カレー・クライシスとベルリンへのエクソダス

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猛暑に叩きのめされているニッポン。夏の食欲減退にはカレー、というのが日本人の定番です。が、そのカレーではないフランスの港町カレーで繰り広げられている、想像を絶する出来事に驚愕し、そして、言いようのない悲しい気持ちに…。連日、海峡トンネル経由でフランスから英国へ入国しようとする移民たちの、「決死の渡英」を報じるメディアは、緊迫感を伝えながらも、出口の見えない焦燥感を表しています。

英国移住を望む不法移民が、ドーヴァー海峡を越えた英国に通じるユーロトンネルの、フランス側の入り口のあるカレーに、大挙して押し寄せるというこの問題、検索してみると、2009年の記事が多く、「ここ10年来の問題」とあります。つまり、20世紀末に「決死の渡英」を試みた不法移民は、もしかすると人生のやり直しに成功し、人間としての尊厳をなんとか守ることのできる暮らしを、今頃は送っているのかも?

そんな、期待どおりの国という話が広まっているのか、英国を目指す人々があとを絶たないわけですが、中東とアフリカからの不法移民の国籍は、紛争の激化と政情不安で多様化。基本的に彼らは、命を脅かされる危険から逃れてきた「避難民」。人道上助けてあげたいけれど「大群」に押し寄せられちゃたまらんという英国は、フランスを批判し、両国の不満の矛先が向くEUはEUで国連との非難合戦をしているもよう。

逃げたい人たちから大金を巻き上げ、どんどん送り出そうとする裏組織が暗躍しているために、移民問題は改善するどころかますます悪化しています。解決の糸口はまったく見えません。英国は紛争地からかなり遠いし、海に囲まれた島なので、まさかイタリアやギリシャのようなことにはならないと、タカをくくっていたところもあるのかもしれませんね。映画さながらの超現実的なシーンが、カレーで繰り広げられています。

その一方で、ロンドンには息のできる場所なんかない!と思う若い人たちが、もっと住みやすい都市へと逃げ出しているのも、事実のようなんです。で、彼らのあいだで人気のある行き先? 答えはベルリーン。わかります。緑が豊かで、アートと音楽とフードが充実し、人はみんなのんびりしてて、歩道の幅が東京の下町の車道くらいあるベルリン。わたし自身3か月暮らしてみて、本気で移住を考えたほどですから…。

若いクリエーターたちのテリトリーだったロンドン東部。ところがヒップになりすぎると家賃が高騰し、いささか殺伐とした南東部(これもわかります、わたしも学生時代に住んでました)へと移動が始まり、地の果てのようなルイシャムあたりのフラットシェアですら、ひと月800ポンド払わなきゃならないというのが現実。QOLを求めて、ロンドンを見限ってもおかしくない? 2014年11月のベルリンには、なんと13500人の英国人が居住。

その傾向は増加するばかりだそうで、「リトル・ブリテン」みたいな地区ができつつあるのかしら? ところが彼らのせいで、ベルリンでは低所得者向け住宅の家賃が上がる悪循環が起き、たとえ合法的移民であっても、英国の若い紳士淑女が歓迎されているとは、限らないようです。どこへいっても「移民」は、問題の火種となる? だれにとってもなんて生きにくい世の中でしょう! とりあえずわたしは、まずはこの猛暑に生き抜かねば…。

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About Author

京都東山の生まれ。19歳から雑誌の仕事(編集者/スタイリスト/コーディネーター/ライター)に携わる。英国では、憧れのフローリストの下での花修行や、尊敬するアーティストが学んだカレッジで現代アートを勉強し、通算11年間のロンドンライフをエンジョイした。オーサカン(大阪人)となった今も、“心”はロンドナー。変わらぬ日課として読むUK のオンライン新聞から、旬なニュースをあぶそる~とロンドンのためにピックアップ。帰国後は本の翻訳を手がけ、この5月に『ヴェネツィアのチャイナローズ』(原書房)、2014年7月に『使用人が見た英国の二〇世紀』(原書房)、ほかを上梓。ロンドンで目覚めた世界の家庭料理チャレンジ&花を愛でる趣味ブログserendipity blogは、開設して11年目に突入。

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