第102話 Dorset apple cake/ Somerset apple cake~ドーセットアップルケーキ/サマセットアップルケーキ~

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<Dorset apple cake / Somerset apple cake  ドーセットアップルケーキ/サマセットアップルケーキ>

ドーセットアップルケーキ、サマセットアップルケーキ、まとめてウエストカントリーアップルケーキとも称されるりんごのケーキが本日の主役。イングランド南西部、デヴォンやコーンウォール、ドーセットやサマセット辺りをイギリスでは大雑把にウエストカントリーと呼ぶのですが、前回お話しに登場したコーンウォールやデヴォンがクロテッドクリームなどの乳製品で有名なら、ドーセットとサマセットの名物はなんと言っても名物のりんごを使ったアップルケーキ。焼き立てにお隣の名物クロテッドクリームやアイスクリームを添えてプディングとしても絶品ですし、翌日のりんごが馴染んだところで、ピクニックやランチに持っていってもこれまた最高。dorset apple1

さてさて、どんなアップルケーキかと申しますと~これがちょっと厄介なのですが他の地方菓子と違い『こうでなければいけない』がないのが特徴。それぞれの家庭独自のレシピがあり、皆それぞれ自分のレシピが一番美味しいと思っているという、なんとも一言では説明し難いケーキなのです。共通するのはスライスあるいは細かくカットしたりんごをとにかくたっぷりケーキ生地に焼き込む点。作り方は大きく分けて2種類あります。バターを柔らかく練って、砂糖や卵を順に混ぜていくクリーミングタイプ。もしくはスコーンのように、粉の中でバターを細かくさらさらにしていくrub inタイプ。どちらもりんごからでる水分を考え、焼く前の生地はやや固めです。そしてシナモンなどのスパイスを加える派加えない派、サルタナなどのドライフルーツを入れる派入れない派。焼く前の生地の上にデメララシュガーなどのお砂糖をふる人、スライスしたりんごをのせる人などなど。そしてどれも総じて美味しいというのも特徴(笑)。当然ドーセットアップルケーキやサマセットアップルケーキの発祥の店やオリジナルを名乗る店などもなく、でもドーセットやサマセットを訪れたならば、「やっぱりアップルケーキを食べなくちゃね」と皆が思うというケーキなのです。ですからお店によって家庭によって、見た目はいろいろ。でもそれが、ドーセットアップルケーキであり、サマセットアップルケーキなのです(^^)。もうひとつ、サマセットで有名なものにりんごで作るお酒cider(サイダー)があります。そこで、このサイダーをアップルケーキに加える、サイダーアップルケーキもまた名物のひとつ。他にもイギリスにはりんごやサイダーで有名な土地にKentやHereford などがありますが、なぜかアップルケーキといえばウエストカントリー。まぁとにもかくにもウエストカントリーのアップルケーキ、彼の地を訪れたら是非一度ご賞味ください、いえ、どうぞ食べ比べを楽しんでみてください^^。

お店により、作り手により、見た目も味も色々☆

お店により、作り手により、見た目も味も色々☆

ところでいつも思うのですが、あまりにもふつうで、その存在が当たり前すぎる大切なものほど、みんなが知っていることだしと、あえて説明してある文献は少ないもの。このウエストカントリーケーキにしても一体いつ頃から家庭で作られるようになったのかと、昔のレシピ本をめくってみても、りんごのレシピは沢山載っているのに、意外とこういったいわゆる普通のアップルケーキを載せているものは少ないのです。例えば、有名なビートン婦人のHousehold Management(1861)にも、Eliza Actonの料理書にも、りんごのレシピは沢山載っているのにこのタイプのりんごのケーキの姿は見当たらず~。Acton のModern cookery for private families(1845)に唯一「apple cake」 としてのっているケーキはペストリー生地で煮たりんごを包んで焼くパイのようなスタイルですし。アップルフランやアップルシャルロット、りんごのプディング(スエットペストリー蒸し)やゼリー寄せ、果てはApple a la Portugaise(りんごのポルトガル風)なんてものまで載っているのに。仕方ないので、今日は手前味噌。わたしのお気に入りのドーセットアップルケーキのレシピをご紹介いたします。もちろんみんなのように、わたしも自分のレシピが一番美味しいと思っていますよ
(^^)

りんごがたっぷりなのでじっくり焼いてくださいね☆

りんごがたっぷりなのでじっくり焼いてくださいね☆

<ドーセットアップルケーキ>

① 柔らかくした無塩バター165gに、ソフトブラウンシュガー200gを加えて白っぽくなるまでよくすり混ぜます。卵2コも少しずつ加えながらさらに混ぜます。
② 薄力粉210g、アーモンドパウダー50g、ベーキングパウダー小さじ2、ミックススパイス、シナモン各小さじ1/2を合わせてふるい入れて、牛乳大さじ2も加えてごく軽くミックス。
③ 次に皮をむいて5mm程度の角切りにしたりんご300gを加えて、全体がなめらかになるまで混ぜれば生地は完成。
④ 直径20cm位の紙を敷いた丸型に入れて、デメララシュガーをたっぷり表面にふりかけたら、170℃に余熱したオーブンで60~70分ほどじっくり焼いて完成です。(途中表面が焦げそうなときは上にアルミホイルをかぶせてカバーしてくださいね)
粗熱が取れたくらいで、クロテッドクリームやバニラアイスなどを添えて召し上がれ。
もちろん味が馴染んだ翌日も美味しいですよ☆

※ソフトブラウンシュガー・・・日本で手に入るブラウンシュガーときび糖半々ずつ混ぜて使ってもOK
※ミックススパイス・・・イギリス菓子によく使われるスパイス
コリアンダー50%・オールスパイス30%・シナモン10%・ジンジャー5%・ナツメグ5%を混ぜ合わせて自分でも作れます
※デメララシュガー・・・細かいざらめ糖など、目の粗い茶色いお砂糖で代用可

 

 

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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3件のコメント

  1. ストロベリー on

    レシピをありがとうございました。早速、作ってみました。とても美味しく、紅茶にぴったり。ミックススパイスと、上にかけるデメララシュガーがさらに美味しさを増しますね。(2回目は半量で15cm丸型で作ってみました。)紅玉でも美味しかったですが、ブラムリーの季節になったらブラムリーでも作ってみたいです。

  2. マリーさん☆
    ドーセットアップルケーキでインフルエンザを吹き飛ばしてください~
    A piece of apple cake keeps the doctor away! ^^

  3. レシピをありがとうございます(≧∇≦)
    インフルエンザのおこもり看病があけたら作ってみます☆楽しみです‼︎

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