないと務まらないということ、Aちゃんが大きくなってからも頻繁に会うことができるようにと、ロンドン在住の長年の友人である二人の女性にお願いしたそうです。
ゴッドマザー2人、Aちゃん、両親が教会の入り口に集まり、司教がAちゃんの名前を呼びます。ここで父親がコインをたくさん投げるのですが、これはギリシャのみの伝統だそうです。その昔、ギリシャでは父親と父親の母のみが洗礼式に参列して、子供の母親は家で待っていたそうなんですが、洗礼式のときに初めて名付けられるという伝統があるため、子供の名前を早く知りたい家で待つ母親のために、近所の子供達が家に走って行って名前を告げるのです。その際にお駄賃(コイン)をもらったことからきている儀式だそうです。
教会の中に入る前にも、まだ洗礼を受けていないAちゃんにはすることがあります。司教の問いかけに対し、Aちゃんの代わりにゴッドマザーが「悪霊/悪魔はいない。いらない」と三度宣言し、三度つばを吐くようなゼスチャーをして悪霊を追い払うことで、子供が純粋な身体で教会に入る手伝いをします。
教会に入ると、子供が着ている服を脱がし、司教が水盤の中の水に三度を漬けて身体を清めます。これには「水のように魂が純粋になるように」という思いが込められているそう。「漬ける」と書きましたけど、ざぶざぶと頭のてっぺんから足先まで身体中が水で清められるイメージでした ^^;
ゴッドマザーのギフトである白いタオルで身体を拭いた後、ゴッドマザーがオリーブ油を身体中に塗ります。その後、ゴッドマザーが子供を抱き、司教がミロという特別なアロマエッセンスを手、頭、足の裏に塗ります。これはそれぞれ創造力を養う、思考力をつける、人生を歩き出す、という意味があるそうですよ。ミロはキリスト再生時に墓から溢れ出たと言われる水のような液体の象徴なのだそうです。
次に、司教がAちゃんの髪の毛を切って神に捧げ、ようやくAちゃんはゴットマザーが選んだ真新しい洋服を着ます。ゴッドマザーがもらった銀の十字架を付けて。
次にゴッドマザー、司教、キャンドルを持った親類や友人の子供たちが水盤の周りを三度まわって聖壇に近づき、司教がAちゃんのために祈りを捧げます。母親が聖母マリアのイコンの前で三度会釈し、接吻、そしてゴッドマザーにも三度会釈して手に接吻。母親がAちゃんをゴッドマザーから受け取って、洗礼式は終了。オリーブ油でテカテカになっている赤ちゃんですが、伝統では三日間、身体を洗ってはいけないそうですよ。そしてゴッドマザーが三日後にオイルを拭き取る儀式をします。
3という数字が頻繁に現れるのは・・・お分かりですよね。父と子と聖霊の象徴です。これでAちゃんも立派な正教のクリスチャン。宗教や文化によってさまざまな儀式がありますが、こうして大勢の人がお祝いにかけつけて交流するチャンスというのは、なんともいいものです ^^
式が終わると、教会から出て来たゲストたち皆んなに、洗礼式に参加してAちゃんがギリシャ正教徒になったことを見届けたという証に「 Bomboniera/ボンボニエラ」が配られます。チョコレートをコーティングした美味しいお菓子はどの洗礼式にも共通ですが、デコレーションはは両親が選びます。上の写真は今回のために両親が作ってもらったハンドメイドの品☆ 今はチョコレートですが、元々はアーモンドだったそうですよ。
さて、式が終わるとご想像通り、宴会タイムですw 大勢の人が集まったからには、飲み食いしながらお祝いするのは古今東西のお約束。これは主催者によるご招待なのでした。ありがとうございます♪ この宴会会場まで司教が下りてきてくださり、祝福してくださるのです。
祝宴の間、Aちゃん両親のお友達が作ってくれたというAちゃん写真集をみんなで見ながら、そこにAちゃんへのメッセージを書いていきました。成長したAちゃんが見たら、ものすごい記念になりますよね。感激ものです☆
ギリシャという土地には、なぜか女性性を強く感じます。ギリシャ正教ではイエスを生んだマリアが神の母としてとても尊重されているからかもしれません。いわば母性の土地。女性性の本質は、受け入れること。そしてゆだねることです。その先にあるのは、愛と調和♪ 写真キャプションにも書きましたが、この翌日、超絶に神秘的な修道院に連れていっていただきました。その天空に位置しているかのような修道院は、Aちゃんのお父さんのお母さんの産土修道院?のようなところだったそうです。その様子はまた別の機会に ^^
洗礼式。西洋社会では、カップルが親になって初めての大きな共同作業ですよね。とても細やかな気遣いで150名のゲストをとりまとめ、Aちゃんの人生の第一歩を大きな祝福で飾った友人カップルに拍手!
2件のコメント
MARIKOさん☆ほんと、すごかったです。ギリシャの洗礼式はこの規模のものは少なくないそう。正教徒として生きる誇りみたいなものあるんでしょうね ^^
この赤ちゃん、自分が大きくなった時、こんなにも多くの人が自分の誕生を喜び、遠くから駆けつけ存在を祝福してくれたと知ったら、ほんとうに感激するでしょうね。ちょっとつまずいた時、もう少しがんばってみようかなって思えるかも(^^