第50話 Jam roly-poly ~ジャムローリーポーリー~

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okashi


<Jam roly-poly ジャムローリーポーリー>

前話の「スポテッドディック」の妹分にあたるのが今日ご紹介する「ジャムローリーポーリー」。スポテッドディックと違って随分かわいらしい響きの名前ですが、ほぼ作りは一緒。小麦粉とその半量くらいのスエット(ケンネ脂)、そしてそれがまとまる程度に水を加えて作るスエット生地にカランツではなくジャムを塗って巻き上げる、ジャム入りスエットプディングのこと。やはり現代はオーブンで焼くタイプ(もしくは蒸すタイプ)が主流ですが、こちらも本来はプディングクロスに包んで、お湯で茹でるのが原型。Mrs Beeton (「Household Management」1861年)のレシピでも、「しっかり粉をはたいたプディングクロスに包み、2時間茹でること」 となっています。バターと違い風味のあまりないシンプルなスエット生地ですから、中に入れるジャムは彩りと味を考えてラズベリージャムを使うことが多いのですが、ビートン婦人は「マーマレードやミンスミートでも美味しく作れますよ」~とのアドヴァイスも付け加えています。

最近はオーブンで焼き上げるのが主流のジャムローリーポーリー☆

最近はオーブンで焼き上げるのが主流のジャムローリーポーリー☆

そう、ジャムローリーポーリーが一番手軽で人気ではありますが、他に何を巻いてもいいのです。レモンカードを巻けば「レモンカードローリーポーリー」。ゴールデンシロップを巻けば「トリークルローリーポーリー」、ベーコンやチーズを巻いたセイボリーのローリーポーリーだっていいのです。じゃあ猫を巻いたら・・・と考えたのが、ピーターラビットで有名なBeatrix Potter。彼女が1908年に出版した本が「The Roly–Poly Pudding」(後に「The tale of Samuel Whiskers(ひげのサムエルのお話し)として再出版」)。子猫のトムがねずみに捕まり、ローリーポーリープディングのフィリングとして巻かれて危うく食べられそうになる~というお話しです。二匹のねずみがめん棒でぐるぐると猫入りスエットプディングを作っている挿絵はなかなかの迫力(笑)。

レモンカードローリーポーリーにもカスタードをたっぷりかけて☆

レモンカードローリーポーリーにもカスタードをたっぷりかけて☆

~迫力があると言えばこのプディングの別名がまたすごい。「Dead Man’s Arm(死人の腕)」または「Dead Man’s Leg(死人の脚)」、、、。何故そんな怖い名前がついたかと言うと、当時ローリーポーリーを茹でる時にプディングクロスの代わりに古くなったシャツの袖を再利用していたから~というのがその理由。まぁそんな風に見えないこともないけれど、「今日のデザートは『死人の腕』よ~♪」なんて言われても食欲わかないでしょうに、、、。
スポテッドディックの妹分のローリーポーリー達を数人ご紹介しましたが、せっかくなので、いとこ達も二人ほど紹介してしまいましょう。二人とも比較的若いのでペストリーにはスエットではなくバターを使用するのですが、あとの作り方は似ています。まずはオックスフォードシャーはKiddington村生まれの「Hollygog pudding」君。ペストリーにゴールデンシロップをたっぷり塗ってくるくる。ここまではいいのですが、なんと牛乳風呂に入れられた状態でオーブンで焼かれます。

たっぷり注いで焼く牛乳がキャラメル色のソースに変身☆

たっぷり注いで焼く牛乳がキャラメル色のソースに変身

そしてワイト島出身の「Isle of Wight pudding」ちゃん、こちらのフィリングは蜂蜜と大量のブラックベリー。やはりミルク風呂&オーブン焼きは一緒。どちらもローリーポーリーの半分程の高さまで牛乳を注いだ状態で焼くのですが、焼きあがる頃には煮詰まったミルクがキャラメル風味のソースになるというなかなか技のある子たちです。

ブラックベリーとハニーたっぷりのワイト島生まれのローリーポーリー☆

ブラックベリーとハニーたっぷりのワイト島生まれのローリーポーリー☆

イギリスにはまだまだ個性豊かなローリーポーリーファミリーがいそうですが、今日のところはこの辺で、、、。

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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