天才ミクソロジスト、Mr.ライアンと発酵ラボ・レストラン

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CUB カーブ(閉店)

自分では絶対行かないようなレストランに、友人の提案で行ってまいりました。このレストランはすでに2年前くらいにオープンして横目でチェックはしていたと記憶しているのですが、お酒専門の超有名バーテンダー、Mr.ライアンことライアン・チェティヤワダナさんの新レストランで、しかもコース料理のみということでお酒にさほど思い入れのない私にはほとんどノーマークでした。そしてウェブサイトを見ていて「はっ」と思い出したのです。そうそう、ライアンさんの店だわ〜と。

Hoxton Street沿いの趣あるビルの中♪

場所はホクストン。ここはかつて、Mr.ライアンをその独創的なカクテルで一躍有名にした最初のバー、White Lyanがあった場所です。Mr.ライアンは天才肌なのか事業家なのか、どんどんお店をオープンしたり閉じたりしていて、その度にブランド名を変えて楽しませてくれます。

White Lyanの後はたしかSuper Lyanという名前に変えて同じ場所で再オープン。その後、サウスバンクのモンドリアン・ホテルにDandelyanっていう名前の店をオープンしていたのですが、ここも今はLyanessという名前になっています。場所を変えていないところをみると、おそらく自身の興味あることと現在やっていることが折り合わなくなったら、すぐに手放して切り替えをしたくなる人なのでしょう。ある種の実験マニア。新しいことにチャレンジすることをいとわない人^^

とても小さなレストラン! よく見るとカラースキームが美しいです ^^

さて、ここはそんなMr. ライアンの真価が存分に発揮されている料理とドリンクのコラボ・スペース。訪れるなら先にコンセプトを知っておくのがいいと思います。ここでサーブされるのはコース料理のみで、6コース+6ドリンクで現在のところ67ポンド。シャンパンのKrugも一枚噛んでいるようで、コース・ドリンクの中にはKrugも含まれています♪

料理はほとんどが野菜。動物性食品はほんの少し加わる程度です。厨房を取り仕切る共同オーナーは、英国初の廃棄物ゼロのレストランをブライトンで立ち上げたことで知られるダグラス・マクマスターさん。だから、もちろんCUBも廃棄物ゼロ。Mr. ライアンと同じくらいこだわりを持つマクマスターさんは、どうも発酵食品を使った実験料理に力を入れているようで、今回のコース料理は相当にお酢の存在を感じました。きっと自家製の発酵食品作りにハマっていらっしゃるのでしょう^^ ちなみに、その料理を技術的に支えているのが博士号を持つサイエンティストのアリエリー・ジョンソンさん。コペンハーゲンのNomaでもコンサルをしていた経験があるそうですよ。

これだけのチームが創り上げる、まさに夢のコース料理ですね。さてさて、そのお手並みやいかに・・・^^

ヴィーガン・カナッペ。繊細&ヘルシー♡

Krugが入ったグラスはミニミニなんですけどw 中にウォーターゼリーが入っていて趣があります

ミニ・シャンパン・グラスに入ってきたKrugと一緒に出されたのが、ヴィーガン・カナッペ2種。コールラビの皮にスイート・チャービルのピュレをのせ、うっすらピクルスされた人参といただく“タコス”、そして銀杏と豆ピュレの紫蘇巻き。どちらも突き出しとしては完璧。とても繊細な味です。ちなみにKrug Grande Cuveeグラスの底にはゼリーが沈んでいました^^

続くのはスモークしたクレーム・フレッシェに甘さを出したビートルートとポーチしたブラックカラント&セージを組み合わせた品。味のハーモニーも素晴らしく、大変美味しくいただきました。一緒に出されたドリンクはソラマメのネクター! セロリのエキスとあいまって、相当ボタニカルな風味でクセがあるけど面白い味。ハーブ・エキスを飲んでいるような感じでしたw

左がスモーク風味のクレーム・フレッシェとビートルートの一品。右上がカニとトマトのブロス、右下はパンについてきたプチトマトのピクルス

E5のサワードゥはいつ食べても美味しいね!

次に登場したのがE5ベイクハウスのサワードゥ・ブレッドとプチトマトのマリネ、そしてカニとトマトのブロス! このカニのブロスが相当に濃厚で、連れはすごく好みだと言っていましたが、私は濃厚すぎて半分くらいしか飲めず。かなりの嗜好品という印象を受けました。

この後、スコッチの名門ブルックラディ&リンゴのカクテルが続きます。モルトウィスキーの芳醇な味わいに爽やかなリンゴ(酢)が加わり、素敵なサマードリンクに♡ 隠し味?は果樹園育ちの麹らしいですがそこまでは味わえなかったですね・・・。お料理は見た目も美しい黄色く丸いズッキーニの出汁ブロス。スパイスはワイルド・スマックで。こちらは野菜そのものの力強い味を感じられるさっぱりとした温かいお料理で好印象でした^^

黄ズッキーニのブロスとウィスキー・カクテル。

彩りがきれい! 右はミネラル感の強いスペインの白ワイン。

さて、最後の温かいコース料理の前に出されたのが、スペインはカタルーニャ地方のラ・ランベラ。バイオダイナミック農法で育てたパンサ・ブランカ種のブドウで作るキリッとした酸味とミネラル感のあるワインはいかにもワイルドなテイスト。ただしスペインの暑い時期に塩辛いパエリアと一緒に飲むのはいいけれど、そろそろ舌が酸味疲れしてきたかな〜と感じ始めた頃合い^^;  そこへ、やっとガツンとスパイスの効いたクレイフィッシュとスクアッシュの一品が運ばれてきました。

マヌーカ・ハニーのドリンクとスパイシーなクレイフィッシュの一皿。

このお料理もなかなか美味しかったのですが、先ほど同じウリ科のスクアッシュと似た食感のズッキーニをいただいたばかりだったので、ちょっと素材選びに工夫が欲しかったかなと思いました。でもキノコやクレイフィッシュも完璧に火を通されていて、料理人の腕を感じさせます。合わせるドリンクはレモングラス&マヌーカのスッキリ味のマラウィ・カクテル。

バーリーのムース、美味しかったです♪ この写真の裏側には酸っぱいグースベリーがゴロゴロありますw 左は甘みのあるブランディ・カクテル。

そしてデザートはグースベリーのピクルスを添えたバーリー・ムースでした。こちらにはラクト・ベリーとココナッツのブランディをマッチング。バーリー・ムースはほのかにバーリーの味が感じられてとても美味しかったのですが、ずうっとピクルスやドリンクの酸味を味わい続けていた身としては、グースベリーの酸っぱさが仇に。食事コースがさっぱりスッキリしているので、デザートはやはり甘く締めて欲しかったなというのが正直な感想です。

とはいえ、6コース+6ドリンクを完食してお腹はいっぱいですが、大変ヘルシーで軽い感じなので、ダイエット中のごちそうとして、また普段から健康に気をつけておられる方にはぴったりの外食先。何よりシェフとミクソロジストの食材への知識、天賦の才能、創意工夫をガンガンと感じられ、とても良い刺激にもなりました^^

そして最後におまけとして出していただいたのが、こちらのロリポップ! かわいい〜・・・

シャーベット・ロリポップ♪

だけど・・・やっぱりスッキリさっぱりで全然甘くないんですよ〜(笑)。その姿勢は素材本位、と言い換えできるかもしれませんね。

甘いのが苦手な方にもぴったりのお店です ^^  個人的にはパンに付いてきたトマトのピクルスを酸っぱくないものにし、デザートのグースベリーをせめて甘くすれば完璧だったのかなと思ったりもします。ただこれだけの繊細な味のバラエティを料理とドリンクを通して67ポンドで味わえるのはお値打ちだと思います。興味ある方はぜひ、Mr.ライアンのラボを試してみてください!

153 Hoxton Street, London N1 6PJ

店名CUB
最寄り駅Hoxton
住所153 Hoxton Street, London N1 6PJ
電話番号020 3946 7060
営業時間水〜土 18:00 – 深夜
URLhttps://www.lyancub.com
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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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