<Scottish Gingerbreads (Parlies, Perkin and Paving stone) スコットランドのジンジャーブレッド(パーリー、パーキン、ペイビングストーン)>
今日のお題はスコットランドのジンジャーブレッド。これまで湖水地方の「グラスミアジンジャーブレッド」やコーンウォールの「コーニッシュフェアリング」、ヨークシャーの「パーキン」やクリスマスによく登場する「ジンジャーブレッドマン」などなどさまざまなジンジャーブレッドが登場しましたが、考えてみたら実はイギリスで一番一般的なしっとりスティッキーなスポンジタイプのジンジャーブレッドがまだではないですか。~と言いつつ、今日取り上げるのはまたも王道はずし、 ちょっと珍しいスコットランドのジンジャーブレッドたち。
筆頭は「Parlies」またの名を「Parliament cakes」。ケーキと名はつきますがこれはビスケットタイプ。ジンジャーが強めに効いたカリッとしたジンジャーブレッドです。丸く焼くこともありますが、基本は四角に薄く伸ばして切り目を入れて焼くスタイル。冷めればパリンとそのラインに沿って折ることができます。「パーラメントケーキ」が縮んで「パーリー」ということらしいのですが、「議会のケーキ」なんてちょっと変わった名前ですよね。なんでも18世紀後半スコットランド議会のメンバーにとっても人気のジンジャーブレッドだったからというのがその名の付いた理由だとか。エディンバラのPotterrow にMrs. Flockhart という婦人が営むよろずや兼居酒屋があったのですが、そこはスコットランドの議会メンバーはじめ有名な銀行家や高官、著名な紳士たちのたまり場となっており、その中にはSir Walter Scott のお父さんも含まれていたとか。そんなことからこのMrs.Flockhart 、スコットの「Waverly」という小説にこっそり登場していたりします。そんな彼女が店を訪れた紳士たちにいつもまず最初にスコッチやブランデーと共に供したのがこのビスケット。彼らの間で非常に人気があったためこのジンジャーブレッドは次第に「parliament cakes」「Parlies」と呼ばれるようになったのだとか。
お次は「Scottish Perkin」。ヨークシャーなど北イングランドのオーツ入りのケーキタイプのパーキンが有名ですが、実は地方地方によりパーキンにも様々なスタイルが存在します。綴りも「Parkin」 より 「Perkin」 となることの多いスコットランドのパーキンはオーツ入りのビスケットタイプが主流。ルーツは一緒なので、材料もオーツにトリークル、ジンジャーと非常に似ているのですが、見た目食感と共にまったく別物。そしてさらに別物なのが、オーブンが家庭に普及する前のパーキン。グリドル(直火に直接かけて使う丸い鉄板)で焼く「ドロップスコーン(またはスコッチパンケーキ)」を覚えていらっしゃるでしょうか?あんな感じでグリドルに直接生地を落として焼いていたそう。なんだか美味しそう~と興味がわいたのでレシピを探して作ってみると~食感はソフトな、でもオーツの噛み応えもあるジンジャー味の小さな薄焼きケーキ。熱々にバターを塗っていただくとこれはこれで美味。他のジンジャーブレッドと違い日持ちはそれほどしなそうではありますが。
そして最後にもうひとつ「Paving stones」。1919年創業のスコットランドはFifeにある老舗ベイカリー「Fisher & Donaldson」。ここで作られているのがフィンガースタイルのジンジャーブレッド「ペイビングストーン」。ドライな食感にカランツ入りのビスケットタイプ、これに熱く煮詰めたシロップを絡めてコーティングしてあります。白い糖衣で覆われたどこか懐かしい日本にもありそうな焼き菓子。おいしいのですが、その名「Paving stones=敷石」のとおり相当固いので食べるにはほんの少しの注意とdunkする(浸す)ための紅茶必要です。
他にもスコットランドには、スコットランド北東の小さな村Fochabersの名が付いたビールとドライフルーツ入りの「Fochabers Gingerbread」など面白いジンジャーブレッドがまだまだありますが今日のところはこの辺りでおしまい~。