第66話 Scarborough Fair shortbread ~スカボローフェアショートブレッド~

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tunookashi


<Scarborough Fair shortbread スカボローフェア ショートブレッド>

「スカボローフェア」という言葉で真っ先に思い出したのはサイモン&ガーファンクルの 「Scarborough Fair」 という曲。すぐには思い浮かばなくとも、フレーズを聞いたらきっと誰もが「あ~あれね」と思いあたる哀愁漂う曲です。Scarboroughとはイギリスのヨークシャー地方の海沿いにある、中世の面影を残す街。そこで13世紀頃から毎年夏に開かれていたという大きな市(マーケット)がスカボローフェア。この定期市に向かう旅人に自分の昔の恋人がそこにいるから伝えてくれ~という内容の歌詞なのですが、その中で印象的に何度も反復される 「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム…」のフレーズ。 この4つのハーブをシンプルなショートブレッドに加えたのが今日のテーマの「スカボローフェアショートブレッド」です。

scarborough fair 1

4つのハーブが持つ力を分けてもらいましょう☆

このショートブレッド作りにとりかかる前に~折角なのでちょっとその詩の内容を見てみましょうか。

Are you going to Scarborough Fair? (あなたはスカボローフェアに行くのですか?)
Parsley, sage , rosemary and thyme (パセリ、セージ、ローズマリー、タイム)
Remember me to one who lives there (そこに住むある人によろしく伝えて欲しいのです)
For once she was a true love of mine (かつて私の恋人だったその人に)

Have her make me a cambric shirt (彼女に麻のシャツを作るよう伝えてください)
Parsley, sage , rosemary and thyme (パセリ、セージ、ローズマリー、タイム)
Without a seam or fine needle work (縫い目も細かな針仕事もなしに)
And then she’ll be a true of mine. (そうすれば彼女は私の恋人になれると)

Have her wash it in yonder dry well (彼女にそれを枯れた井戸で洗うよう伝えてください)
Parsley, sage , rosemary and thyme (パセリ、セージ、ローズマリー、タイム)
Where ne’er a drop of water e’er fell (一滴の水も雨も降らないその場所で)
And then she’ll be a true love of mine. (そうすれば彼女は私の恋人に)
・・・・
こんな感じでいくつもいくつも恋人への無理難題を羅列する男性。そして呪文のように繰り返される「Parsley, sage , rosemary and thyme」のフレーズ。「あれっ?知っているのとちょっと違うような、、、」。そう、サイモン&ガーファンクルが歌ったものとはちょっと歌詞が違いますね。サイモン&ガーファンクルがこの曲をリリースしたのは1966年のことですが、実はこの曲、もともとイギリスに古くから伝わる「Broadside ballad (ブロードサイドバラッド)」のひとつを彼らがアレンジしたものなのです。バラッドとは民衆や吟遊詩人によって歴史物語や社会風刺、寓話などを旋律にのせ、口から口へと歌い継がれた民謡のことで、その歴史は13世紀頃まで遡れると言われています。文字を持たない民により口承伝承されたものなので、ひとつの歌でもいくつものバリエーションが存在しますが、上記の歌詞はその中のひとつ。サイモン&ガーファンクルのものは原曲に反戦の意味合いを込めて編曲したものなのです。ブロードサイドバラッド(文字に印刷されるようになってからのバラッド)はナーサリーライム(マザーグース)同様数多く残され、イギリスの文学や文化にも多くの影響を与えています。ところで気になる「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」の意味ですが、これにはいろいろな解釈があり、どれが正しいという答えは見つかっていません。パセリには昔から悪の力を遠ざける魔法の力があると言われ、セージは不滅の魂を、ローズマリーは貞節と愛を、タイムは幸運と心の平和をもたらすとされていることから、旅人が男への返答として繰り返しているとか、またこの言葉自体に意味はなく、もともとの古語の歌詞が似たような語へと変化し、言葉遊びのように繰り返されている、など諸説・・・。

Parsely , Sage, Rosemary and Thyme....

Parsley , Sage, Rosemary and Thyme….

ではそろそろ、Scarborough Fair shortbread を作ることにしましょう。

    1. 無塩バター175gを室温で柔らかくし、グラニュー糖90gを加えてよく混ぜます。
    2. ここに薄力粉225gとコーンスターチ25gを合わせてふるい入れます。
      パセリとセージ、ローズマリーとタイムを合わせて刻んだもの大さじ2も加えたら、粉が見えなくなるまでゴムベラなどで合わせ、ラップに包んで冷蔵庫で15分位冷やします。
    3. 3~4mm程の厚さにめん棒でのばしたら、5~6cmの丸型で抜き、160℃のオーブンで15分程うっすらと焼き色がつくまで焼いたら出来上がり。
      ※ ハーブの割合はお好みで。
ハーブの香りと緑を消さないよう色白に焼き上げて☆

ハーブの香りと緑を消さないよう色白に焼き上げて☆

ヨークシャー地方のレシピを集めた小さな本の中に見つけたこのレシピ。ショートブレッドの中にこんなに沢山のフレッシュのハーブを入れるなんて、面白いけれど一体どんな味になるのだろう?半信半疑作ってみたら~ 4つのハーブが複雑に交じり合い、いつものバター香るシンプルが身上のショートブレッドが奥行きのある大人な味わいに生まれ変わっていました。変化球よりシンプルが一番好き、私のようにジンジャーはさておき、チョコレートやキャラメルを入れたショートブレッドには興味はないわというあなたも、このレシピだけは一度試してみる価値ありです。そしてショートブレッドが焼けたら Scarborough Fair を聴きながら紅茶とともに味わってみてください。ハーブの鎮静効果と曲の奏でるあの憂いを帯びたメロディーが深く心落ち着くティータイムをお約束します。

 

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

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