第141話 Westmorland pepper cake ~ウエストモーランドペッパーケーキ~

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<Westmorland pepper cakeウエストモーランドペッパーケーキ>

「Westmorland pepper cake」 その名もイングランド北西部、ウエストモーランドのコショウ入りケーキ。ベースはイギリスらしく、レーズンや、カランツなどのドライフルーツたっぷりのフルーツケーキ。フルーツケーキとスパイスの取り合わせはよくありますが、黒コショウが入るのがこのケーキの特徴。大抵はスパイスと言っても、ジンジャーやミックススパイス、ナツメグ程度、いくらスパイス使いの上手なイギリスと言っても、さすがに甘いケーキに黒コショウを入れるのはかなりのレアケース。黒コショウだけではなくクローブやジンジャーなどのスパイスも入るのですが、それでも一番主張するのは黒コショウ。でも危ぶむなかれ、意外とこれが悪くない。一緒に加えるブラックトリークルやドライフルーツたちと相まって、なんとも奥深い味わいを醸し出しています。 このケーキ、Kendal pepper cake(ケンダルペッパーケーキ)と呼ばれることもありますが、いずれその辺り、湖水地方の出身。東には沢山の湖、西に行けば海にも程近い土地。特にWhitehaven は18世紀、19世紀と貿易で非常に栄えた港。コショウなどのスパイスをはじめ、黒糖やラム酒などが南の植民地からどんどん運びこまれ、この辺りの食文化に大きな影響を及ぼしました。ラム酒やデーツなどをたっぷり使ったカンバーランドラムニッキーやラムバターなどもその一例。他の地域では非常に高値で取引される食材も、この地方では地元のウール製品と交換されたこともあり、比較的手に入りやすかったのです。とは言え、もちろん南国からやって来るスパイスは高級品。ペッパーケーキももともとはクリスマスのお祝いに特別に食べるものだったそう。

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ただ紛らわしいことに、ペッパーケーキとは呼ばれていても、実はコショウは使われていないものも中にはあったのだとか。と言うのも、この辺りを含め、イングランド北部の地方ではpepperと言う語はジンジャーをさすこともあったから。ノルウェーでジンジャービスケットをpepperkakerというのと似ていますね。また、18世紀、オールスパイスはJamaica pepper (ジャマイカペッパー)と呼ばれていたため、オールスパイスとジンジャーの入ったケーキがPepper cake(ペッパーケーキ) と呼ばれたり、なんていうのがその主な理由。

コショウ入りのケーキは紅茶だけでなくワインとも相性良さそう☆

コショウ入りのケーキは紅茶だけでなくワインとも相性良さそう☆

長い間姿を消していたペッパーケーキですが、近頃ケンダルで売り出しているお店があったり、また息を吹き返しつつあるのかもしれません。ペッパーケーキの他にもWestmorland と名の付くケーキを探してみると、Westmorland spice cakeやWestmorland rum cake など、スパイスやラムを使ったものがやはり多く目に付きます。前述のカンバーランドラムニッキーもそうですが、デーツをふんだんに使うスティッキートフィープディングに、ジンジャーたっぷりのグラスミアジンジャーブレッドなどなど、湖水地方は寒い土地なのになんでこんなに南国の産物を使ったお菓子が沢山あるのだろうと以前は不思議に思っていたけれど、西インド諸島などとの貿易の窓口にほど近いというバックグラウンドを持つこの地だからこそ。お菓子から垣間見えるイギリスの歴史と文化。こんな風に自然とイギリスという国について知ることができるのは、イギリス菓子に興味があるおかげ。食いしん坊も、知識を広げるのにちょっとは役に立っているのよ~なんて自分の甘いもの好きを今日も正当化するのでした(^^)

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本 「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」を出版

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