第68話~Fairy cake, Butterfly cake and Queen cake フェアリーケーキ、バタフライケーキ、クイーンケーキ~

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okashi


<Fairy cake, Butterfly cake and Queen cake  フェアリーケーキ、バタフライケーキ、クイーンケーキ >

一度火がつくと、息の長~いイギリスのブーム。カップケーキが流行り始めたころに生まれた赤ちゃんも、もう立派なティーンエイジャー。ここまで来ると一過性のブームを通り越し、もはや定番と化しつつありますが、やはりあのこれでもかとバタークリームを盛りに盛ったカップケーキをイギリス菓子と呼ぶのはどこかためらわれるのは私だけではないはず。カラフルで底抜けに明るいアメリカ育ちのお嬢さん方に、イギリス生まれの控えめで素朴なフェアリーケーキやバタフライケーキたちはたじたじですが、彼女たちこそ生粋のイギリスのカップケーキ。「フェアリーケーキ」はアメリカのカップケーキよりひとまわりサイズは小さく、デコレーションは控えめ。バタークリームではなく薄いアイシングで飾られることが多く、生地もアメリカのものより軽くふんわりとしています。「バタフライケーキ」はフェアリーケーキの上の部分をくり貫いてバタークリームやジャムなどを詰め、先ほどの切り取った生地を半分にカットしてチョウチョの羽のようにアングルをつけて差し込んだもの。どちらも子供たちのバースデーパーティーやおやつの大定番。家庭で楽しみながら作るものでした。それが気づくとハイストリートにはひときわ精彩を放つカップケーキ専門店。屋外のマーケットに出掛けても、人が集まっているのは鮮やかなデコレーションをたっぷり施したカップケーキのストール。なんでも2012年にはイギリスで110,000,000個ものカップケーキが売れたのだとか。

バタークリームたっぷりのカップケーキにはやはり視線を奪われてしまいます☆

バタークリームたっぷりのカップケーキにはやはり視線を奪われてしまいます☆

ところでアメリカのカップケーキももとから派手だったわけではなく、昔は当然シンプルなものでした。中途半端に残ってしまったケーキ生地を陶器のティーカップに詰めて焼いたものだったりしたわけですから。このティーカップに生地を入れてケーキを焼く、というスタイルが最初に文献に登場するのが 「American cookery 」 Ameria Simmon (1796) 著の中の A light cake to bake in small cups というケーキ、これをカップケーキの始まりとする人もいます。また「Seventy five Receipts for Pastry, Cakes and Sweetmeats 」(1828) の中で ‘Cup cake’ という名で最初に紹介したEliza Leslie のものを最初のカップケーキとする人も。個人的にはどちらでもいいな、、なんて思ってしまうのは、前者は前者でemptins と呼ばれるイーストのようなものを膨張剤として使っているので、今のカップケーキとは大分構造が違うし、後者は後者で生地は遠くないものの、カップではなく小さな焼き型で焼くのでこれまたなんか今のカップケーキとは違うような、、、こちらの場合はカップを型としてではなく、材料を計量するためにカップを用いたので「カップケーキ」 と名付けてあるのです。今でこそカップ計量が基本のアメリカベイキングですが、これより以前はイギリス同様、レシピはオンスやパウンド表記が基本だったというから、カップケーキの母より、カップ計量の母のタイトルのほうがすごいかも~もちろん彼女が考え出したのかどうかは定かでないのでなんとも言えませんが。

イギリスのフェアリーケーキはデコレーションも素朴で優しい雰囲気☆

イギリスのフェアリーケーキはデコレーションも素朴で優しい雰囲気☆

アメリカはさておき、話しをイギリスに戻しましょう。イギリスのカップケーキのもととなったのは今もたまに見かける「Queen cake(クイーンケーキ)」と言われています。18世紀には人気を博していたというクイーンケーキは、粉、砂糖、卵、バターがほぼ同量ずつ入るパウンドケーキのようなもの。そこにカランツがやはり同量入ります。昔のものは香り付けにローズウォーターやオレンジラワーウォーター、メースなどが入ることも。この生地を今は大抵カップケーキのような紙のケースに入れて焼くので、見ためはレーズン入りの素朴なカップケーキといった感じです。どうしてこんな地味なケーキがクイーンケーキなんて立派な名前なんだろうと、最初にティールームで見た時に思ったのを今でもよく覚えています。実は18世紀当時はもちろん今のようなフリフリのプリーツの入った紙のケースなどあるはずもなく、ハート型、クローバー型、菱形に、三日月形、とにかく様々な形に作られた型に入れて焼かれていたそうです。大皿に万華鏡のように並べられたいろいろな形のクイーンケーキは、大いにもてはやされたとか。1845年出版のEliza Actonの「Modern cookery for private families」に登場するQueen cakeのレシピによると~ 「・・・bake the mixture in small well-buttered tin pans ( heart-shaped ones are usual ) ~よくバターを塗った小さな金物の型で生地を焼きましょう (ハート型が一般的です)~」。生地はほぼカランツ入りのパウンドケーキ。膨張剤は入らないのでふくらみはそれほどではありませんが、よく撹拌すれば今のフェアリーケーキと変わらない食感のものが出来上がります。

エリザ・アクトンのレシピで作ったクイーンケーキ☆

エリザ・アクトンのレシピで作ったクイーンケーキ☆

ではいつ、クイーンケーキが今のように紙のケースに入れて焼かれるようになり、フェアリーケーキのもととなっていったのか。これには今のカップケーキになくてはならないあの薄い紙のケースが大きくかかわってきます。生地が型にくっついて取れなくなることもなく、ケーキからはがす時にはひだを広げさえすればストレスなしにきれいにはがせるあの素晴らしい発明品。ひだひだのカップケーキケース。あれを発明したのは当時ロンドンで働いていたイタリア人の菓子職人 William Jarrin と言われています。「The Itlalian Confectioner」(1820)、この本の中で彼はその紙ケースの作り方を説明しています。この素敵な発明品はしばらくの間は手作りされていましたが、19世紀半ばには大量生産されるようになり、1890年には様々なバリエーションが登場し大人気となります。そしてクイーンケーキもハート型などではなく今の姿となり、イギリスフェアリーケーキのベースとなっていったというわけです。

ちょうちょのようだからバタフライケーキと呼ばれる訳ですが、妖精の羽と見ればフェアリーケーキとも☆

ちょうちょのようだからバタフライケーキと呼ばれる訳ですが、妖精の羽と見ればフェアリーケーキとも☆

今日は今どきのカップケーキ事情でもお話しようかと書き始めたはずなのに、結局また随分と時間を遡ることになってしまいました。。。少々手も頭も疲れてきたので、この辺りでペンは置き、先ほど焼いたエリザ・アクトンバージョンのクイーンケーキでお茶にでもしようかな 。 皆さんもパソコンや携帯はちょっと脇に置いて、一息お茶タイムにしてはいかが?

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

2件のコメント

  1. 「まぼろしの白馬。」という児童文学を子供の時に読んでからずっとフェアリーケーキが謎でした。40年めにして謎がとけました。ありがとうございました。

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