<Teisen lap /Tewkesbury saucer batters テイセンラップ/テュークスバリーソーサーバッター>
ウエールズのお菓子といえば、ウエルッシュケーキとバラブリスの2つがとても有名ですが、もうひとつウエールズ地方のレシピ本を眺めていると必ずといっていいほど登場するのが「Teisen lap(テイセンラップ)」。ウエルッシュケーキやバラブリスも素朴なお菓子ではありますが、それよりさらに家庭的な要素が強いため、お店で見かける事は少ないものの、実はウエールズのお茶のテーブルによくあがっていた昔ながらのお菓子です。
それにしても、ちょっと耳慣れない響きの名前ですよね。Teisen はウエールズ語でケーキの意味、シードケーキならteisen carawe (caraway seed cake)、蜂蜜入りのケーキならteisen mêl(honey cake)となります。ではteisen lapはと言うと、訳して「plate cake」。お皿ケーキ?そう、お皿のケーキという意味です。実はこのお菓子、伝統的に浅いお皿で焼かれていたのでこんな名前がつけられているのです。気になるお味のほうはしっとりした素朴なカランツ入りケーキといったところでしょうか。見た目から想像がつくように作り方もとっても簡単、家庭で日々おやつとして焼かれてきたケーキと言うのも納得です。小麦粉にその半分の量のバターかラードを加えて、rub in(さらさらの状態に)し、お砂糖とカランツ、卵と牛乳を加えて混ぜるだけ。これを浅いお皿に入れてオーブンで焼いたら、ハイ完成☆というもの。そうそう、風味づけに加えるナツメグも忘れてはいけませんでした。地域によっては、加える水分を少なめにしてめん棒で伸ばせる固さの生地にし、グリドルで焼くというレシピもありますが、お皿に入れて焼くほうがず~っと簡単。こちらのほうがケーキらしいしっとり感も楽しめますし、なんと言ってもプレートケーキですからお皿に入れて焼かないと、ですよね(^^
さて、『お皿で焼く』つながりで今日はもうひとお菓子をご紹介。こちらはGloucestershireにある古いマーケットタウン Tewkesburyのお菓子でその名も「Tewkesbury saucer batters(テュークスバリーソーサーバッター)」。ちょっと長い名前ですが、この名が全てを説明しています。「テュークスバリーのソーサーで焼くバッター」~Batter(バッター)とはヨークシャープディングを作るときのような、卵と牛乳、少しの小麦粉で作るゆるい生地のこと。クレープの生地のようなものと言ったら分かりやすいでしょうか。このお菓子はお皿はお皿でも、ティーカップのソーサーでそのバッターを焼くお菓子なのです。ヨークシャープディングのバッターとちょっと違うのは、卵白を泡立ててから加える点。生地自体はシンプルで甘みもほとんどないので、フルーツにお砂糖を加えて加熱したものを上にたっぷりのせていただきます。テュークスバリーの辺りは果樹園が多いのですが、その収穫の労をねぎらうためによく振舞われたといわれています。フルーツはラズベリーなどのベリー類から、ルバーブやプラムなどその季節季節のものが使われたそう。ソーサーで一人分ずつ焼くので、取り分ける手間もなく、焼いたお皿のままサーブできるので合理的といえば合理的。
カップケーキなら思いつきそうだけれど、ソーサーケーキなんて、その発想に座布団一枚!ですね。でも今回の『お皿ケーキ』の味比べ、残念ながら軍配はテイセンラップに。ウエールズの家庭の味 「Teisen lap」。気になる方は是非一度お試しを~☆
- 薄力粉225gとベーキングパウダー小さじ2、ナツメグ小さじ半分を合わせてボールにふるい入れます。冷たいバター110gを角切りにして加えたらrub in(指先を使ってさらさらのパン粉状に)します。
- ブラウンシュガー110gとカランツ100gを加えて軽く混ぜ、卵2個と牛乳適量(生地をすくってぽったりと落ちる程度まで)加え、なめらかになるまで混ぜ合わせます。
- 直径20cm位のバターを塗った浅い型に生地を入れ、180℃のオーブンで約40分、表面に弾力が出て、中央に火が通るまで焼いたら出来上がり。
型はお皿でなくとも、浅めのものならなんでもOKですよ。
Brew your tea and enjoy Welsh tea time !