第40話 Self-saucing pudding ~セルフソーシングプディング~

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okashi


< Self-saucing pudding セルフソーシングプディング>

「セルフソーシングプディング」、はてまた聞きなれない名前が登場しましたが、これはその名が示すように、自らがソースとなるプディングのこと。普通ソースと言えば別に作って脇に添えるものですが、このプディングの場合、ひとつの器の中にケーキとソースが一緒に入ってしまっているのです。一見シンプルな焼きっぱなしケーキ風なのに、スプーンですくってみると、「あら~下にソースが隠れていたわ~」と驚くというという、合理的かつなんとも楽しいしくみのお菓子なのです。

スポンジの下からソースがとろ~り☆

スポンジの下からソースがとろ~り☆

最もポピュラーなのはレモンバージョンの「セルフソーシングレモンプディング」。スフレのように軽いレモン風味のスポンジの下にレモンソースが潜んでいます。ちょっと長い名前なので、もっと簡単に「レモンソースプディング」「レモンスポンジプディング」なんて呼ばれることもありますし、はたまた下のソースがレモンカードのようなので「Lemon curdy pudding(レモンカーディープディング)」、もっと楽しいところでは「Lemon surprise pudding(レモンサプライズプディング)」なんて呼ばれることも。いずれにせよ、とても簡単に作れるプディングなので、パブやレストランで食べると言うよりは、家庭のデザート。ココットなどに一人分ずつ作ってもいいけれど、大きく作ってみんなで取り分けて~と気取らない雰囲気が似合います。

温かくても冷たく冷やしてもどちらも美味しい~☆

温かくても冷たく冷やしてもどちらも美味しい~☆

ところで、どうして2層に分かれて焼きあがるのか、、、ですが、仕組みは簡単、比重の差です。生地作りはとってもシンプル。バターにお砂糖、卵黄、いつもより少なめの粉、そしてたっぷりの牛乳を混ぜ合わせ、最後に固く泡立てた卵白加えるだけ。それを湯煎焼きしてあげると~あら不思議、オーブンの中で、卵白を含んだ軽いスポンジ部分が浮いて表面で焼きあがり、レモンやお砂糖と交じり合った重い牛乳がソースとなって沈むというわけです。ふんわり膨らんだプディングに粉砂糖をふりかけて~粗熱がとれたくらいが食べごろ。でも冷蔵庫で冷たく冷やしてもこれはこれでレモンの酸っぱさが際立って実に美味しい♪ 大きく作って、残りを後でもう一度こっそり楽しみたいデザートです(笑)。さて、ちょっと作り方は違うのですが、チョコレート味のセルフソーシングプディングも昔ながらの人気のデザート。こちらは「ホットチョコレートスポンジプディング」「サプライズチョコレートプディング」はたまた器の底に水溜りのようにたまっているチョコレートソースの様子から「Puddle(水溜り) chocolate pudding 」なんて呼ばれたりします。作り方はレモンバージョンよりさらにミラクルです。

本当に大丈夫?的な作り方がまた楽しい☆

本当に大丈夫?的な作り方がまた楽しい☆

まずはチョコレート味のいつものワンボールケーキ生地を作り器に入れておきます。お次はソース作り。と言っても、ジャグか何かにココアとお砂糖を入れてお湯を注ぐだけ。この熱々の液体を先ほどの生地のうえにじゃば~っと全部流しかけます。かなり見るに耐えない状態になりますが、何も考えずオーブンに入れてあげましょう。すると~先ほどのシャバシャバな液体はどこかへ消え、チョコレートケーキが何事もなったような顔で焼きあがっているではないですか。そしてお楽しみのスプーンin!チョコレートスポンジの下からあふれるとろ~りチョコレートソース。「サプライズチョコレートプディング」がベストなネーミングかも知れません。これは焼きたてがベスト。温かいプディングに、バニラアイスクリームを添えれば、フォンダンショコラなんて凌駕する至福のUKデザートです。

熱々に冷たいバニラアイスがたまりません☆

熱々に冷たいバニラアイスがたまりません☆

とにかく簡単かつ美味しい☆がイギリスお菓子の良いところ。でも実はこのプディング、さらに簡単に作る方法もあります。先ほどソースを作る際、お砂糖とココアとお湯を混ぜて上からかけるとご説明しましたが、ほんとうは前もって混ぜずにケーキ生地の上に直接お砂糖とココアを振りかけて、そこに熱湯を回しかけるだけでも同じように作れてしまいます。せっかく作ったケーキ生地の上にやかんから直接ドボドボ熱湯を注ぐ様子を初めて見たときは結構な衝撃でした。ケーキに熱湯!?しかも目分量!と(笑)
他のバリエーションとしては、つぶしたバナナを加えた生地に、ブラウンシュガー+ゴールデンシロップ+熱湯ソースの「バナナトフィープディング」や「バタースコッチアップルプディング」などなど色々あります。そうそう、以前ご紹介したスエット生地の中からレモンバターソースが流れ出る「サセックスポンドプディング」、あれなどはまさに元祖セルフソーシングプディングですね。

バナナケーキの下には甘~いトフィーソースが隠れています☆

バナナケーキの下には甘~いトフィーソースが隠れています☆

スプーンを入れるとトロリとろけるフォンダンショコラが新しいおしゃれなデザートとしてイギリスでももてはやされるようになり随分経ちますが、私たちからすれば、昔からイギリスにあるセルフソーシングプディングたちのほうがず~っとおしゃれで新鮮ですよね☆

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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