第118話 Jam sandwich biscuits~ジャムサンドビスケット~

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okashi


<Jam sandwich biscuits ジャムサンドビスケット>

前回ラズベリージャムをフィリングに使ったスコットランドのビスケットをご紹介しましたが、ラズベリージャムとビスケットの組み合わせはスコットランドだけに限ったものではありません。そこで今回はイギリス全国区で人気のジャムビスケットをご紹介。

地味めなビスケットの中いつも目立っているのが ジャムサンドイッチクリーム☆

地味めなビスケットの中いつも目立っているのが ジャムサンドイッチクリーム☆

ビスケットなので家庭で手作りもしますが、お手軽な市販品も大人気。スーパーのビスケットの詰め合わせ箱の中から真っ先になくなるのは、やはりチョコレートがけのものと赤いジャムがちらりとのぞいているものから。他のシンプルなものより数も少なめに入っている分、争奪戦です。本当はシンプルなビスケットのほうが好きなはずのわたしでさえ、ついつい先にそこに手が伸びてしまいますから、赤いジャムの魅力というのは相当なもの(笑)。そんなビスケットの詰め合わせにいつも入っているジャムビスケットは 「Jam sandwich cream」と呼ばれるもの。 形はいつも決まっていて、菊の花びらのような形をした2枚の幾分小さめのビスケットの間にバニラクリームがサンド、上のビスケットの中央からは真っ赤なラズベリージャムがのぞいています。そしてその上にキラキラと輝くグラニュー糖がふられているという、なかなかおしゃれなビスケット。他の茶色一色のダイジェスティブビスケットやプレーンなshorties (ショーティーズ)と呼ばれるビスケットたちの中ではダントツ光っています。もちろんこのジャムサンドイッチクリーム争奪戦に打ち勝つ自信のない人はFox’s社やスーパーのオウンブランドから、ジャムサンドイッチクリームだけでも売られているので心置きなく独り占めできます、ご安心を。

ジャミードジャーは味より見た目に魅かれてついつい買ってしまいます☆

ジャミードジャーは味より見た目に魅かれてついつい買ってしまいます☆

他にジャムサンド系で人気のビスケットはBurton’s Biscuits company から発売されている「Jammie Dodgers(ジャミードジャー)」。こちらは前者と違いメーカーの商品名なので、スーパーの詰め合わせビスケットには入っていません。ビスケット自体は色白でプレーンですが、真ん中のハートに開いた穴から見えるラズベリー風味の真っ赤なジャムがとってもキュート。表面のジャムの周りにはジャムのフレッシュ感を強調するようなスプラッシュ模様が浮き彫りになっています。このポップで元気なフェイスもいいのでしょう、数あるイギリス市販ビスケットの中で子供たちの選ぶ一番大好きなビスケットにも選ばれています。もちろん大人たちにも人気。今ではオリジナルのラズベリー風味ジャム(実際にはプラムジャムらしいのですが)の他に、ハートの穴から赤と黄色がのぞくジャム&カスタードやチョコレートバージョンも発売されています。オリジナルは1960年代生まれ、50年以上世代を超えて愛され続けているビスケット界のベストセラーのひとつです。ちなみに見た目に反してこのちょっと強そうな名前は The Beanoという漫画のRoger the Dodgerというキャラクターに由来しているのだとか。わたしは Dodger=ペテン師・スリなどの意から、てっきり不思議の国のアリスにも出てくる女王様のジャムタルトを盗んだハートのジャックから来ているのだとばかり思い込んでいました。でも、しっかり子供たちのハートを盗んでいますよね、なぁんてうまいことを言ったところで、お次のジャムサンドビスケットに、、(笑)。

手作りすると最高に美味しいヴィエニーズワール☆

手作りすると最高に美味しいヴィエニーズワール☆

「Viennese whirl (ヴィエニーズワール)」、日本語にすると、ウィーン風渦巻き(ビスケット)。他のビスケットと比べてバターの割合がかなり多く、口の中でほろりと砕ける繊細な食感。そしてその焼く前の生地の柔らかさ故に、天板に直接絞り出して整形するので、形もとてもエレガント。たいてい間にバタークリームとラズベリージャムをサンドするのですが、もうビスケットを越えて小さなケーキのようです。手作りするとジャムやクリームのなめらかさが目に飛び込んできてよりフレッシュな感じがたまりませんが、市販品なら、Mr.Kiplingのものが人気です。形にはいくつかパターンがあり、円形にぐるりと絞るのが基本形ですが、Viennese fingers と呼ばれる棒状のものや数回ジグザグに絞り出したものもあります。こちらはジャムサンドよりはチョコレートコーティングを施す場合のほうが多いよう。いずれバターたっぷりの柔らか生地を絞り出して作るヴィエニーズワールはビスケット界では高級感漂うマダムの風格。そんなマダムは名前からしてもちろんウイーンに縁があるのよね、と誰しもが思うところですが、実際のところウィーンとは何の関係もないそう。きっとあの渦を描いた装飾的な模様とウィーンの優雅なカフェシーンが重なってこんな名前になったのでは、、というのがもっぱら想像されているところです。

ヴィエニーズワールは市販品でも、サムプリントビスケットはみんな手作り☆

ヴィエニーズワールは市販品でも、サムプリントビスケットはみんな手作り☆

 

他にもラズベリージャムとクリームサンドのビスケットには、生意気そうな坊やの顔がなんとも言えないJacob’sのHappy faces や、手作り派ならビスケット生地をくるくるっと丸めて親指でくぼみを作ってジャムをつめるThumbprint biscuits などなど枚挙に暇はありませんが、キリがないので今日はこの辺で~。

 

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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