第170話Scottish flummery/ Caledonian cream /Edinburgh fog スコティッシュフラマリー/カレドニアンクリーム/エディンバラフォグ

0


<Scottish flummery/ Caledonian cream /Edinburgh fog スコティッシュフラマリー/カレドニアンクリーム/エディンバラフォグ>

先週末1月25日は「Burn’s Night(バーンズナイト)」。この日スコットランドでは、スコッチウィスキーを酌み交わしながら、スコットランドを代表する詩人Robert Burns(1759年1月25日-1796年7月21日)の生涯を偲び、その作品を味わいながら夜を過ごします。

数あるロバート・バーンズの作品でもっとも有名なのが、日本でも「蛍の光」として知られている「Auld Lang Syne」。スコットランドでは年越しのお祭りホグマニーで歌う曲としても有名です。スコットランドの古い民謡を収集し普及に努めていたバーンズ、これもまた、そんなスコットランド民謡に彼が手を加え、今に歌い継がれてきたもの。

スコットランドのみならずイギリス全土で愛されているロバート・バーンズですが、このバーンズナイトの宴のメインは何といっても「ハギス」。言わずもがな、スコットランドのあの伝統食です。羊の胃袋に内蔵やらオーツやらを詰め込んで煮込んだその姿は、かなりの迫力。でも味は見た目ほどのインパクトはなく、意外と食べやすいのでご安心を。そしてこのバーンズナイトサパーを締めくくるデザートとして有名なものが以前もご紹介した「クラナハン」。スコットランドの産物、オーツ麦とヘザーハニー、ドランブイ(またはスコッチウィスキー)、そしてラズベリーを生クリームと合わせたもの。とっても美味しいデザートなのですが、1月に新鮮なラズベリーを手に入れるのは至難の業。

 

さぁ前置きが長くなりました、ここからが今日の本題。
実はクラナハンの他にも、バーンズナイトサパーのデザートとしてよく作られてきた、スコットランド特有のクリームデザートがいくつかあります。
まず一つ目は「Scottish flummery(スコティッシュフラマリー)」。「Scots flummery (スコッツフラマリー)」とも言いますが、これは簡単に行ってしまうとクラナハンのラズベリー抜きのようなもの。泡立てた生クリームに炒ったオーツ、蜂蜜、ウィスキーを加えたものです。以前ご紹介したオーツの重湯を煮詰めて作るあの昔ながらの質素なフラマリーとは別物。オーツの粒が入り、クリームも入りとても贅沢なデザートです。レシピによっては先に蜂蜜とウィスキーにオートミールを浸しておいたものを一度加熱し、冷ましてからクリームと混ぜるというものもありますが、いずれ、オーツのテクスチャーが面白い、お酒の効いた大人のデザートになります。

クラナハンをシンプルにしたようなスコティッシュフラマリー☆

 

お次は「Caledonian cream(カレドニアンクリーム)」。こちらは泡立てた生クリームにやはりスコットランド名物のセヴィルオレンジのマーマレード、ウィスキー(またはブランデー)、お砂糖、レモン果汁を混ぜたもの。レシピによっては生クリームにクリームチーズが入り、さらにリッチになっているものも見かけます。こちらはウィスキーの香りにかんきつの苦みと甘みがプラスされ、さらに深みのあるデザートに。よく、オレンジセグメントやショートブレッドを添えてサーブされます。

ところで、このCaledonia(カレドニア)とはラテン語でスコットランドの古称。ケルト語では森林を意味する語で、かつてローマ帝国の支配下外だったグレートブリテン島北部つまりスコットランドの辺りがこう呼ばれていたのでした。ですからニューカレドニアは新しいスコットランドの意味。あの青い海、白い砂の天国に一番近い島が新しいスコットランド?、、、ちょっと不思議ですが、それは1774年に西洋人として初めてこの島を発見したイギリスの探検家、キャプテン・クックが「この風景、どこかスコットランドの山並みに似ているかも~」と名付けたから。

マーマレードとウイスキーの効いたカレドニアンクリーム☆

 

最後にもう一つ、「Edinburgh fog(エディンバラフォグ)」。訳してエディンバラの霧。19世紀、燃料の大半を石炭に頼っていた時代、エディンバラの街は煙突から立ち上る真っ黒な煙でいつも覆われていたため、「Auld Reekie(Old Smokeの意)」と呼ばれていたそう。そんなモクモクした霧のような煙のようなデザートという事のようですが、お味のほうはgood。泡立てた生クリームに砕いたラタフィアビスケット、スコッチウィスキーかドランブイ(蜂蜜から作るスコットランドのリキュール)、スライスアーモンドを混ぜあわせたものです。ラタフィアビスケットとは昔よく食べられていた、杏仁の香りのするアーモンドビスケットのこと。今はもっぱらアマレッティかマカルーン、それにアーモンドエッセンスをちょっぴり加えて代用します。アーモンドとウィスキーの香りが漂うこれもまた食後にぴったりのデザート。しかもあっという間にできてしまうところが有難い。

アーモンドの風味+ウィスキー+クリーム=エディンバラフォグ

 

どれもクリームベースに、ウィスキーが入り、オーツやビスケットが入ったりと構成も見た目も似てはいますが、味わいは似て非なるもの。いつものクラナハンに加えて、来年からのバーンズナイトサパーのデザートの幅が広がりそうですね。
お味もそうですが、個人的にはそれぞれが持つ、スコットランドらしい響きの名前が好きで、ご紹介したかった、というのが本当のところ。。。

Share.

About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

ウェブサイト ブログ

Leave A Reply

CAPTCHA