<Sponge flan スポンジフラン>
「フラン」と聞いてどんなものを想像しますか?フランス菓子に詳しい方なら、薄いペストリーの中に少しもっちりした食感のカスタードが入ったお菓子を思い出すかもしれないし、スペインやポルトガルなどで見かけるプリンのようなお菓子を浮かべる方もいるでしょう。では「Flan(フラン)」と言ってイギリス人が想像するものはどんなものなのか?
大きく分けると2種類あります。タルト型に敷いたペストリーの中にカスタード液(卵+牛乳)を流してオーブンで焼いたもの。フィリングはカスタードタルトのような甘いデザートタイプのものから、キッシュのような塩味のセイボリー系のものまで幅はありますが、要は卵液の入ったタルト状のもの。もうひとつはフルーツとゼリーののった平たいケーキ。これは「Sponge flan(スポンジフラン)」と呼ばれるもので、その名が示すように、スポンジ生地だけれど、でも前者のフランのようにタルト型のようなもので焼くというお菓子。正確にはタルト型ではなく、スポンジフラン専用の底の部分が上げ底になっている型を使います。これに生地を入れて焼き逆さまにすると、カルデラ湖の様に周囲だけ土手のように立ち上がった薄いスポンジが出来上がるので、このくぼみにベリーやキウイなどのフルーツなどを彩りよく並べ、ゼリーやアロールート(クズウコン)でとろみをつけたシロップなどを流して艶よく仕上げます。
この「フルーツスポンジフラン」とも呼ばれるお菓子はひと昔ふた昔前に人気のあったデザートで、今となってはもはや懐かしのケーキといった立ち位置のお菓子。イギリス菓子にしてはカラフルだし、一見とっても手がこんでいるように見えますよね。でも意外や意外、とってもお手軽、しかも買い置きしている材料だけでもできてしまうというのでかなり人気があったのです。「でもフルーツも必要だしスポンジも焼かなくちゃいけないわよね?」。それが実は嬉しいことに市販のフランケース(中のくぼんだスポンジケーキ)と缶詰のフルーツ、そしてゼリーの素を使えば、あっという間に見た目豪華なデザートができてしまうのです。缶詰の桃やグレープフルーツにはオレンジのゼリー、いちごやラズベリーのときは赤いゼリーの素を使えばとってもラブリー。ゼリーを流さず、くぼみに泡立てた生クリームとフルーツを盛るというのもありですが、スポンジフランはやはり、ゼリーでクラシカルに仕上げたいところです。
時間があれば自分でスポンジから作るのもいいですが、イギリスのスーパーのお菓子材料売り場をよく見ると、メレンゲネストや、スポンジフィンガーなどのお手軽お菓子パーツ類と並んで、スポンジフランケースも大抵売っているので、忙しいときには本当に便利。ご興味ある方は旅先でもちょっとスーパーをのぞいてみてください。お菓子作りコーナーの充実ぶりに、思わずあれもこれも買いたくなること間違いなしです。
ところで英語のflanの語源は、古期ドイツ語でflat cakeを意味する Flado やラテン語のfladōn が古フランス語のflaonを経てflan となったといわれています。そう言えばイギリスのスポンジフランはプリンでもカスタードでもなく、元の意味に戻って平らなケーキ。はじまりは一体どんなケーキだったのでしょう。さすがにこんなにカラフルなケーキはなかったと思いますが。
それにしてもこのスポンジフラン、一度頭を真っ白にして「オールドファッションなデザート」と言う先入観をはずして眺めてみると、意外とおしゃれにも見えてくるような、、、。スポンジケーキの上にのったキラキラフルーツ、悪くないですよね。日本でも近頃レディーメイドのタルトのケースは見かけるようになりましたが、このスポンジフランケースも、急場の時用に置いてあったら助かるのになぁ~思ってしまいます。たとえ途中まで出来ているパーツを使うにしても、ケーキ屋さんで買ってきたデザートをぽっと出すより、ひと手間かける分おもてなし感が出ますものね。とは言え、ないものねだりをしても仕方ない。うちではたまにこのスポンジフランを焼いて冷凍庫に入れておくことに。でもこんなに毎日暑い日が続くと、フルーツより、アイスクリームでももりもりに盛りたくなってしまいますが(^^;
みなさんも甘いものをいっぱい食べてなんとかこの暑い夏を乗り切りましょう~特にイギリス菓子が元気が出ますよ☆