動物園の堆肥を盗み出せ!【下】

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barvisit


LONDON BAR VISIT #6 (Scotland ver.)

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前回の続き…
スタニスラ婆さんに、アロットメントの鍵を借りるために
みんなが驚いてひっくり返ってしまうような、約束をしてしまったジンジャー
友達のフラゴンと、ピグレットを巻き込んでの大騒動になってしまいました

動物園に到着したものの…
予想を超えた高い塀をどうしたら、超えられるのか…???

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ジンジャー、フラゴン、スタニスラスの台の1番上に乗っていた
ピグレットがガラガラガラ、とてっぺんから崩れ落ちた時
落ちた目の前の壁に丁度、ピグレットがくぐれる位の小さな穴を見つけました

その穴をくぐり抜け中に入ったピグレットは動物園の内側からドアの鍵を開け
皆んなは、意外と簡単に動物園に忍び込むことが出来ました

さて、無事に動物園の中に入った4人でしたが
堆肥置き場が広い園内の何処にあるのかがわかりません

ピグレットは、動物園のことならなんでも知っている
動物園1物知りのキリンの所へ行って
堆肥置き場への道順を教えてもらいました
親切なキリンの奥さんは、地図まで描いて渡してくれました

その地図を頼りに、動物園の中を歩き始めたのですが
真っ暗で、猛獣の光る目と唸声の中を進むのは
恐ろしく、ピグレットだけではなく
フラゴンもジンジャーも下を向いて歩きました
その中で、スタニスラ婆さんだけは、元気に楽しそうに
口笛まで吹きながら、先頭をきって歩くのでした

動物園のその道は、まるで迷路のよう
地図があっても、迷います
その時怖いもの知らずのスタニスラ婆さんは、恐ろしげなトラや
ライオンにも気軽に話しかけて、行く道を尋ねるのでした

そうして、グルグルと歩き回る事70分、やっと
堆肥置き場にたどり着く事ができました

「見よ!この山を!」

ニコニコしているスタニスラ婆さんです

そして、他3名は

その臭い堆肥の山を見上げて唖然としてしまいました

「さあ、皆んな!!!速く始めましょう〜〜!!!」
嬉々として山に向かったスタニスラ婆さんの後ろで
3人は、気がきくピグレットが用意をしてきてくれた
鼻つまみと手袋を着けて堆肥の山に向かいました

そして、沢山作って用意した袋に
臭い堆肥を詰め込む作業を開始しました

真っ暗闇の堆肥の山から聞こえてくるのは

「なんて、こった…」
「臭い…これは臭い…」
「なんでこんな事を、俺たちやっているんだよ…」
「お前のせいだろ、まったくもう…」
「あー、ウィスキーでも飲まなきゃやってられないぜ…」
「お前さあ…、僕とピグレット巻き込んでよくそんな事言えるな…」
「何をぐずぐず言っているの!もっとしっかり袋に詰めなさい!!!
もっとよ!もっと!もっと!!!」

ジンジャー、フラゴン、そしてピグレットの控えめな文句を言う声に混じって
山の上の方からは、元気発剌、嬉々としたスタニスラの声が聞こえてきます

そして、数時間が経ち少し、東の空が薄っすらと明るくなってきました

「さあ、皆んな!あと一息よ!!!もっと袋に詰めなさい!!!
もう少しで、100袋になるわよ!」

それから‪一時‬間が経ち、空が随分明るくなってきました‬

「あ〜〜、もうダメだ…」
「スタニスラ、これ以上出来ない」
「もうクタクタだよ〜〜」

身体中堆肥まみれの3人は、高く積み上げた堆肥の袋の山に
もたれかかって、動けなくなってしまいました

「早く起きて!日の出前に終わらせないといけないのよ!
さあ、皆んな!!!立ち上がって!ほら!!!行くわよ!!!」

「なんで、あの婆さんあんなに元気なんだよ…」
「おい、起きろよジンジャー、行くぞ、早く起きろってば…」

やっと立ち上がったジンジャーの背中に
堆肥を詰め込んだ袋を一杯に積み上げ
そして、スタニスラとフラゴンとピグレットも
出来るだけ堆肥袋を担いで、動物園の出口へと向かいました

堆肥まみれの4人と100個の袋から漂う臭いは
まだ寝ていた動物達を起こしてしまいました

そして、動物園中の動物達が
グゥオ〜〜
キィ〜キィ〜〜
ギャァウ〜〜
ピ〜〜
ウォ〜〜
グワァ〜〜
キュ〜キュ〜〜
ガァオ〜〜

と、唸り声叫び声をあげ、動物園の大音楽会が始まってしまいました

何事かと、眠い目をこすりながら出てきた動物園の園長さんも
凄い臭いに驚いて

うわ〜〜!!!

と、叫び声をあげて園長の家に走って逃げ
ドアをしっかりと閉じてしまいました

4人は、重い重い袋を担いで、やっとの思いで
動物園の出口にたどり着き、その後は野を超え丘を越え
川を渡り、村を幾つか横切り、坂道を登り坂道を下り
ふーふー、ゼイゼイ言いながら歩きつづけました

ジンジャーの背中に、高く積み上げられた臭くて重い袋は
ジンジャーの背中から1つ2つと落ちていきました

朝になると、村の人が起きてきて
家の前に落ちている大きな堆肥の袋を見つけました
臭いけれど、これは畑にまきましょうと
鼻をつまみながら、大きな重い袋を引っ張って行きました

町にも朝が来て、ラッシュアワーの時間になりました
バスに乗っている人も、タクシーを運転している人も
皆んな、街中にぽつぽつと落ちている
臭くて大きな袋を横目に見ては、臭い臭いと顔を歪めています
学校へ行く途中の子供達は
「クチャ〜イ!ウンチの匂いだ〜〜!!!」
と、可笑しそうにゲラゲラ笑いながら
大きな臭いふくろの周りをぐるぐると走っています
その周りに今度は犬が集まってきて
子供と一緒にはしゃぎます

町中に充満している、臭い匂いのために
警察には、苦情の電話が殺到し
パトカーやら消防車も出動し、なんとかならないか
と、大層大変なことになりましたが、農家の大きなトラックが通りがかり
臭くて大きな布袋を回収してくれました

さて、町中が大わらわの頃、夜明け前には、終わらなかったけれど
やっとの思いで4人は、スタニスラのアロットメントに到着しました

「ふ〜〜、終わった〜〜!!!」
「あ〜〜、早く家に戻ってシャワーを浴びるぞ〜!!!」
「さっさと家に戻って、一杯やって横になる!!!」

3人が、嬉しそうにそう言いながら
スタニスラのアロットメントに臭くて重い大きな袋を降ろすと

「さあ、皆んな!後一息よ〜!もう一踏ん張り頑張るのよ〜!!!」

と、言いながら、スタニスラは袋の口を解いて
堆肥を畑にまきました

「…え?」
「…うそ」
「…ウッソだろう〜〜!!!」

最後の最後にもうひと仕事が待っていたのでした

th_Torridon Hotel2

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それから、1週間がたった午後の事です

「ジンジャー、スタニスラ婆さんからだぞ」

と、言いながらフラゴンが一通の手紙をジンジャーに渡しました

ジンジャーは、その手紙を声を出して読みました

親愛なるジンジャーへ

先日は、ありがとう
畑の堆肥は、落ち着いていい具合になっている
動物の魂がたっぷりと入って育つ美味しい野菜を期待していておくれ
手紙と一緒に約束の鍵を入れておく、1週間したら、戻すように

それから、もう1つ
私の友人のキースも堆肥2トンを欲しいと言っているから
また手伝ってくれ、急いではいない…
そう、来週あたりではどうだろうか…?

あんたの友達にもそう伝えておくれ

かしこ
スタニスラ
追伸) しつこいようだが、鍵は、1週間したら戻すように…

「なんたるこった…」

3人は、口を揃えて呟きました

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About Author

島田カオル

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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