動物園の堆肥を盗み出せ!【上】

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barvisit


LONDON BAR VISIT #6 (Scotland ver.)

今月のお話は、以前に訪れたスコットランドの山岳地帯ハイランドにある
素晴らしいウィスキーバーで見つけたおじさん天使のマイクから聴いた話で
エジンバラに暮らしている、元祖おじさん天使のエピソードです

そう、あの飲んだくれのジンジャーと医者に憧れている
ちょっと臆病者のフラゴンと
彼らの頼れる仲間ピグレットの凸凹3人組の物語!

この凸凹3人組の友人で、ハイランド在住のおじさん天使マイクは
このバーが大好きなんだけれど、実は、このバーを教えてくれたのが
その酔っ払い天使のジンジャーだったそう

そして、その時に話してくれたのが、今回の物語です

このエピソードはちょっ長いので、2回ぐらいに分けて、お話いたしましょう

それでは、早速…

th_Torridon Hotel

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《堆肥を盗め!》

このお話は、ジンジャーがアロットメントに忍び込むところを
おっかないスタニスラス婆さんに見つかってしまったことから始まります

絵を描くのが好きなジンジャーは
みんなが大事に野菜を育てているアロットメントのスケッチを
どうしても描きたかったので、その塀を飛び越えて忍び込んだのです

「あんた、ダメよそんな風にして入って来ちゃ、鍵を使いなさい!」

「でも、鍵持ってないから…じゃあ、どうしたらいいの?」

「鍵持ってなきゃ、ダメよここには入れないわ」

「でも、僕、ここの絵を描きたいし…、ねえこれあげるから見逃してくれない???」

と、持っていたウィスキーの瓶を賄賂として差し出してみたけれど

「あー、そんなのダメダメ、鍵よ!鍵、鍵、鍵!!!」
スタニスラ婆さんの怖い目で睨まれてしまったジンジャーは

しょうがない、諦めるしかないか…、とガッカリしながらも
また他の日に、このおっかない婆さんがいない時に来たらいい

と、考えながら、出口に向って歩き出しました

その時、後ろから、ジンジャーを呼び止める声がしたのです

「あんた、お兄さん、ちょっと待ちなさい… 」

と言いながらスタニスラ婆さんが近寄ってきました

「あんたに、鍵を1週間使わせてあげようか?」

「え~、ホント?嬉しいな!是非貸してください」

とジンジャーが言うと、スタニスラ婆さんは

「じゃ、あんた、ちょっと手伝ってちょうだいな…」

と、それから、スタニスラ婆さんは、ジンジャーに
こそこそと小さな声で、話し出しました

その夜夕食の時間が終わると、フラゴンと頼れる仲間、ピグレットに
ジンジャーは言いました

「実はね、今日アロットメントの鍵をついに貸して貰えることになったんだよ」

「それは、よかったね!ジンジャーはアロットメント大好きだからな~」

とフラゴンとピグレットは、喜んでくれました

「でね、ちょっとさ、それで、約束しちゃったんだ…」

と、言って、ジンジャーは、スタニスラ婆さんに約束したことを
話しました

「え~~~~~~~!!!嘘だろ!!!」

ジンジャーの話を聞いたフラゴンは
驚いて椅子から転げ落ちてしまいました

いつも冷静なピグレットも、今回ばかりは
唖然とした顔で、ジンジャーを見ながら
自分の部屋に入ってしまいました…

暫くすると丸めた紙を手にしたピグレットが、部屋から出てきました

「本当に、ジンジャー
そんな約束を勝手にしてきちゃ困るじゃないか
僕もフラゴンも、いい迷惑だ…
でも、してしまった男の約束は、守らなければならない…
だからこれから、作戦会議だ」

小さな体に強くて潔い男魂一杯のピグレットは
そう言うと

【2 トン半の堆肥を盗め 作戦】

と書いた大きな紙をテーブルに広げました

ジンジャーがスタニスラ婆さんに
1週間アロットメントの鍵を借りる代わりに約束したことは

スタニスラ婆さんのアロットメントに必要な
2トン半の堆肥を、動物園から盗むことだったのです

そして、ピグレットが立てた作戦は…

決行日までの間に沢山の大きな布袋を作る
当日は夜の11時半にスタニスラ婆さんと、待ち合わせ
エジンバラ動物園に忍び込んで、堆肥を袋に詰めて盗み出す
夜明け前に仕事を終えるために、素早く行動すること
などを、2人にはなしました

そして、「特にジンジャーは、この日は、絶対にお酒を飲まないこと」

と、強い口調で、ジンジャーに言うと
大きな欠伸をして

「はいはい、わかりました」

といい加減な返事をしながら
酔っ払いジンジャーは、そのまま眠ってしまいました

次の日からは、毎日毎日布を切って、縫って
大きな袋を山のように作る日々が始まりました

「ジンジャー、穴を開けないように、ちゃんと切ってくれよ」

と、大きな穴が開いてしまった生地を見なながらフラゴンは
何度も言うのですが、ジンジャーの不注意は直らず何個も
小さな穴、大きな穴を開けてしまい
そのうち怒る元気も無くなったフラゴンは
ジンジャーが不注意で開けてしまった穴を見つけると
丁寧に、それらを補修しながら、袋をどんどん作っていきました

実はフラゴン、後で教えてくれたのだけれど

「こういうこと意外と好き…」と、思ったそうです

一週間経つと、大きな袋が部屋一杯になり
そして、堆肥を2トン半盗み出す決行日も
いよいよ明日に迫りました

当日の夜11:30、フラゴンとピグレットは、約束の場所に早々と到着して
ジンジャーとスタニスラ婆さんを待ちました

暫くすると、スタニスラ婆さんが珍しく機嫌良さそうな顔でやってきました

しかし、それから10分15分25分たっても、ジンジャーは来ません

「あのジンジャーのボケは、どうしたの?」

とスタニスラ婆さんは、怒りながら言いました

「全くもう、すぐ来るって言ってたのにあいつ、また寝ちゃったのかな…」

と、言いながら
ピグレットは、フラットに戻りました

それから、また15分経った頃、2人の姿がオレンジ色の街灯の下見えました

スタニスラ婆さんに、さんざん怒られたジンジャーですが
気にすることもなく、ふらふらした足取りで、3人の後に着き
動物園に向けて歩き出しました

暗い夜道を、歩くこと70分、やっと動物園に到着です

しかし、困ったことが待っていました…

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さて、この話ちょっと長いので、次回に続きます!

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About Author

島田カオル

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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