第27話 Apple charlotte~アップルシャルロット~

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okashi


<Apple Charlotte アップルシャルロット >

洋菓子好きの方なら「シャルロット」という言葉に聞き覚えのある方も多いはず。ビスキュイ生地で周囲を囲った中にババロアなどが入ったあのフランス菓子です。天才料理人と謳われたアントナン・カレーム(1784~1833)がロシア皇帝アレクサンドル1世のために考案したお菓子とされているのでCharlotte Russe(ロシア風シャルロット)と呼ばれることもありますが、実はイギリス風シャルロットというべきもう1つのシャルロットが存在します。

日本でよく見るフランス的なシャルロット☆

日本でよく見るフランス的なシャルロット☆

ご存知のとおり合理的で、ちょっと垢抜けないお菓子の多いイギリスのこと、こちらも然り。色白に焼き上げたふんわり優美なビスキュイ生地に代わって周囲を覆っているのはなんと食パン。フィリングにはクリームなどは入らず、ただ単にりんごを柔らかく煮たもののみ。そして一番の違いはなんと言っても、冷菓ではなく温かいお菓子であるということ。沢山の工程のあるフランス版シャルロットと違い、なんともシンプルです。バターをたっぷり塗った食パンを型に敷き込み、煮りんごを詰めてオーブンで焼き上げるだけなのですから。でもこれがあのおしゃれなシャルロットの原型なのです。カレームは一時、摂政皇太子(後のジョージ4世)の料理人としてイギリスで働いていたこともあり、その間にイギリスのシャルロットを知り、後に彼が言うところのCharlotte a la parisienne (Charlotte Russe)の創作にいたったと言われています。

これもまたシャルロット☆

これもまたシャルロット☆

イギリス版シャルロットはイギリスに数あるブレッドプディング(あまりもののパンの再利用プディング)の一種。その中ではクイーンオブプディングと並んで、洗練されたもののひとつではあります。この名前もジョージ3世の妃Queen Charlotte(1744~1818) に由来していると言われているくらいです。しかしこの他にも「シャルロット」という名の由来に関しては様々な説があります。ゲーテの小説に登場するヒロインの名に由来するとか、ヘブライ語で「Schaleth」というスパイスを効かせたドライフルーツの甘いピュレをクラストに詰めたお菓子からなどなど。ですが、先のシャルロット王女の説は彼女がりんご農家のパトロンとして有名だったこともあり、最も人気の(?)逸話となっています。

こんがり焼けたパンの中にはりんごがぎっしり☆

こんがり焼けたパンの中にはりんごがぎっしり☆

1807年に出版されたMaria Rundell著「A new system of domestic cookery」には A Charlotte として今のものとさして変わらないアップルシャルロットのレシピが載っています。あえてアップルシャルロットとなっていないところからも、当時シャルロットは常にりんごで作るものだったということが分かります。その後バリエーションとしてグーズベリーやルバーブを煮たものなども使われるようになりますが、ババロアなどと違い保形性がない上、基本的には大きく作り取り分けるスタイルなので、型から出したときに形が崩れてしまわないよう、なるべくパンは上質のものを使うのがポイント。大量生産のものではなく、できれば信頼できるパン屋、あるいは家で焼いたものを使いましょうとよくアドヴァイスされています。

食パンとりんごの変身に拍手☆

食パンとりんごの変身に拍手☆

それにしても、他にたいした材料を加えることなく、食パンとりんごをここまで昇華してしまうこの術!豊富な食材をよりどりみどりで使うことのできる現代では逆に考え付かない創意工夫です。今ではイギリスでもこのクラシカルなタイプのアップルシャルロットに出会うことはめったにありませんが、カスタードをたっぷりかけた焼きたてのシャルロット、このなんとも優しい温かみのある味わい、消してしまうのはどうにももったいない気がしてしまいます。

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

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