【漫画自慢】今度はキミが描く番だ!

0

th_Manga Jiman_banner2


昨年に引き続き、有り難くも漫画家の玖保キリコさんのお誘いを受けて、ピカデリーの在英国日本大使館にいそいそと同行させていただいた。去る2月10日、今年の「漫画自慢コンペ」の受賞者発表のレセプションがあったのだ♪

th_2017-02-10_Mangajiman-022

上位入賞者たちが集い、順位発表が行われた。

Manga Jiman Competition(漫画自慢コンペ)

って、皆さん、お聞きになったことがあるだろうか?

私は昨年、キリコさんに教えていただくまでその存在を知らなかった。これは在英国日本大使館が、イギリス在住者を対象として毎年開催している漫画コンクールだ。

イギリスに住んでいる11歳以上の人であれば、応募するのに国籍は問われない(10歳未満のキッズ部門もあり)。2007年に始まったので、今年はなんと記念すべき10回目! 在英の漫画家さんとして活躍されているキリコさんは、2007年に始まったこの漫画自慢コンペの審査員を、初回からずぅ〜っと務められているのである。

th_2017-02-10_Mangajiman-019

見事1位に選ばれたAmi Clerkさんが、ANAのロンドン支店長、中村晃氏から日本までの往復航空券を授与されている! そう、優勝者は日本に行けるのだ〜

作品テーマは毎年変わり、今年は「日本」がテーマだったこともあり、それぞれの皆さんの日本文化への理解や思い、志向などが直接的に現れていて、興味の尽きない力作揃いとなっていた。そしてたくさんの応募の中から、選び抜かれた上位10名が受賞。四コマというテーマが与えられたキッズ部門からも1名が優勝者に選ばれ、関係者が日本大使館に集って和やかに受賞式が行われたのだった。

もう10年以上前になると思うが、「クール・ジャパン」というコンセプトをキーに、日本のサブカル・コンテンツを世界に向けて英語で紹介した「Creative Japan」という冊子が、在英国日本大使館の主導で作成されたことがある。編集者として制作に関わらせていただいたのだが(どさくさに紛れてアニメの項目を執筆してしまったw)、 当時から変わらぬ思いがある。

漫画やアニメという文化は、真に日本の至宝だということだ。

私たちはほとんど生まれたときから漫画やアニメの文化に接して育ってきたので、この独特の言語/表現/作法というものが生活と身体に染み込んでいる。もちろんその文化の土台には、絵巻物、御伽草子や浮世絵があり、絵で何かを物語るという手法は私たちのDNAに刻み込まれていると言っていい。

このお家芸の中でも漫画のすごいところは、ドラマとビジュアルの総合芸術だという点である。ほとんどの漫画家さんが、ストーリーと絵の両方をご自身で創造されているという事実は、驚異に値すると思う。オリジナリティはもとより、高度な筆力と描写力の両方を要求される漫画は紛れもない第一級芸術だ。ストーリー設定はどこまでも自由で、小説よりも分かりやすく豊穣なイメージを伝えることができる。独特のファンタジックな世界観をもつNARUTOやワンピースといった現代の人気者をはじめ、社会派漫画、少女漫画、文芸漫画、シュールなギャグ漫画など、ジャンルを超えてそれは人の魂に訴えかける。

すぐれた創造性と魂を備えた漫画には、誰もが夢中になる。

th_2017-02-10_Mangajiman-017

2位入賞のShangomola Edunjobiさんが、東芝ヨーロッパのエクスクルーシブ・バイス・プレジデントの松田清氏からラップトップを贈られている〜

今年の受賞者の中で2位につけたロンドン在住の男性、Shangomola Edunjobiさんの「God’s Island」は、なんと日本神話をテーマにした作品。ダイナミックな構図は荒削りながら日本の漫画言語をよく理解していて、オリジナリティにあふれている。彼は子どもの頃から日本の漫画やアニメに親しみ、影響を受けたそうだ。彼は漫画をこう定義する。

「壮大に戯画化されたキャラたち、クレイジーな世界観、空飛ぶロボットや独特の髪型、目鼻立ち、ダイナミックなアート表現。それら漫画を構成するすべての要素の根底にあるのは、結局のところ、生の感情だ。漫画は感情に直結している。そこから僕自身は何を感じるのか。読者の心を揺さぶること、それが漫画の本質だろう」

であるならば、漫画は極めてユニバーサルなメディアである。

多くのイギリス在住の人々に、この偉大なるジャンルにチャレンジする機会を与える「漫画自慢コンペ」は、日英交流という枠を超えた、普遍的な意義があると思う。 願わくば・・・もっと日本の漫画が翻訳され、海外に浸透していってほしい。そしてそこから次世代の漫画家が生まれ、世界に漫画文化のすばらしさを伝えて欲しいと願う。もちろん、UK在住の日本人の皆さんも応募可能! ぜひぜひチャレンジしていただけたらなと、こちらも楽しみにしている。応募要項などはこちらで!

th_2017-02-10_Mangajiman-005

キッズの四コマ部門優勝者に賞が渡された後、審査員としてコメントを発表する玖保キリコさん。「四コマはとにかく起承転結が命なのよっ」と、プロの視点からとても分かりやすく伝えられた ^^

玖保キリコさんは2011年に報告されたJetroによる「英国におけるコンテンツ市場の実態」のインタビューに答え、「英国では漫画市場はまだ未熟で、漫画作法が浸透していないこと、流通や技術的な課題などがあるが、今後はデジタル・メディアの台頭もあり、日本と英国での規制の違いを超えて、日本の作品をどのように英国に導入していくかを考えていかなくてはならない」と述べておられる。ぜひぜひ、乗り越えていって欲しいと一漫画ファンとして切に願う。

漫画ファンにとって嬉しいのは、萩尾望都さんが昨年、朝日賞を受賞されたこと。漫画に対する業績での受賞は手塚治虫さん、水木しげるさんに続く3人目だそうだ。

萩尾望都さんによる受賞のスピーチに、漫画の持つ輝きが美しく表現されていると思う・・・
「小学生の頃、漫画が子どもに悪い影響を与える、と大人から嫌われていました。でも私は、漫画は美しいもの、新しいもの、豊かなものだという自分の感覚を信じることにしました。漫画には、小説のようなドラマがあり、映画や絵画のような美しい映像があり、言葉には歌があり、画面から音楽を感じさせられました。一枚の紙の上にすべてがあり、それは子どもの私にとって奇跡のような、不思議な魔法のようなものでした」

漫画から得られる感動は、言葉では尽くし難いのだ。漫画文化がんばれ!!

というわけで、こちらはレセプションの前にホテルのロビーでお会いしたキリコさん♪

th_kiriko kubo
キリコさんの漫画こそ、高度にニュートラルでユニセックスでユニバーサルそのもの。人間存在(ときに動物!?)のエゴや可笑しさを独特の間とキャラ、抜群のギャグセンスでえぐるシュールなキリコ・ワールドはなんと、英語に翻訳されているので、日本の漫画に興味のある非日本人の皆さんに漫画文化を紹介するのに最適♪ ぜひぜひ漫画を知らない周りの人に漫画の素晴らしさを伝えてほしい。

第10回 漫画自慢コンペ受賞者の作品展示会は、
在英国日本国大使館で2017年3月31日まで開催中です。
開催日時:月〜金 9:30 – 17:30
会場:在英国日本国大使館 101/104 Piccadilly, London W1J 7JT
※入館にはパスポートや運転免許証など身分を証明するものが必要です
※この記事でご紹介した写真のうち、ホテルでのキリコさんの写真以外すべて、日本大使館よりご提供いただきました

Share.

About Author

アバター画像

岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

ウェブサイト

Leave A Reply

CAPTCHA