代々受け継がれるDNA、新たに加わる文化、才能。そこから生まれるハイブリッドな料理。2018年秋、西ロンドンのノッティング・ヒル・エリアに に誕生しているカラクテアは、あるべくしてある新タイプのサラブレッド・レストランなんだと思います。テレビ・シェフとしても大活躍するフレンチの大御所、ミッシェル・ルー・ジュニアさんの娘さんでシェフのエミリーさんと、ミラノ出身のシェフでエミリーさんの夫、ディエゴ・フェラーリさんが夫婦デュオでお届けする極上のレストラン。かといって堅苦しいわけでもなく、砕けすぎているわけでもなく。ちょうどいい塩梅にリラックスしながらスペシャルなお料理をいただける、とっておきのレストランなのです。
場所はちょうどミシュラン2つ星を維持するLedburyがあるあたり、ウェストボーン・パークの近く。ノッティング・ヒルと言ってもちょっと落ち着いた住宅街が広がっているのんびりとしたエリアです。この日は3コース+コーヒー&水で39ポンドの平日セット・メニューを頭に思い描きながら2名でランチに行ったのですが、セットに含まれるお料理以外にも興味をそそるものがあったので、1人前をセットで、1人前をアラカルトにすることにしました。
ヘッドシェフのディエゴさんはイタリア出身ですが、シェフとしてのトレーニングの大半はフランスで積み、その後、ロンドンに渡ってミシェル・ルー・ジュニアさんの2つ星フラッグシップ・レストラン、ル・ガブローシュで3年に渡ってヘッドシェフを務めた叩き上げです。ここできっと、エミリーさんと出逢ったのでしょう♡ エミリーさん自身もシェフで、お父さんがミシェル・ルー・ジュニアさん、お爺さんと大叔父さんがミシェル・ルーさん&アルバート・ルーさんというサラブレッド3代目。
でもね、カラクテアでは期待通り、イタリアンなエッセンスもたっぷりと味わえるのです〜♪
さて、まずは前菜から。お店のスタッフが「シグニチャーの一つよ〜」と教えてくださったのは、セロリアックのカチョエ・ぺぺ(ペコリーノと胡椒のパスタ)。濃厚なクリーミー・ソースで平打ち麺状にしたセロリアックをいただくのですが・・・しつこすぎず、水っぽすぎず、完璧。熟成バルサミコ酢が味に深みを与えます。そしてもう一皿の前菜には、本日のスペシャルだったイイダコ♡ ロンドンで小ダコをいただけるなんて♪
タコの火の通し具合がいい塩梅で、カラメライズしたチコリとさっぱりフェンネルのサラダを添えていただくのですが、ソースともども複雑な味のハーモニーを楽しめる素晴らしい一皿でした。エキストラの食感を添えるために何かのクランブルも散らしてあったと思います。個人的に今年上半期のナンバーワンのお皿です♪
そしてメイン・コースには、こちらもシグニチャーのラビオリ、そしてアラカルトからサーモンのグリルを。
ラビオリの中身はスロークックした子牛のすね肉。ご覧の通り、とても濃厚なリダクション・ソースでいただくのですが、この甘辛い味わいは日本人の舌をがっつり掴む旨味の宝庫です。
サーモンはどうです、このエレガントなプレゼンテーション。カニをイメージしているのでしょう。コンフィされたシャロットの下に隠れているのは、ローストした野菜やオリーブを細かく切ったもので、ソースといい、サーモンの火の通し加減といい、ハーモニーが完璧。文句の付けようがないんです。
デザートにも驚かされました。セット・メニューにチョコレート・ケーキというのがあり、おすすめされたのでそれを一つ。そしてバナナのタルト・タタンをアラカルトから選びました。
チョコレート・ケーキがすごかったんです。まだ温かい小鍋にいっぱい、濃厚な甘さ控えめケーキがたっぷりと入ってきて、テーブルでお皿にとりわけてくれます。これにマスカルポーネのアイスクリームを添えていただきます♪ 正直言ってデザートとしては日本人なら3名は満足するくらいの量だったかも。(2名で完食しておいて何を言いますのん、と言われそうですがw)
バナナのタルト・タタンは味はよかったのですが、ちょっと焼きすぎかなぁという印象でした。りんごのタルト・タタンは、柔らかくカラメライズされたりんごとサクサクのパイのバランスを楽しむお菓子だと思いますが、同じようにするならバナナの量が足りなかったのかも。見た目は可愛いけど! とはいえこの日はチョコレート・ケーキがスター・デザート。選んで正解でした!
結局お酒はいただかず、スパークリング・ウォーターで3コースをいただき、サービス料込みで支払ったのは1人50ポンド。ロンドンで今、50ポンドでこれほど満足できるトップシェフのいるレストランって、意外と少ないのではないでしょうか。(お酒好きな方は、もうちょい高くなります!)
ご一緒させていただいたお友達が、イギリスのトップシェフたちと親しい方で、ふだんならやらないことをしちゃいました。そう、シェフに会いに行ったんです! シェフにご挨拶したいと告げると、しばらくして「厨房へどうぞ」と案内されました。そしてヘッドシェフのディエゴさんにお会いしました♪
自らのヘリテージであるイタリアの食文化と、世界の料理界に君臨するフランスの流儀を身につけたスターシェフ。美味しい料理とは? ではなく、人が真の意味で満足する料理とは? を実地から学んできた才能ある方だと思います。そして当店では厨房ではなくマネージメントを担当しているシェフのエミリーさんも、メニュー開発には関わっていると言います。夫婦二人三脚のレストランなんですね。
私がレストランを評価するときは、味だけでなく雰囲気・価格・サービスなど体験全体のバランスを見るのですけど、カラクテアは全てにおいて素晴らしかった。フランス語のカラクテアとは、英語ならキャラクターという意味。お店のパーソナリティーを大切にしているのだそうです。
お料理は究極的には好みですが、日本人の皆さんが満足する食体験が待っていることは間違いないと思います^^ あぶそる〜とロンドンの2019年上半期のナンバーワンとさせていただきます♪