第115話 Malt loaf ~モルトローフ~

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<Malt loaf モルトローフ>

イギリスのスーパーのパン売り場、横を見ると甘いおやつパンやケーキなどと並んで必ず置いてあるのが、Soreen のモルトローフ。鮮やかな黄色の袋に真っ赤なSoreen の文字はイギリス人なら誰もが見覚えのあるアイコニックな存在。袋を開けると漂う香ばしいような、仄かに甘いような、ちょっとひなびたような懐かしい匂い。そうおばあちゃんのおうちの食品棚の匂いみたい(笑)。そして眩しい黄色のパッケージから登場するのは対照的に真っ黒な乾いたれんがのような物体。おおよそ食欲をそそる見た目とは言えませんが、初めて食べる人はきっと驚くはず、カットした時のそのナイフに張り付く粘りといおうか、ぎゅ~っとした感触に。このしっとりとも違うぎゅ~っと感がモルトローフの一番の特徴。前にご紹介したスティッキーなジンジャーブレッドをもはるかに超える独特のモイスト感。「Squidgy」という単語はモルトローフを表現するためにあるのではないかと思うほど、ぴったりとくる、まさに「スクイジー」としか言いようのない食感なのです。

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ただ柔らかいとも違う、しっとりとも、ねっちりとも違うそのスクイジーさとモルトの健康によさそうなイメージから、Soreen のキャッチフレーズは「Deliciously Squidgy Energy」。そのパッケージをよく眺めてみると、「Squidgy enough for you ?」「The secret’s in the squidge」「More squidgy power!」 などなどスクイジーの目白押し(笑)。この独特の食感の素は大麦から作られるモルトエクストラクト。麦芽の煮汁を煮詰めて濃縮したビールの素にもなる水飴状のもので、穀物の香りのする優しい甘さです。これをたっぷり加えて作るのであの独特のむぎゅっと感がでるのですね。ローフとは名前がついていますが、パンと言うよりはケーキ。朝食で食べる人もいるかもしれませんが、午後のお茶の時間にスライスしてたっぷりのバターを塗って紅茶と食べるのが一番。時には軽くトーストし、バターとジャムを塗ってもいいしチーズをのせるのもあり。そう、見た目とテクスチャーから想像するより、実はそれほど甘くないのです。ジンジャーブレッドのしっとり感はブラックトリークル(甘~い糖蜜)からきますが、こちらは軽く甘いモルトエクストラクトからなので。

黄色と黒の対比が鮮やかです(笑)

黄色と黒の対比が目に鮮やかです(笑)

今では一週間に100万個も売り上げるというSoreenのモルトローフ(オリジナルバージョン以外も含む)ですが、はじまりはマンチェスターのJohn Sorensenさんの営む職人4人の小さなベイカリー。持ち主は大手メーカーに移りましたが、Soreenのブランドは健在、1938年にJohn氏が奥さんのために生み出したというしっとりとしたオリジナルのモルトローフのレシピは今もトップシークレットです。まもなく80歳を迎えようというこのオリジナルのものに加え、近頃はスライスバージョンや、すでにバターが塗られているバージョン、ランチパックに入れやすいようにとバー状にして個別包装されたものなど種類豊富。学校に通う子供たちから、健康に気遣う若い女性、スポーツ後の手軽なエネルギー補給にもと、多方面にアピールして人気を取り戻しつつあります。確かにモルトは栄養豊富ですし、モルトローフ自体はローファット、ずっしりかなり腹持ちもいいので、ヘルシーと言えばヘルシー?

手作りしても美味しくできます☆

手作りしても美味しくできます☆

気軽にSoreen が買えない日本では仕方ないので我が家は手作り。モルトを加える以外は実はウエールズのバラブリスと 材料も作り方も結構似た感じで簡単なのです。もちろんイギリスにも少数ながら手作り派もいますよ。ホームメイドはSoreenのものとは違い、表面もしっとりするタイプになりますが、スクイジー感は一緒。この食感を試してみたい方は一度お試しあれ。

  1. モルトエクストラクト180g、ブラックトリーリル(モラセス)大さじ2、ブラウンシュガー70g、レーズンとサルタナ合わせて200gをボールに入れます。熱い紅茶150cc をその中に注いだらひと混ぜし、冷めるまで30~60分ほど置いておきます。
  2. ①のボールに卵2個を混ぜます。薄力粉250g+ベーキングパウダー小さじ1+重曹小さじ半分を合わせてふるい入れてムラなく混ぜたら生地は完成。
  3. 紙を敷いたローフ型に流し入れ、160℃のオーブンで1時間ほど、もしくは竹串をさして、何もついて来なくなるまでじっくり焼きます。粗熱が取れたら型からはずし、ラップなどでしっかり包み1日置き、全体がしっとりした頃が食べ頃です。
    バターをたっぷり塗ってがお決まりの食べ方☆

    バターをたっぷり塗ってがお決まりの食べ方☆

 

※ 型は通常イギリスでは2パウンド入るローフ型(22cm×11cmくらいのパウンド型)をよく使いますが、結構大きめなので、小さめの型(18cm×9cmくらい)なら二つに分けて焼いてもいいでしょう。その場合は焼き時間は短めに、45分位経ったところで一度竹串をさしてチェックしてみてくださいね。

 

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

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