進化のパターン

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cafevisit


ロンドンで一番ヒップでカッコイイエリアと言えば
イーストロンドンにある、Shoreditch/Hoxton/Hackney地区
そして、今この流れはさらにそこから東に発展している

先日私は、ぶらりとバスに乗ってこの界隈でカフェを探した
やっぱりイーストは楽しい!
選ぶのに困ってしまう、お洒落なカフェがあちこちにある

そして、その中で選んだのが、ここ

「どうしてここを選んだの?」

と、聞かれたら即答です

「テラスに座っていた人達が、カッコ良かったから!」

暑い日だったので、私は久しぶりにアイスラテを頼んで
カフェ全体が見渡せる席を選んで座った

オオーなんとなんと、来る人来る人本当に

【お洒落!素敵!変わっている!カッコいい!粋!面白い!不思議〜!】

こんな雰囲気の人が次ぎから次ぎへと入って来る
マンウォッチングがとにかく楽しいカフェでした

th_2015-07-10 13.23.10

それにしても、と想い出すのは
また昔むかしのことでございます・・・

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私は友人と3人で、Hoxton Squareにアトリエをシェアーしていたことがありました
そこは、午前中アルバイトをしていたシティーから歩いて20分の場所にあり
とても便利で、安くて,広くて、申し分無い所だったけれど

時は、1980年代の終わり
その辺りはただの倉庫街
30年後の今のこのヒップなShoreditchを想像することは
絶対に出来ない時代でした

私は毎日バイトが終わると、トコトコ歩いて
アトリエの近くにある、ただ一軒だけあったカフェに寄って
お昼ご飯を買いました

近くの「カフェ」で
と言っても「イーストにある80年代のロンドンのカフェ」という意味

小さなサンドイッチバーのカウンターで
おじさんに萎れたレタスが一枚入っている
ハムチーズサンドか何かを作ってもらい
それと一緒にプラスティックのカップに入った
ミルクティーを買って持ち帰る
そんな労働者カフェのことです

アトリエをシェアーしていた一人、画家でダンサーだったクリアと私は
よくそのカフェでサンドイッチとミルクティーを買い
アトリエの入っている汚い倉庫ビルの前にある
ここだけは、美しい大きな樹のある公園(スクエアー)で
のんびりとお昼を食べました

さて、私達にアトリエを貸していたのは
ちょっと怪しそうなインド人
管理?なんていう言葉は彼の辞書には無いのでしょう
その物件はかなり安いから文句は言えなかったけれど
トイレは史上最高に!汚くて、気持悪く
もちろん暖房もなかったから冬はコートを着ながら絵を描いていたのです

しかし良い点もあって
アトリエは天井のとても高い3階か4階の部屋だったので
大きな大きな窓からは、煙突がニョキニョキと出ている屋根が
ずっと遠くまで見渡せる
とても面白いインダストリアルなイーストロンドンの風景が広がっていました

私達3人は、そのスペースで黙々とそれぞれの仕事をして、夕方になると
音楽をかけて踊ったり、友達を呼んでパーティーをしたり・・・
貧乏だけど、若くて、夢があって、めちゃくちゃ楽しい
絵に描いたようなボヘミアンなアーティストライフを楽しんでいたのです

でも、それがある日突然奪われてしまいました

まだ若いけれど、ビジネスがうまくいき始めて
大きなスペースを探していたテキスタイルデザイナーが
私達の隣のスペースに引っ越して来たのが、事の始まり

その頃からなのでしょう
今につながる開発の波が少しづつ押し寄せてきていたのです…

さて、街の発展にはある一つのパターンがあるようです
そしてそれは今のロンドンにも見られます

以前は誰も近づかなかった、ロンドンのノースイースト地区に
知る人ぞ知るバーやカフェ、新しいギャラリーが出来ているのです

お金のない若いアーティストしか、いつく事がなかった所に
暫くすると、そのよさに気がついた
お金のもう少しあるデザイナーが移って来る
そしてそこのエリアにだんだん活気が出て来て
バーやカフェ、レストランが少しづつ出来てくる

そうなると時代は変わり
いつしか貧乏なアーティストは、追い出されるように消えていき
その代わりに、徐々に徐々に成功したデザイナーや
お洒落なお金持ちが移り始める

追い出された貧乏なアーティスト?
彼等はもっともっと東や北の新天地に流れて行く
そして、そこでまた新しいストーリーが始まる…

話は戻ると、そのデザイナー集団が
壁1枚隔てた隣のスペースに引っ越して来ると
色々な事が変わっていったのです

まずトイレが奇麗になった!
暗いと、オバケでも出そうな不気味な階段もきれいになり
お湯がちょっと湧かせただけのとんでもなく小さかったキッチンは
きれいでコンパクトなキッチン変わり

そして、案の定インド人の大家は家賃を跳ね上げた!
もう、私達には払えなくなってしまったスペースから
出なければならなくなった時
丁度,私は東京に戻る事になったので良かったけれど
クリア達2人は?そういえば、どうしたのだろう・・・?

あれから時が経ち、数十年ぶりに
当時のアトリエがあった場所に行った時には
心底驚いた

スクエアーの周りのビルの一階は
お洒落なレストランやカフェになり
あたりの倉庫ビルには
カッコイイ建築/デザイン事務所なんかが入っていた

そしてあの小さな80年代ふうの
懐かしいおじさんの労働者カフェは、消えていた

金融街のシティーに近いし、ジョージアン/ビクトリアン時代の美しい建物や
カッコイイ倉庫ビルが建ち並ぶその辺りが、素敵に変身する事は
考えてみれば、当然の成り行き、時間の問題だったのだ

あれから数十年、地価は高騰し続け
今ではシティーに勤めるバンカーも暮らす
ロンドンで最も人気の高いエリアの一つになってしまった

Shoreditch

世界中から人が集まるロンドンには、住宅が不足しているから
今、街のあちこちで大小様々な開発の波がうねっている

私が暮らすCanary Wharfでも、大きな開発が幾つか始まっている
落ち着いていて緑の多かったホランドパークにいた時には
小鳥の声を聴きながら毎日を過ごしていた
それがここに来てからと言うもの、工事現場の中で暮らしているような感じ…

色々な国から色々な文化を持った人が移り住むロンドンは
混沌としているけれど、バラエティーにとんで、活気に溢れている
色々な人種が集れば,問題も沢山起きる

でも、それら全てを飲み込んで、それでもどんどん成長することが出来る力が
あるのが、ロンドンの強さなのではないか、と思う

居場所が無くなってしまうアーティストにとって辛いことであるし
こうした開発に反対する人は多いけれど、歴史はそれの繰り返し

良き古き時代だった80年代…
かも知れないけれど

私は新しい未来のロンドンが、どんなになるか楽しみだ!
中世からの古い町並みを残し

その中に斬新なデザインの新しい建物を加えながら変化を続けるロンドンが
どんな風にこれから成長していくのだろうか?

私も追い出された1人だけれど、誰が文句を言おうと
今のこの新しいロンドンにこそ、面白さを感じている

無理なんだけれど…
100年後のロンドンを見てみたい!

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【きょうのヒント】
私の昔々のアトリエがあった辺りの南側ちょっと行ったところ
このカフェが見つからなくても、近辺を歩いていたら
ヒップな人達が集まる、いろいろなカフェに遭遇すること間違いなし!

【前回のこたえ】
The Calf of Clapham
87 Rectory Grove, London SW4 0DR
opening hours: 12:00 – 00:00 Mon-Fri, 11:00 – 00:00 Sat, 12:00 – 23:00 Sun

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About Author

島田カオル

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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