第149話 Thor cake / Tharf cake ソアケーキ/サーフケーキ

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イギリスおかし百科


<Thor cake / Tharf cake ソアケーキ/サーフケーキ>

「Thor cake、 Thar cake、Tharf cake、Theor cake」 などなどその呼び名はさまざまですが、これは全てオーツを使ったジンジャーブレッドの一種。イングランド北部、特にヨークシャー、ランカシャー、ダービーシャーに伝わるお菓子です。オーツを使ったジンジャーブレッドというと、ヨークシャー地方のパーキンが有名ですが、そのおじいさん、おばあさんとでも言おうか、さらに遡った時代のジンジャーブレッド。

ダービーシャー育ちの児童文学作家 Alison Uteleyのレシピで作った Thor cake ☆

ダービーシャー生まれの児童文学作家 Alison Uttley のレシピで作った Thor cake ☆

イギリスではジンジャーブレッドは昔から祭りごとと深くかかわってきたお菓子。特に今日ご紹介する「ソアケーキ」や「サーフケーキ」と呼ばれるものは、秋の収穫祭、10月末から11月にかけてのAllhallowtide 、11月5日のBonfire night (ボンファイアナイト/ガイフォークスデイ:1605年の国会議事堂爆破未遂事件を祝い、焚火を焚いたり花火などをあげるイベント)などで食べられるお菓子でした。「お菓子でした」と過去形なのはパーキンと違い、今はほとんどこのお菓子を目にしなくなってしまったから。以前、小麦よりオーツが主食として重宝されていたこの辺り(ヨークシャー・ランカシャー・ダービーシャー)では、11月5日は Parkin dayと呼ばれていたり、Tharf cake joining と言って、ご近所さんや親戚が集まり、サーフケーキを皆で一緒に食べる習慣などが広くあったそうなのです。暗く長い冬を迎える前に、みんなで集まり、にぎやかにジンジャーブレッドを食べながら、語らう宴「サーフケーキジョイニング」。いかにも楽しそうな響きだけに、消えてしまったのはちょっぴり残念ですね。

 

West Yorkshire に伝わるビスケットタイプの Thar cakes ☆

West Yorkshire に伝わるビスケットタイプの Thar cakes ☆

 

このオーツのたっぷり入ったソアケーキ、サーフケーキといったジンジャーブレッドの姿かたち、呼び名は村々によって少しずつ異なっていましたが、ダービーシャーではThor cake、 ランカシャーではTharf cakeの呼び名が一般的だったようです。 ThorはTheorfという語に由来しており、Tharfと共に古英語で unleavened (パン種を入れない・発酵させない)の意。 Tharf cake という語はOED(Oxford English Dictionary)によると、パン種を入れないオーツを使った丸い平たいパンという意味で14世紀から使われているのだそうです。栄養たっぷりのオーツにトリークル(その昔は蜂蜜)、ジンジャーなどのスパイスに、シトラスピールもたっぷり入る食べ応えのあるケーキ。古いレシピになると、厚みのあるケーキタイプではなく、薄く平べったいビスケットのようなものもみられます。
17世紀以前は11月初めの All souls day(死者を弔う祭り)のために焼かれていたというこのソアケーキ(サーフケーキ)、以前ご紹介した、Soul-mass cake、 Harcake などもこの派生形。ちなみに、HarcakeのHarも Thor cake のThorも北欧神話に登場する神の名前。キリスト教以前のペイガンフェスティバル(多神教徒の祭り)の影響を色濃く残していることも多い、イギリス北部の祭りごと。このケーキをお供えする対象であった神様の名が残っていてもそれはそれで不思議ではありません。

パーキンピッグは作っている最中もなぜか笑顔に☆

パーキンピッグは作っている最中もなぜか笑顔に☆

 

おまけにもうひとつ、イングランド北部のボンファイアのお菓子ということでご紹介しておきたいのが、「Parkin pigs(パーキンピッグ)」。ヨークシャー地方、特にKeighley、Bradford、 Halifaxの3点を結ぶトライアングル周辺で食べられてきたお菓子で、この地方の人々にとってはボンファイアナイトと切っても切れない思い出の味だそう。パーキンと名はつきますが、これにはオーツは入りません。ジンジャーを入れたショートブレッドのようなサクサクのリッチな生地です。カランツの目をしたなんとも愛らしい豚さん型のビスケット。他の地方ではほぼ目にしないお菓子だそうです。ところで、なぜ豚さん型なのかって?一説によるとその昔、この地方ではボンファイアナイトのご馳走に豚やイノシシの丸焼きを作る風習があったのですが、その余裕のない貧しい人々はこのパーキンピッグを焼いてボンファイアナイトを楽しんでいたからだとか。。。

焼きあがったらもっと笑顔になっちゃうパーキンピッグ♪

焼きあがったらもっと笑顔になっちゃうパーキンピッグ♪

 

豪華に豚の丸焼きもいいけれど、ほんのりジンジャーのきいたパーキンピッグもかなり魅力的ですよね(笑)

 

 

 

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本 「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」を出版 2018年 12月 「イギリスお菓子百科」を出版

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