ピカデリーの新帝王

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Hide  ハイド

フィッツロヴィアの一角に、かつてDabbousという名のレストランがありました。イギリス国内の数々のトップ・レストラン、スペインのトップ・レストランでの経験を経て、シェフのオリー・ダボスさんが満を持してオープンした自身のお店でした。

研ぎ澄まされたミニマル思考のDabbousはロンドンのフーディーたちの心と舌をかっさらい、何ヵ月も先まで予約が取れない超人気レストランへの道を駆け上がりました。その波に乗って、次々とカジュアル路線のレストランもオープンし、全てが順調に見えたのですが・・・2016年頃に一挙に全レストランをクローズしたんですよね。なぜ〜?と私も思っていたのですが・・・どうやらこの巨大レストラン、Hide立ち上げの話があったからなのですね。

ピカデリー沿い! 2階からはグリーン・パークを望めます。

ピカデリー沿い! 2階からはグリーン・パークを望めます。

Hideはグリーン・パークを望む好立地を謳歌する大通りのピカデリー沿い。近代的なビルを大々的に改装してできた3フロアの大規模レストランで、2018年春に堂々とオープンしました。シェフの友人に「行ってみない?」と誘われ興味があったので昨年の秋頃に訪れたのですが、素っ気ないビルの外観と相反するように、まずダークな色合いのナチュラル木材を使ったシックな入口にびっくり。中に入るとその広大なフロア面積、現代的なエレガンスを表現したインテリアなどにも重ねて驚かされ、これだけのレストランをロンドンの一等地に創り上げた資金の存在にびっくりw

1階席窓際席でも、外からは見えないガラスを使っているので落ち着いて食事できます ^^

1階窓際席でも、外からは見えないガラスを使っているので落ち着いて食事できます ^^

食前シャンパン行っちゃいますよ!

食前シャンパンいっちゃいますよ!

オリー・ダボスさんが自身のレストランを閉めてタッグを組んだのは、若くして億万長者となったロシア人実業家のエブゲーニー・チチヴァルキンさんでした。エブゲーニーさんはDabbousの常連さんだったのですね。彼はロシア国内の携帯電話業界で財を成した方ですが、紆余曲折を経てロンドンに移住し、2012年にメイフェアにHedonism Winesをオープンしています。このワイン・ショップ、前を通るだけでただ者ではない匂いがしていまして何度か中に入って偵察したことがありますが、潤沢な資金の香りが充満しています(笑)。ワイン好きでまだHedonism Winesに行かれたことがない方は、ぜひ行ってみてください。地下も必見^^

さて、Hideです。私たちが座ったのは、1階のGROUND。アラカルト料理や朝食・アフタヌーン・ティーなどをサーブする中核をなす空間で、ABOVEと呼ばれる2階はセット・ランチとテイスティング・メニューをサーブする場所。アラカルトは前菜の前にいただくスナック的なもののリストも長いので、食事セクションは3つに分かれています。このスナックが平均10ポンド、スターターが20ポンド弱、メインは38ポンド平均と、大変高級なお店です。普段ならセット・ランチで腕試しする部類の店ですが(笑)、腹をくくるしかありませんw

ハウス・キュアード・シャルキトリーズ 3種盛り合わせ。贅沢♪

ハウス・キュアード・シャルキトリーズ 3種盛り合わせ。贅沢♪

TO GRAZEと銘打ったスナック部門からは、自家燻製したハムを。3種の盛り合わせは、セージ&フェヌグリーク風味のガチョウ、キャラウェイ&ジュニパー風味のポーク・チーク、カラミンサ・ネペタというハーブで風味づけしたラム。舌の上でトロけるようなハムは種類によって強弱はありましたが表記されている材料の風味も上品に感じられ、シェフの友人も感心していました。

自家製ブレッド・バスケットと冷製の赤エビ。スープの繊細さを楽しみます♪

自家製ブレッド・バスケットと冷製の赤エビ。スープの繊細さを楽しみます♪

美しいカニ肉のサラダ。カニ肉がもっと新鮮だったら!

美しいカニ肉のサラダ。カニ肉がもっと新鮮だったら!

前菜からは、赤エビの冷製シェル・ブロスと、カニ肉のタルトレット+アボカド&エルダーフラワーをチョイス。赤エビは非常に上品でシンプル。オリーさんの料理のスタイルが凝縮されている感じがしました。カニのほうは惜しげもなくタルトレットに盛られているカニ肉がとびきり新鮮というわけではなかったようで、少しシーフード臭さが残っていたのが残念でした。プレゼンテーションは美しかったですけど!

主菜からはタコのBBQ白ミソ・ソース、ラム肉&夏野菜を。私がメインにタコをいただきました。プロの技術が可能にする繊細な味わいを楽しんだことは間違いないのですが、他のレストランでいただく美味しいタコ料理と比べて正直、このタコ足1本で36ポンドというのはやはり場所代上乗せなのかなという気がします。ラムの方は少しいただきましたが、野菜の付け合わせも麗しくさすがに美味しいですね^^  使ってある部位も貴重な部分でしょうし、スライスを重ねてまとめたポテトは絶品。どのコンポーネントも素晴らしかったのではないでしょうか。

タコ足!!

タコ足!!

ラム肉のお料理。じっくり味わいたい感じ ^^ 右は建物フロントに掲げてある看板!? 鉄の棒とライティングで「HIDE」と読ませているの。クレバーですよね。

ラム肉のお料理。じっくり味わいたい感じ ^^ 右は建物フロントに掲げてある看板!? 壁からにょっきりと突き出た鉄の棒とライティングで「HIDE」と読ませているの。クレバーですよね。

さて、個人的に最も感銘を受けたのは、何を隠そう・・デザートでした♡ きっちり一人一品ずついただきましたが、両方とも素晴らしかった。定番品らしいHideメープル・リーフ&ピーカン・ミルフィーユは、ほのかにピーカンの香りがする上品なクリームをメープル型のおせんべいで救っていただく満足度たっぷりのデザート。メープル・ソースも後からお皿に流し込まれます♪  写真左は干し草アイスクリーム+ミラベル&レモンタイム。懐かしさを感じるフレッシュな干し草の香りを楽しむ自家製アイスクリームの下には、ミラベルのコンポートが入っています。五感を刺激する至福の味。

右がメープル・ミルフィーユ。左が干し草を使ったアイスクリーム。

右がメープル&ピーカン・ミルフィーユ。左が干し草を使ったアイスクリーム。美しいプレゼンテーション!

個人的な感想としては、私たちがいただいたスターターもメインも、ここでなくても似たものを楽しめるかもと思うのですが、これらのデザートは、Hideだけだなと^^  本日ご紹介しなかった食事のメニューには、おそらくオリーさんならではの料理ももっとあると思うので、グルメな皆さんはぜひ探してみてくださいね。

Dabbousが超有名になる前に、一度だけ行ったことがあるのですが、その時の感想は「美味しいけど、超絶人気の理由は正直ピンとこない」というものでした。好みもあると思うのですが、オリーさんの料理はシンプルで衒いがないことが身上で(と言っても素材や技術は一級)、別の言い方をすれば食べる方の舌も肥えていないと、その真価は見抜けないということなのではと思っています。

お料理もインテリアもお値段も、ここが非の打ちどころのないファイン・ダイニングであることを示していますし、ゆったりとした雰囲気と相まって、相対的な体験としてはやはり素晴らしかったと思います。ワイン・リストに至っては、ロンドン最長との触れ込み(ヘドニズムって快楽主義という意味です^^)。BELOWという名の地下空間はもちろんバー。特別な日のお祝い、大切な方の接待に使えそう?  どうかな〜と思われた方、ABOVEのセット・ランチは48ポンドです。アラカルトに比べるとかなりリーズナブルなので、こちらでやはり、腕試ししてみられてもいいのかも^^

85 Piccadilly, London W1J 7NB

店名Hide
最寄り駅Piccadilly Circus / Green Park
住所85 Piccadilly, London W1J 7NB
電話番号020 3146 8666
営業時間月〜金 7:30 – 23:15 土 9:00 – 23:15 日 9:00 – 22:30
URLhttp://www.hide.co.uk
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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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