受け継がれるおじいちゃんとおばあちゃんの意思

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cafevisit

Sohoにある、ずっと行きたいと思っていたcaféに先日行ってきた

中に入ると、そこには私が思う、イタリアの下町にあるcaféがあって
私は妙にウキウキしてしまった
ロンドンに沢山ありそうで、なかなかない
イタリアンバールがあるのです
このcaféがオープンしたのは今のオーナーの
おじいちゃんとおばあちゃんの時代
1930年にCovent Gardenで開店
その後、1949年に現在のSohoに移動してから
ずっと、ここで営業中 すごいでしょう!
第二次大戦中も、店を閉めることなく
おばあちゃんは一人で頑張っていたそう
そして長い戦争が終わるとおじいちゃんも帰って来て
美味しいコーヒーなんてなかなか飲めない時代の先頭を切って
この店は動き出し、ロンドン中のイタリア人が集まる
ハブステーションになったのです
高度な技を持っている一流イタリア人職人達もカフェに集い
ここで構築されたネットワークを利用して、彼等は仕事を広げていった
その職人の一人が、この店の床のタイルを造ったトリノおじさん
トリノおじさんのモザイクスキルは
古代ローマ帝国時代の技法に近いものだということで
65年経った今でも、caféの床は未だに完璧、ということ
2000年だって、大丈夫なモザイク床だというお話です
th_Bar Italiaそういう長い歴史の中で育っていったこのカフェは
決しておしゃれではない
でも、それが実にいい
そしてコーヒーが美味しい
私が食べた素朴な味の小さな卵のタルトにピッタリ!
この店には、なんだろう
この卵のタルトに似た感じの
とても温かい真心を感じる
きっとずっと昔から、ここに流れている
温かいぬくもりと、美味しいコーヒーを求めて
毎日色々な人々が出入りしているのだと思う
ずっと隅っこに座って
今までのこのカフェの歴史を全部覗いて見てみたい
1940年代のロンドン
劇場からは俳優・女優・ダンサーが
ジャズバーからはミュージッシャンが
イタリアの下町の裏道にありそうなバールに
エスプレッソを飲みに、一杯のぶどう酒を飲みに
立ち寄ったのだと思う
先日奥の隅っこのテーブルに座って
私が見ていたのは、歴代のお客様達じゃないけれど
金曜日の午後の時間に入れ替わり立ち替わり
カフェに寄った人達は
労働者も、Sohoらしいスタイリッシュな若い男女も
おじさんもおばさんも、皆んな気軽にちょこっと入ってきては
店主とちょっと話し、声を掛け合いながら
エスプレッソを飲んでは、また仕事に戻って行く…
この下町イタリアバールに流れる空気の中には
温かさを感じる、と書いたけれど
もう一つ感じたことがある
それは、家族の絆
なんだって、やっぱり家族はすべての原点だから
何があったって、強いのだ
イタリアから思い切って移民してきた
おじいちゃん、ばあちゃんが
コツコツと積み上げてきたもの
その上に、次の世代が積み上げて、その上にまた次の世代が
そして、この後も、ずっと続いていって
何百年も続く歴史あるSohoのイタリアンバールになっていく…
のかもしれない
消えそうな時期もあった店の灯りを絶やさずに
ちょっとづつ変化しながらも同じ形で
ほぼ一世紀やり続けるって
そう簡単に出来ることじゃない
このカフェに漂っている空気の中に
そういう長い家族の歴史が積み重なってできた
太い軸というか、揺るぎない自信を感じる
イタリア魂が
おじいちゃんとおばあちゃんの意思が
しっかり受け継げられていて
一番大事なところは絶対に守り通し
こうして、ファミリービジネスは
継続しているのだと思う
自分の進む道にぶれることなく
ちょっと自信を無くしても
くよくよせずに、さっさと前に進んでいく
そして
ずっとずっと丁寧な仕事を続けていくことに専念する
こういう努力の積み重ねが
やっぱり、大きなものを作っていくんだろうな
私も丁寧に、コツコツと仕事をしていけば
きっとこのカフェのように
なれるのかもしれない
そんなことを思ったら
なんだか元気が出てきてしまった
私のカフェ好きの一つは
時々、その店からすごいエネルギーをもらうことがあるから
インスパイアーされて
お店を出る時に、力がみなぎっていることを感じるから
どういうわけか、レストランでは
この感じをあまり味わえない
多分、レストランでは飲んで食べておしゃべりをしているから
一人でぼーっとしながら何かを
感じ取るような感覚が消えてしまうのだと思う
哲学するカフェとでも言うのでしょうか?
ま、そんな大層なことじゃなくても
美味しいコーヒーを飲みに、そして
懐かしいおばあちゃん、おじいちゃんに会いに行くように
また、このカフェに行ってみようと思う
嬉しいなー
私のお気に入りカフェが、また一つ増えた!
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【きょうのヒント】
今回のヒントはまずSohoジャズクラブの向かい側
こんなに言ってしまったら、もうわかっちゃうかな?
って、このカフェ、有名ですものね
多分ご存じでしょう!
でも、もしまだ行ったことがなければ
是非立ち寄って、イタリア人の様にスタンドに立ちながら
一杯コーヒでも食前酒でもぶどう酒でも食後酒でも
どうぞ、楽しんできて!
【前回のこたえ】
Brook’s Counter & Table
140 Shepherds Bush Road, London W6 7PB
opening hours: Mon-Fri 8:00 – 18:00, Sat 8:30 – 18:00, Sun 9:00 – 17:00

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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