私の心はポーンと飛んで劇場のドアを開けた

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cafevisit


東京にいる間は、忙しく動き回っているので
caféに座ってぼーっとする、あの時間があまりない
でも、友人と会ったり、仕事の打ち合わせではカフェを使う
だから私は大概待ち合わせの時間より、少し早めに行くことにしている

今回も指定されたカフェに、約束の30分前に着いた
暫しぼーっとした時間を楽しんだ後
スケッチブックを取り出して絵を描き始める

いつも思うことだけれど、絵を描くために、改めてカフェを観察してみると
いろいろなことに気がついて面白い

今回のカフェは青山の大通りに面しているけれど、とても静か

真っ白な壁と木が基調のインテリアで
パーティッションには、控えめにきちんとカフェ雑貨がならんでいる
いくつもある優しいランプの灯りとボサノバで、カフェの空気は澄んでいて

th_青山カフェ私は初夏の森の中にいるような気持ちになりました

そして心はいつしか またあの森に…

それはエジンバラ郊外にある森で
私の心が時々遊びに行くところ

エジンバラ市内から約30分バスに揺られると
ロスリンチャペルのある村に到着する
バス停から少し歩くとその小さな古い教会はある
中に入れば驚くこと間違いなし
教会の内部は不気味な彫刻で埋め尽くされているのだ!
この教会、実はダン ブラウンのベストセラー、ダヴィンチコードで
一躍有名になったチャペル、今もまだ
世界中から(特にアメリカから)観光客が絶え間なくやって来るそうだ

私の心が時々ふっと飛んでいくのは、この教会の先にある森

どこにでもありそうな田舎の風景の中にあるこの森は
美しいけれど、特に感動するところではない
イギリスには、よくある森だから…

だけど、7、8年経った今でも、ふっとした事で
この森の中で見た風景や、気持ち良いそよ風
摘んだ青い花のこと、小鳥の歌声が
私のところへ時々戻ってくる

それは、このカフェに漂う空気感とも
きっとどこか共通しているものがあるのだろう

共通しているものを感知すると、脳は動き出して
頭の中で眠っている、それと似た記憶を瞬時にして取り出すのだと思う
そして今回みたいに脳から心に伝わって
その似た記憶の中に心を送り込んで遊ぶのだ

きっとそんな風に、脳と心は連動しているのだと思う

例えば

冷たくて強い風にあたると、私の心は
スコットランドの山岳地、ハイランドへ飛んで行く
そして、黒に近い灰色の雲に覆われた、おどろおどろしい、けれど
魅力的、あるいは魔力的な山を見上げて、その辺りを飛び回る

又、気持ちの良いそよ風を感じた時にいつも心が飛ぶ行き先はハワイだ
それは、数年前に行ったハワイでのこと
早く目覚めた朝、私は友人とカフェを探しに散歩に出た
結局良いカフェは見つからず、私達はホテルの近くのマクドナルドで
コーヒーを買って、ビーチ沿いのベンチに座ってお喋りをしたのだけれど
その時に感じた、あのとても気持ち良かった風が忘れられず
爽やかな風はいつも私の心をあの朝に飛ばせる
そして今では音信不通になってしまったその友人のことを想い出させるのだ

クリスマス時期のハイドパークにやって来るウィンターランドに
行った一昨年前のこと
真っ暗なハイドパークでお祭りの光を見た瞬間に
私は子供時代に飛んで行ってしまった
そこは新宿の花園神社、酉の市
若い父と母と6歳上の姉と一緒に、迷子にならないようにと母の
手をしっかりと握って、あちこちからの掛け声を浴びながら
埋もれてしまいそうな人ゴミの中を歩いている
多分5歳ぐらいの私に心は飛んでいった

そして、30年ぐらい前のこと、フィレンツェに行った時にも
面白い心の浮遊体験をした
それは、ウフィツィ美術館にあるボティチェッリのプリマヴェーラの修復が
丁度終わって久しぶりの公開に運良く当たった時のことだった
汚れをきれいに取り去った絵は、煌びやかに輝いていて眩しく感じたほど
その美しい絵を目にした時、私の心はポーンと飛んで劇場のドアを開けた
そして、目に飛び込んだのは明るく輝く歌舞伎舞台だったのだ!

そこに見える存在と
記憶の中や想像の中の存在が交差する世界を飛び回るのは、楽しい

でも、これは、
カフェでのんびりしている時や、遊んでいる時にに起これば
楽しい事で片付くけれどけれど
それは、ふっと思って起こってしまうことだから、心の勝手な浮遊は
時として困ってしまうこともあるのです

以前ミーティング中、重要な話し合いをしている時のことでした
その中の1人の鼻の横に、ポツンとホクロがある事に気が付き、そして
「あ、スイカの種…」と、思ってしまった私は
みんなが真剣に真面目な話をしている中で
「スイカだ!  スイカか~」
と、心はスイカをぐるぐると回り始めてしまいました
そして、ホクロとスイカの関係を考えたら、なんだか凄く可笑しくなっちゃって
真面目な話が続いている中、私は笑いをこらえるのに大変だったのです

心は予想通りに動くものではなくて
本当に勝手気ままに浮遊を楽しんでしまいます
TPOなんて、関係ありませんから

連想ゲームのような、この遊び
私みたいに癖になってしまってはいけません
みなさんは、どうぞお気をつけて下さいませ…

なんて、気がついてみたら
今日もまた、話が随分と変なところに飛んでしまいました

青山のこのカフェは、コーヒーも美味しかったし
ぼーっと空想して心を飛ばすのには、とても良いお店だと思います
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【きょうのヒント】
今日のヒントも簡単だ!
青山のとある大通り、とある大学の反対側…

【前回のこたえ】
カナルカフェ
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂1丁目9

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About Author

島田カオル

東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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