いつものように愛読紙をブラウズしていて、暗い日常(世界を騒がせている「パラダイス文書」に相変らずのトランピアンな社会の理不尽、日本では安倍さんの「モリカケ問題」)を忘れさせてくれた話題がこれ。大発見と呼ぶにはあまりにも小さな発見ではありますが、ゴッホの絵に貼りついたバッタの死骸が、初めて確認されたのだそう。アトリエから野に出て絵を描くのが、当時の画家の新常識になったんだもの、さもありなん?
この世紀の発見をしたのは、米国はカンサス市にある美術館の絵画管理員、メアリー・シェイファーさん。同美術館の収蔵品でゴッホ晩年の作品『オリーヴの木』(少なくとも18作が確認されているシリーズの1枚)に、同僚のキュレーターや外部の科学者とともに綿密な調査を加えていた過程で、小さなバッタの死骸に気づきました。イーゼルをまえに、南仏の光のなかでパレットと筆を手にしたフィンセントの姿が目に浮かびます!
フィンセントが筆を置き、草のうえに寝転んで夢想しているあいだ、うっかりキャンヴァスに着地してしまったバッタが、まだ乾かない絵の具につかまって身動き取れなくなり…が、さらに詳しい調査を専門家に求めたところ、バッタには胸部も腹部もなく、しかも「絵の具地獄」から逃れようともがいた形跡が見当たらなかったのです。ということは、え、ひょっとして? いかにも狂気の画家ゴッホがしそうなこと(とはわたしの想像)?
死んだバッタが偶然キャンヴァスに落ちた可能性もあります。でも、野外で描くときの、ホコリやハエと闘う苦労を、弟のテオにつづった手紙も残っているので、ゴッホを悩ませかもしれないバッタを殺したか死骸が目に入ったか、ともかく絵にくっつけちゃおう、みたいな気紛れだったのかもしれません。まあ今回のバッタの発見は、美術史的観点でいえばさほどの価値はないかもとはいえ、美術トリヴィアとしてはビッグニュースです。
数奇な運命をたどり、モダンアート黎明期のカリスマ的な存在としていまなお美術研究家の好奇心を掻き立て、美術品収集家(投資家)と美術ミーハーを惹きつけてやまないフィンセント・ファン・ゴッホ。なんて面白い発見でしょう! ただし記事は、情報源が同じゆえに似たり寄ったりで少々面白味に欠けました(デイリー・テレグラフは「最初は葉っぱかと思った」というシェイファーさんの言葉や館長のコメントなど、米メディアからの引用も)。
よし、バッタを見にカンサスへ行こう!と即座に思ったゴッホマニアには、話に水を差すことになりますが、肉眼で確認するのは無理だそうです。念のため。
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