Monohon Ramen モノホン・ラーメン
オールド・ストリート沿いを歩いているとき、「ものほん」の文字が目に飛び込んできたのが1年半ほど前。改装中の店舗を横目で見つつ、「ふむ、ラーメン屋さんができかけていのだな」と心のメモに書き込み。その後、いくらたってもその店舗は完成せず。日本のメディアから「ロンドンはラーメン・ブームらしいですよね。面白い情報ないですかぁ?」と聞かれ、「日本のラーメン店で修業したイギリス人が新しい店を始めるらしいんですけど、店が全然開かないんですよね〜」と生返事をしていたのがその頃。ウェブサイトは立派なものがオープン前からできていて、日本語で書かれたページもあって情報だけは前倒しで入ってきていたものの、じらしにじらされ、文字通り、満を持して登場したのが、こちら「Monohon」ラーメンです。
90年代に日本で働いていたというイアンさんが、ラーメンに取り憑かれ、サラリーマン時代に貯めた貯金を使い果たして創り上げた夢の城です。イーストでは折に触れてポップアップが出ていたらしいのですが、ふだんラーメンを追いかけていない私には初めて接する名前。ここで詳しく開店の経緯を書かずとも、すべてウェブサイトに日本語で書かれているので興味ある向きはこちらをご覧あれ。
小さな店舗ですが奥に4、5テーブルほど置ける空間があり、赤提灯に格子窓と、若干いかがわしさを感じさせる(笑)場末日本の雰囲気を上手に表現しているインテリアはさすが。品書きは意外と多くて「油そば」「台湾まぜそば」「冷やし中華」「醤油豚骨」「辛味味噌油豚骨」とカテゴリーが並び、それぞれに2、3品のオプションがあります。迷いに迷った末に、ベジタリアンの友人と一緒だったこともあり、油そばのベジタリアン・オプションを注文。暑い日だったので、友人は冷やし中華のベジタリアン・オプションを。
注文はイアンさん自らがにこやかに取りにきてくださいました。ウェブサイトでお顔を拝見していたので、こういうときにすぐにオーナーさんだと分かるのはいいものです ^^ イアンさんは「よく混ぜ混ぜして食べてね」と言い添えながら私の前に油そばをサーブし、そして友人の前に差し出されたのがこちらの冷やし中華。
手前のハム様のものはベジタリアン・ハムかなとも思ったのですが念のためイアンさんに聞いてみると・・・恥ずかしそうに「Sorry」と引き下げていかれました(笑)。オープンしてまもないときって、こういうこともあります。顧客は温かく店を育てていきたいですよね。なぜって、お味がとてもよかったから ^^
お恥ずかしながら私は「油そば」というのを聞いたことがなくて、調べてみるとタレとからめて食べるラーメンなのですね。すでに20世紀半ばには東京で登場していたというラーメン形態らしいです。私は西日本で育ったので知らなくて当然といえば当然なのですが・・このコンセプトを聞いて、故郷倉敷の「ふるいち」といううどん屋さんを思い出しました。倉敷には大将の古市さんが神業とも言えるマーケティングで世に送り出した濃いつけ出汁にうどんをからめて食べる「ぶっかけうどん」が90年代初め頃から存在し、現在は倉敷市民なら子どもの頃からせっせと食べて育つのですが、これにとてもよく似ているなと思いました。
イアンさんのラーメン麺は、すべて手打ち。シコシコとした歯触りを出すためにわざわざ小麦粉を日本から取り寄せているそうです。硬水もよくないらしいので、天然水を使ってこねているそうなので、美味しくて当たり前。食べ応えのある味わい深い麺がお好きな方には、とってもおすすめ。またタレのほうも現地の人に合わせてごま油の力を借りた濃いめのタレではありますが、少量を麺にからめるのでこれが適当な濃さ。まさに後をひく美味しさです。
冷やし中華のほうは太麺と普通麺を選べるみたいですが、友人がどっちを選んだのかは聞き逃しました・・・油そばと同じなので、たぶん太麺でしょう。こちらは打って変わって上品な薄味。醤油ベースでさっぱり食べたい日本の冷やし中華とはコンセプトが少し違うタレの印象ですが、麺が違うのでタレも変わってきますよね。その他、醤油ベースのラーメンもあるので、次回は別のものも試してみたいと思います。
イアンさんの情熱がほとばしる、イアン流ラーメン。日本人の皆さんもきっとお好きだと思います。とくに金田屋やボーン・ダディーズの豚骨にはちょっと飽きた・・・という皆様におすすめ ^^