＜Easter biscuits イースタービスケット＞
毎年春分の日の後の満月の次の日曜日にやってくる「イースター（復活祭）」。移動祝祭日の少ない日本に住む私たちにとってはどうもややこしく思えて仕方ありませんが、このように定められたのは紀元325年のニカイア公会議という世界教会会議でのこと。敬虔なキリスト教徒は今も、人々の罪を背負い、自らを捧げたイエス・キリストに感謝し、この日は教会へ行き、祈りを捧げます。そして、クリスマスのご馳走がターキーとクリスマスプディングであるように、イースターにもお決まりのご馳走があります。この日のディナーはロースとラムにミントソース。ちょうど子ひつじたちが生まれるシーズン、この時期になるとスーパーのお肉売り場には「スプリングラムあります☆」の文字が躍ります。お母さん羊のあとをついてまわる愛らしい姿を目にしたあとはちょっぴりかわいそうな気もしますが、これもイギリスの食文化のひとつ。
イースターには動物をかたどった可愛らしいビスケットが並びます☆
でもやっぱりかわいそう～と思う人でも、ビスケットの子ひつじたちならOKですよね。イースターシーズンには実にかわいらしい子ひつじやひよこ、うさぎの形のビスケットなどが登場します。ちなみに野うさぎ（hare）は多産の象徴であり、イースターの語源となったEastre（Eostre) という北方神話の春と豊穣の女神のお気に入りの動物だったことからイースターのシンボルとして取り扱われるようになったという説もあります。さて、これらは現代のイースタービスケット。もうひとつイギリスには別のイースタービスケットがあります。特に南西部で作られてきたイースターのお菓子なのですが、それがこちら。
直径8cm位のフリフリ縁の円形で、中にはたっぷりのカランツとスパイスが入っています。伝統的にはCassia oil （Cassia＝シナモンの親戚で聖書にも登場しているほど古いスパイス）を数滴加えます。カシアオイルは一部の薬局やハーブを取り扱う店で求めることができますが、今はシナモンやミックススパイスで代用することがほとんどです。ちなみに伝統的なレシピによると～
薄力粉275ｇ、バター200ｇ、カスターシュガー（細めのグラニュー糖）150ｇ、カランツ50ｇ、卵黄2個分、必要なら少しの牛乳、そしてカシアオイル6滴を全て混ぜ合わせて生地をまとめ、5mm程度に延ばして型で抜き、オーブンで軽く色づく程度に焼き、カスターシュガーをまぶして完成
～だそうです。 今でも、イースターシーズンになると、サマセット、デヴォン、ウイルトシャー辺りのスーパーやベーカリーではこのカランツ入りのイースタービスケットを見つけることができます（カシアオイル入りではなくミックススパイスの入ったタイプですが）。
簡単かつ美味しいイースタービスケット、作りやすい現代のレシピもご紹介しますので、是非一度お試しを☆
1. 無塩バター100ｇにグラニュー糖75ｇを加えてゴムベラでよく練ります。卵黄2個もひとつずつ加えてさらによく混ぜましょう。
2. 薄力粉175ｇ、上新粉50ｇ、ミックススパイス小さじ半分をふるい入れ、カランツ60gも加えて、全体がホロホロの状態になるまで混ぜます。牛乳大さじ1.5も加えて生地をひとかたまりにします。
3. 4mm程の厚さにめん棒で延ばしたら直系8cmほどの菊型で抜き、天板に並べます。ときほぐした卵白をうすく刷毛で表面に塗り、グラニュー糖をパラパラふりかけて、160℃くらいのオーブンで12～15分ほど焼きます。うっすら焼き色がついたら出来上がり。
※ミックススパイス･･･イギリス菓子によく使われるスパイス
コリアンダー50％・オールスパイス30％・シナモン10％・ジンジャー5％・ナツメグ5％を混ぜ合わせて自分でも作れます
ほろりと軽く、ほんのりスパイスの香るイースータービスケット、レントの長い節制の後のお楽しみの味です。そんな歴史を思い出しながらどうぞ召し上がってみてください。このビスケットをさらに美味しくするスパイスとなってくれることでしょう☆
