第77話 Digestive Biscuits ~ダイジェスティブビスケット~

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<Digestive biscuits ダイジェスティブビスケット>

ダイジェスティブビスケットと言えば、真っ先に頭に浮かぶのが「McVitie’s (マクビティー)」。イギリスを越え世界中で愛されている日本でもおなじみマクビティの大定番商品。適度な噛み応えと控え目な甘さ、ほんのり感じる塩分も手伝って、ついもう一枚と手が伸びてしまいますが、あの美味しいレシピを考え出したのが、Alexander Grant という名のスコットランド北部の海沿いの町 Forres 生まれの見習い職人。

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イギリスマクビティのダイジェスティブは大きくて食べ応え充分☆

当時マクビティーに勤めはじめて4年という彼がこのビスケットを生み出したのが1892年のこと。当初の名前は「Homewheat digestive biscuits」。ビスケットの原料には輸入小麦粉を使うのが一般的だったその時代、国産小麦をメインに使用することにこだわった、というのがその理由だったとか。 その後、Homewheat は抜け落ち、シンプルに「Digestives」と改名されますが、ダイジェスティブとは正確にはどういう意味なのでしょう?Digestive=消化を助ける。でも全粒粉を使ったら、栄養や食物繊維は豊富でも、消化には余計に時間がかかりそうでは?なんて思ってしまいますが、実は消化を助けるのは胚芽入りの小麦粉のほうではなく、膨張剤として加えられたベイキングソーダ(重曹)のほう。大量に加えられる重曹が消化を促し、胃を落ち着ける役割を果たすから~とこの名がつけられたそうです。~とくると、思い出すのが、以前登場した医師考案の「バースオリバー」や「アバネシービスケット」。あれらも消化を助けるという意味で考え出されたので、ダイジェスティブビスケットと位置づけられていました。ただ実際のところマクビティのものに関しては、調理過程で重曹の成分は変化し消化を助ける力は残っていないそうなので、本来の意味のダイジェスティブビスケットと言えるのか、、。まぁ、精製された小麦粉を使うよりは腸の動きを活発にしてはくれそうですし、重曹の働きがないことが判明した後も、誰もあえて指摘はしないようで名前もそのまま使われています。

マクビティの以外のダイジェスティブも売られていますが、シェアはダントツNO.1 ☆

マクビティの以外のダイジェスティブも売られていますが、シェアはダントツNO.1 ☆

ところで、このマクビティブランドの生みの親 Robert MacVitie がスコットランドに生まれたのは1809年のこと。そして1830年に父親Williamと共にベイカリーをオープンしたのがMcVitie’s の始まりといわれています。その後ビスケット需要の飛躍的な増加に伴い、エディンバラからロンドンへとファクトリーを拡大し、1925年に発売したチョコレートダイジェスティブもオリジナルを越える人気を獲得、年間80,000,000パックも国内で売れているそう。後にイギリス国王となったジョージ5世や、エリザベス女王のウェディングケーキ作りに携わるという名誉も賜り、名実共にトップビスケットブランドへと成長します。現在は Jacob’sや Carr’s、Crawford’sといった老舗 ビスケットメーカーと共にUnited Biscuits 社という巨大ビスケットメーカーの傘下に入っていますが、リッチティーやホブノブと言った国民的ビスケットをはじめ、主力商品はどれももはやイギリス人のステイプル。チョコレートダイジェスティブは、イギリス人のdunk して(紅茶に浸して)食べたいビスケットのナンバー1に選ばれています。

チーズケーキの土台としても良く利用されますが、チーズケーキ味のダイジェスティブも売っています☆

チーズケーキの土台としても良く利用されますが、チーズケーキ味のダイジェスティブも売っています☆

そしてどれだけ国民に愛されてきたかの証拠が、2009年のダイジェスティブビスケットのリニューアル事件(?)。飽和脂肪酸を減らそうというのがメイン目的だったようですが、その時のバッシングは相当なもの、オリジナルの味を愛する消費者たちが反対キャンペーンを張り、マクビティー側もとうとう根負け、オリジナルの味が復活するという騒動が、、、。ある調査によると~過去1年にビスケットを買ったイギリス人は99%、トイレットペーパーを買ったイギリス人は95%だとか、、、嘘か信か、いずれにせよイギリス人のビスケット好きをうまく表現していることには間違いありません(でもトイレットペーパーを買わない残り5%の人って !?)。マクビティ以外のメーカーでも、スーパーのオウンブランドはじめダイジェスティブビスケットは製造されていますし、Huntley & Palmersなど、マクビティより以前にダイジェスティブビスケットという名で商品を発売したメーカーもあるようですが、やはりダイジェスティブビスケットと言えばマクビティ、マクビティと言えばダイジェステイブ、イギリス人の生活になくてはならない存在のようです。Hobnobs にRich Tea、Jaffa cakes に Ginjer Nuts、他にも語りたいマクビティビスケットは沢山ありますが、また長くなってしまいそうなので今日はこの辺で~Have a nice cup of tea with McVitie’s digestives !

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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