恒例のロンドン・ファッションウィークは、昨日(2月19日)閉幕しました。ブレグジット期限が目前に迫りながらも見通しがまだ立ってなくて、ロンドンの冬の空同様に気持ちも鈍よりしがちななか、現実を忘れさせてくれる華やかなファッションの話題が、英国の雰囲気を少しは明るくしていたのでは? ところが今回のショーで、英国ブランドを代表するBurberry が発表した首吊りロープ風の「ヌース・フーディ」への批判がネットで拡散し、後味の悪さを引きずる結果となっています。
ハイエンドなファッションブランドが好んだエッジーなアイデアといえば、ジャンキー的不健康さが売りの「ヘロイン chic」がありましたっけ。そしてつい最近、昔のカリカチュアにあったようなタラコ唇を「遊び心」でデザインしたPRADAのバッグが、「黒人を侮辱してる」と猛反発を受け、販売中止に追い込まれた件は記憶に新しい? これに学ばなかったのか、GUCCI が紅いタラコ唇のついたデザインの黒いセーターを売り出し、案の定、ネットは大炎上。PRADA と同じ道を辿りました。
にもかかわらず、首に下げたリンチ用「首吊りロープ」がイケてる、と信じたBurberryでしたが、非難ゴーゴー。じつはバックステージで、このスェットパーカを見て冗談をいい合うスタッフに、モデルのリズ・ケネディが「自殺はグラマラスでもエッジーでもない!」と声をあげたものの、黙殺されてたようです。CNNによると、「ロープは船舶がテーマだったので」との弁解文書がCEOから寄せられ、クリエイティヴディレクターのリカルド・ティッシも謝罪し、コレクションから外すと発表。
エッジーだクールだと刺激と遊び心を求めてきたファッションですが、いまはエコロジーや倫理観や社会の風潮を見極めないと、Dolce & Gabbana のごとく簡単に不買運動が起こされるハッシュタグ拡散時代です。ところで、今回のBurberry のコレクションは毛皮が目立ちました。でも昨秋、Burberry は「毛皮不使用」宣言をしたはず…。どの模造ファーもホントよくできてる。繊維技術の進歩はスゴイ!けど化繊でしょ? 洗濯で流れてゆくマイクロプラスチックの行き先が気になります。
さて、ハイエンドなファッション界では、85歳でも現役でCHANEL のクリエイティヴディレクターを務めていたカール・ラガーフェルドの訃報が流れ、何かと話題の多かった今週、ローエンドのほうでも、英国で動きがありました。なんでもファストファッション業界では、英国人はヨーロッパ随一のお客さんなんだそう。お値段がお手軽ゆえに、着る機会がないにもかかわらずどんどん買い、収納場所のキャパを超えても買いつづけ、いくらKonMari-ing しても、断捨離が追いつかないのでは?
ファッション繊維産業が温暖化ガスを大量に排出していること、そして高く積みあがるいっぽうの廃棄された衣類の山、洗濯によって海に流れ出るマイクロプラスチックの問題なども鑑み、ファストファッション消費の行き過ぎは地球を傷つける、と危惧したのが、超党派の国会議員たちでした。ロイター通信によると、年に30万トンの衣類がゴミの山か焼却炉に送られているそう。そこで、8か月にわたって調査していた環境監査委員会は、売るほうも責任を負うべき、と呼びかけたわけです。
同委員会は、ファッション産業が英国内での重要な「稼ぎ頭」であるものの、衣類のリサイクルスキームの資金として、衣類1着につき1ペンスをアパレル業者から徴収する計画を発表。一方、消費者には、安いからって流行ばかり追わないで、服(Sparks Joy!)の寿命を延ばす努力(昔はセーターの袖口など、くたびれた個所は繕って着たもんです)を促し、政府に対しても今後、協力的な企業に対する税制優遇の政策を、働きかけてゆくのだそう。はたして、さよなら消費セラピー、となるか?
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