第22話 Rice pudding ~ライスプディング~

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okashi


<Rice pudding ライスプディング>

 

日本人の苦手な外国デザートの筆頭によく挙がるのが「ライスプディング」。どんなに甘いもの好きな人でも「あれだけはちょっと、、、」と口ごもる、ちょっとしたデザート界の嫌われ者・・・。世界各国かなりの国で食べられているデザートですが、日本人にとっては主食であるお米に、砂糖はともかくミルクやクリームなどの乳製品が入っていると言うのがどうにも許せないのでしょう。

イギリスではというと、昔ながらのポピュラーなデザートのひとつで、皆小さい頃から家で、給食でと食べさせられている馴染みの味であり、郷愁を伴う味だったりします。昔の学校給食のそれは重くて味の無いものも多かったようで、いい思い出ばかりとは限らないようですが。。。

スーパーにはお手軽ライスプディングがいっぱい☆

スーパーにはお手軽ライスプディングがいっぱい☆

確かに少々オールドファッションなデザートと言う位置づけは否めないものの、まだまだ結構な需要はあるようで、スーパーに行けばヨーグルトの隣には一人用のカップに入った冷たいライスプディングがフルーツ入りのものなど沢山の種類が並び、缶詰コーナーには必ず缶入りライスプディングが積まれています。製菓材料コーナーには牛乳を入れて数分煮ればOKのライスプディングの素から、ちゃんと手作りする人向けの「プディングライス」と呼ばれるライスプディング用の短粒米も売られています。普段のクッキングにはリゾットを作る場合を除き、ぱらぱらの長粒米のほうが好まれるのですが、ライスプディングばかりは長粒米ではどうにも美味しく作れませんから。さて、イギリスのライスプディングの作り方には大きく分けて二通りあります。お鍋でコトコト煮る派と、キャセロールなどの平たい器に入れてオーブンで焼く派。2時間ほどオーブンに入れておく必要のある後者と比べて、前者はわりあい早く煮あがるためお手軽なのですが、個人的には私はオーブン派。キャラメル化した牛乳が作る上部の厚い膜、そしてその下のとろけるようなお米との対比。これがやはり魅力の一つなのものですから。

ベイクドタイプは表面しっかり中トロトロ☆

ベイクドタイプは表面しっかり中トロトロ☆

このライスプディング、姿かたちから想像に難くないようにイギリスでは大分古くから存在するプディングです。ただ、当初お米はスパイスとともに輸入される高価な品。プディングと言うよりは胃腸が弱っている人向けのお薬的な位置づけだったよう。確かにおかゆのようなものですから、栄養があって消化もよいでしょうから。また13世紀ごろはお肉を食べることのできないレントの時期のプディングとして好まれたとか。もちろん富裕層に限られていましたが。それはシンプルなポタージュのようなもので、スープで煮たライスにアーモンドミルクと甘味を加え、時にはサフランで色づけされていたそうです。後にこれに卵やバターなどが加えられるようになり、16世紀にはいると今の時代のライスプディングに近いものが登場します。1596年に出版された「The Good Huswifes Jewell」に載っているものは卵黄やシナモン、オレンジの果汁などが入りなかなか美味しそうなレシピになっています。

<To make a Tart of Ryce>
Boyle your Rice, and put in the yolkes of two or three Egges into the Rice, and when it is boyled, put it into a dish, and season it with Suger, Sinamon and Ginger, and butter, and the juyce of two or three Orenges, and set it on the fire againe.                         1596. T. Dawson. The Good Huswifes Jewel

意外とライトなライスプディング☆

意外とライトなライスプディング☆

さて、16世紀のシナモン・ジンジャー・オレンジ入りプディングも美味しそうですが、現代のイギリスで一番オーソドックスなライスプディングというとバニラやシナモン、あるいはナツメグなどで香りをつけたタイプ。ここに最近はクロテッドクリームライスプディングのベリーソース添えなど、なんだかおしゃれなものがいろいろ加わってきました。温かくても冷たくしても美味しく食べられるライスプディング。食後の軽いデザートとしていただくのなら、オレンジフレーバーのポーチドルバーブ添えなんていかがでしょう?先入観を捨ててまずは目を閉じて食べてみると、意外と美味しかったりするものですよ☆

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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