思い出を吸い込んだ壁によりかかれば

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cafevisit


ロンドンイーストや、サウスには
お金はないけれど、アイディアや、気力や夢は一杯ある!!!

という若い人達が、アーティストが
面白いお店をだして、楽しい地区を広げている

東京でも同じように地価が安くて、昭和の雰囲気残る下町に
イイ感じのお店やカフェ、ギャラリーが増え
新しい文化が育っているみたい

『ロンドンの下町大冒険 』を一緒にする仲間、アッキャんがちょうど帰国していたので
約束をしていたこの日、私達は 『番外編、浅草橋大冒険』 をすることにした

先ず、ジュエリーデザイナーのアッキャんに教えてもらって
ジュエリーのパーツが山のように売っているお店に行くことにした
ロンドンでも、パーツ屋さんがあるけれど、
需要が日本程ないのか、その品数は少なく
私達は、このお店に溢れている宝の山をみて狂喜してしまいました

でも、気持ちを抑えて抑えて
今回は、私もアッキャんも、リサーチということで
じっくりと見て回るだけ、そしてよく考えて
ロンドンへ戻る前にもう一度来ることにした

「ちゃんと計画立てないと、見るもの全部欲しくなってしまうからね」
と、2人で話しながら、今回は心を落ち着けて、購買欲を抑えました

浅草橋には、ジュエリー作りのパーツ屋さんが、あちらこちらにあって
一日中いても、飽きないところ

私も、新しいダイルクロコダイルペンダントのアイディアが湧きました!

いつも思うのだけれど、制作意欲が欠けてしまったり
スランプに陥ったりした時には、画材屋さんや本屋さんに行くのが
私の一番の回復法なんだけれど、このアクセサリーパーツ屋さんも
かなり効き目あり。

やる気がムクムクと湧いてくる
考えが止まらない… 楽しい!

さて、パーツ屋さんを出たら、今度はカフェ探しです

「きっと、このあたりの裏路にありそうね…」
「あ、この横丁なんかどう?ありそうじゃない???」

こんな会話をしながら、雨の上がった浅草橋の裏通りを
アッチコッチと歩きました

やっぱり、亀戸の時と同じように、あった!と思っても
それは、飲み屋であって、なかなかカフェがないのです

そのとき、アッキャんが何か面白そうなお店を発見
近づくとそれは革細工のお店と隣には小さなギャラリー

ギャラリーでは、Tシャツ展をやっていました

アートなTシャツには、興味津々の私ですから、入ってみると
優しいお兄さんが出てきて、説明してくれました
実は、彼もそのアーティストの1人で、今日はお店番をやっているとのこと

昭和のボロ屋を、中々いい感じに作り変えたギャラリーは
コージーな雰囲気で、小さなものを展示するには
打って付けのスペース

ギャラリーを後にして
また裏路を歩いていると、又々アッキャんが面白いものを見つけました
それは、まるで高い壁の上に乗っかっているみたい…

花火船、屋形船、釣舟、宿船

こんな看板が目に入りました

「ねえ、何だろうね?あれ、船を貸すお店???」
「興味湧く〜、なんかイイね〜」
と言いながら、アッキャんは写真をカシャカシャと撮っていきます

「ねえ、アッキャん、見てあそこにもある!」

どうやら、高い壁の向こう側は川のよう、きっとこの川に沿って壁の上には
こういう貸し舟屋さんがいくつもあるのでしょう
見たこともないような風景は、東京にもまだあったのです

その時

「あった〜!」と、アッキャんがまた叫ぶ

ありました!探していた喫茶店
外観の感じはこれこそ、昔ながらの日本の純喫茶です

そしてドアを開けると…

th_浅草橋

「うわ〜、昭和だ〜」

2人とも、ここでもワイワイと喜び
いつものように、お店が見渡せる場所を確保し、そして
「私は、こういうお店では、ホットケーキセット!」と即決定

アッキャんと言えば
「あ、ビールもある…」
と、少し迷ったもの「やっぱり私もホットケーキセット」

2人で同じものをお願いしました

いやホント、こういうお店は、昔々は、どこにでもあった
犬も歩けば棒にあたる如し、喫茶店はどこにでもあった
でも今は、こういうお店を見つけるのは
難しくなってしまいました…ちょっと残念ね

このお店は、奥がかなり広くてこの町のビジネスマン達の
打ち合わせ場所、一服する場所、ランチの場所として人気のお店みたい

支給してくれるのがまたまたこのお店にぴったりの年配の女性
フリルのエプロンでほんわかとして、丁寧にサービスをしてくれ
タイムスリップした感じで、私はスケッチするのがとても楽しくなりました

この喫茶店、41年前から営業しているそうです
最近のカフェには滅多に見られない、41年間ずっとここで使われていたのだろうな
と、思われるテーブルやソファ型の椅子がある
そして、極めつけの茶黄色くヤニで染まったデコボコの壁
それを見ていたら…

そういえば、日本のカフェでタバコを吸う人が、少なくなってきたな、と感じた。
ロンドンは、バーでもパブでもどこでも室内は全面禁煙だから
東京に戻るたびに、私は外食する時に匂ってくるタバコの臭いに
驚いてしまって、早く日本も禁煙にしてほしい、といつも思っていたのです

でも、この茶黄色の壁をみたら
昔の喫茶店や、仕事先で出入りしていた編集部の部屋の空気を思い出してしまった
当時、今では考えられないけれど、オフィスの中も喫茶店の中もモクモクと
タバコの煙でいっぱいだった

だからどこへ行っても、こういう茶黄色い壁をよく目にしていた

この喫茶店は、今でもタバコOKらしい
けれど、吸っている人は、あまりいなかった

日本も法律はないけれど、私にしてみれば
室内で焚き火をしていると同じこと、に思える室内での喫煙行為が
少しづつ減ってきているのだな、と気がついた

私は、タバコは嫌いだけれど、ちょっと薄汚れているような
ヤニで染まったような壁の雰囲気は嫌いじゃない

この壁に囲まれていると
また遠いい昔の時の中へ飛んでしまう

少し生意気な高校生の私は、新宿のジャズ喫茶Dugへ友人と時々行くことがあって
茶黄色の壁に寄りかかってジャズを大人っぽく聴いていたことを思い出す

そうだ、あの頃の想い出は、こういう壁に吸い込まれていたんだな…

だから、タバコは嫌いなのに、この壁に懐かしさを感じる

そんなことあんなことを想い出してホットケーキを食べていると
今度は子供の頃によく母が作ってくれた
ホットケーキやドーナッツの想い出が頭をぐるぐる回りだした

私は、この日アッキャんと大いに楽しい時間を一緒に過ごしながら
心の中ではまたいつものように
流れる時間の中を行ったり来たり…

懐かしい時間の中で遊んでいたのでした

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【きょうのヒント】
舟屋さんの近く、駅からそれほど遠くない裏路の角

いったい、どこをどうやって歩いたか全く分からない私が
出すヒントは、今回もヒントになっていないけれど…
裏路を歩いていたら、フッとこの喫茶店を見つけるはず、多分…

【前回のこたえ】
Cafe;hauls
江東区豊洲2丁目1ー9

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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