第168話 Mrs. Beeton’s mince pies ミセスビートンのミンスパイ

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<Mrs. Beeton’s mince pie ミセスビートンのミンスパイ>

 

ミセスビートンのクリスマスマスのお菓子シリーズ、今回は皆さんご存じミンスパイ。ミンスミートと呼ばれる漬け込みドライフルーツをフィリングにした小型のパイです。ミンスミートは熟成が必要なので、前もっての準備が必要。ビートン夫人の家政書「Household management (1861)」にはそれぞれのレシピの後に、所要調理時間、材料代、出来上がり量、そして「いつの季節に作るとよいか」も記載されているのですが、「Mincemeat(ミンスミート)」を見てみると、熟成期間を加味して、やはり12月初旬、もしくは12月の1、2週間目に作りましょうとなっています。
ところで以前、ミンスパイの項で、昔はミンスミートには実際にミンスミート(ひき肉)が入っていたけれど、時代とともに、徐々にお肉の量が減り、今はスエットだけが名残として入っていることがありますよ~とご説明しました。そして、ヴィクトリア時代がちょうど、ミンスミートにお肉が入るものと、入らないものの両方が存在する過渡期。なので、ビートン夫人の本にも、お肉入りの「Mincemeat」 とお肉が入らずスエットのみが入る、 「Excellent mincemeat(エクセレントミンスミート)」の両方が載っています。
もちろん今回私が作るのは、皆さんのご期待に応えてお肉入りのほうです(笑)

 

 

1309 MINCEMEAT.
INGREDIENTS.—2 lbs. of raisins, 3 lbs. of currants, 1-1/2 lb. of lean beef, 3 lbs. of beef suet,
2 lbs. of moist sugar, 2 oz. of citron, 2 oz. of candied lemon-peel, 2 oz. of candied orange-peel, 1 small nutmeg, 1 pottle of apples, the rind of 2 lemons, the juice of 1, 1/2 pint of brandy.
Mode.—Stone and cut the raisins once or twice across, but do not chop them; wash, dry, and pick the currants free from stalks and grit, and mince the beef and suet, taking care that the latter is chopped very fine; slice the citron and candied peel, grate the nutmeg, and pare, core, and mince the apples; mince the lemon-peel, strain the juice, and when all the ingredients are thus prepared, mix them well together, adding the brandy when the other things are well blended; press the whole into a jar, carefully exclude the air, and the mincemeat will be ready for use in a fortnight.

材料は~レーズン2パウンド、カランツ3パウンド、牛肉の赤身1と1/2パウンド。スエット3パウンド、お砂糖2パウンド、シトロン2オンス、砂糖漬けのレモンピール、オレンジピール各2オンス。ナツメグ1個、りんごのみじん切り4パイント分、レモンの皮2個分、果汁1個分、½パイントのブランデー(オンス=約28g/パウンド=約453g/パイント=約568ml)
これらを全てよく混ぜあわせたら、空気が入らないように瓶に詰め込んで、2週間経ったら使えますよ~とのこと。
今のようにパックに入った便利な乾燥スエットなどない時代、生のスエットを刻み、お肉を刻み~というのは分かるのですが、面白いのはレーズンも種を取って1~2回カットし、洗って乾かしてから使いましょう~となっていること。種なしぶどうのレーズンに感謝ですね…
さて、今の時代の便利さに感謝しながらのミンスミート作り、それから約2週間、ようやくパイが作れます。

いえ、その前にまずはペストリーを作らないと。。。ミンスパイに使うペストリー、ビートン夫人のご指定は「Very good puff-paste」。小麦粉とバターを同量ずつ使った、リッチなパフペストリーです。彼女の本には他にも、バターとラードを使う「Medium puff-paste」 、粉に対してバターが半量以下の 「Common paste」 などが載っているのですが、クリスマスだからでしょうか、ここで使うのは一番豪華なベリーグッドパフペイスト。仰せのとおりにビートン夫人のレシピに従って作ります。
そうしてようやくここで、ミンスパイの成型に取り掛かれます。

 

 

1311 MINCEPIES.
INGREDIENTS.—Good puff-paste No. 1205, mincemeat No. 1309.
Mode.—Make some good puff-paste by recipe No. 1205; roll it out to the thickness of about 1/4 inch, and line some good-sized pattypans with it; fill them with mincemeat, cover with the paste, and cut it off all round close to the edge of the tin. Put the pies into a brisk oven, to draw the paste up, and bake for 25 minutes, or longer, should the pies be very large; brush them over with the white of an egg, beaten with the blade of a knife to a stiff froth; sprinkle over pounded sugar, and put them into the oven for a minute or two, to dry the egg; dish the pies on a white d’oyley, and serve hot. They may be merely sprinkled with pounded sugar instead of being glazed, when that mode is preferred. To re-warm them, put the pies on the pattypans, and let them remain in the oven for 10 minutes or 1/4 hour, and they will be almost as good as if freshly made.

型にペストリーを敷いて、ミンスミートを詰め、ペストリーで蓋をしたら、オーブンで焼くこと25分。さらに表面に卵白を塗ってお砂糖をふり、1~2分焼いて仕上げます。もしくはグレーズなしで、お砂糖をふって仕上げるだけでもいいですよとのこと。
盛り付けは、熱々のものを白いドイリーを敷いたお皿にのせて。冷めていたら10~15分オーブンで温めなおすと焼き立てのようになりますよ、ともアドバイスが。
余計なことだけれど、とってもバタリーなこのパフペストリー、布の白いドイリーにはのせたくないかも、、、当時すでに紙製のドイリーがあったことを願うばかりです。

 

~そんなことより肝心のお味でしたね。
サクサクハラハラのパフペストリーの中に、これまた相当リッチと言おうかヘビーな(スエットの割合が多いため)ミンスミート。焼いている時と焼き上がりすぐは多少セイボリー的な香りが漂ようものの、食べてみるとお肉の味はせず、他のフルーツ類が勝っているので全く抵抗なくいただけます。最近のあっさりしたミンスパイを食べ慣れている身には、焼き立てホットなミンスミートの中でスエットがじゅわっと溶けている状態は少々脂っこいと感じてしまいますが、冷めておちついてからはまぁ美味☆お肉少なめのレシピのせいもあると思いますが、言われなければ、お肉が入っているなんて気づかないと思います。
ちなみに、同じくヴィクトリア時代の有名料理家 Eliza Actonさんの「Modern Cookery for private families(1845)」のミンスミートは牛の赤身肉の代わりにたっぷりの牛タンを使用。タンを柔らかくなるまでボイルしてから細かく刻んで使っているのですが、これは1800年代には割とポピュラーだったようです。食べてみたいような気もしますが、牛タン一本丸のまま茹でてから作るミンスミートはさすがに少々ハードルが高いので、こちらは想像だけにとどめておこうかな。。
それより先になんとかしなければならないのが、まだまだ冷蔵庫に残っている生肉入りミンスミート。いくらドライフルーツやスパイスで保存効果はあるとはいえ、そう長くとっておきたいものでもないし、どうしましょう。クリスマスからエピファニーまで毎日1つずつ食べると、1年健康に暮らせるという言い伝えのあるミンスパイ、だからと言って、スエットたっぷりのこのミンスパイは毎日食べていたらちょっと危険な気が、、、。

 

 

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本 「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」を出版 2018年 12月 「イギリスお菓子百科」を出版

3件のコメント

  1. yasuda mariko

    リアルミンスミート入りミンスパイ☆ブランデーとドライフルーツにかき消され、案外違和感なくいただけますよ。パフペストリー+ミンスミートの中のたっぷりスエットのせいで、一度にいくつも食べるのは少々きついですが。もっとお肉たっぷりにしたら、それはそれでミートパイ的にいける気がしてきました。ハムとチャツネのサンドイッチ食べるのとそう変わらないかも(笑)

  2. 江國 まゆ

    すごい、お肉入りミンスミート入りミンスパイの再現! お肉の味をあまり感じずにいただけるんですね・・・私も毎日いただきたーい!

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