かくもビミョーな獣医エクスペリエンス(後編)

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coolcats


前回のタムタム騒動の続きです(今回はちょい汚い話も含んでいるので、お読みになる際はご注意ください)。

タムタムを初めて獣医に連れて行き、膀胱炎と診断されたその夜、私はバンドのライブがあったため、家に戻ってくるなりすぐに準備して出かけなければなりませんでした。そんなわけで、まだまだパニック状態さめやらずのタムタムを夫に託し、あたふたとヴェニューへ。夫も後から見に来る予定でした。

ところがライブが始まる少し前に夫から電話があり、とても出かけられる状況ではないとのこと。何やらタムタムが、興奮状態のまま床にお尻を擦りつけて這いずり回り、くっさーい臭気を部屋中に撒き散らしているというのです!なんじゃそら!カメムシか!

猫の肛門の周りにはニオイ袋(肛門膿)というものがある、というのは以前ネットで見て知っており、当初は膀胱炎ではなくて、この肛門膿が詰まってしまったのではないかという疑いも持っていた私は、ニオイ袋が炎症を起こしていないかどうか、できる範囲でチェックするよう夫に頼み、自分たちの出番が終わったらすぐ家に帰ると伝えました。

そしてライブを無事終えて、ポケットからケータイを取り出すと、またまた夫から留守電に切羽詰まった声で「これ聞いたらすぐに電話して!」というメッセージが。何か大変なことが起こったのかとドキドキしながら電話すると、「ごめんごめん、ちょっとパニクって電話しちゃったんだけど、今はどうにか落ち着いたので大丈夫」とのことで、ひとまずホッ。

実はタムタムのお尻(毛が長くてぶ厚いので普段よく見えない)をチェックしたところ、な、なんと、古いフンが固まってこびりついていて、肛門のまわりが悲惨なことになってしまっていたらしいのです……。それでお尻を床に擦りつけるような真似をしていたんですね。しかしこのキチャナイお尻を見て慌てた夫が、夜間でも対応してくれる緊急連絡先に電話して問い合わせたところ、毛が長い猫にはありがちなので、とりあえず布をお湯で濡らすとかして肛門のまわりを拭き取るとともに、固まっている毛ごと切ってくださいとアドバイスされたとのことで、私がライブをしている間、夫はゴム手袋をはめ、嫌がってネコパンチやスクラッチで攻防するタムタム&その毛深いお尻と格闘していたのでした。

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しかしその奮闘の甲斐あって、固まっていた汚物を取り除いてあげたらスッキリしたらしいタムタム。錯乱状態からは脱して落ち着いたようで、ひとまず一段落した模様。つまりタムタムは、膀胱炎でも肛門膿炎でもなく、ただのフン詰まりだったのです……。そういえば獣医さんも膀胱炎と思い込んでて、お尻をチェックしてなかったよなあ。しかも診察料(膀胱炎の薬込み)£80ちょい……。私はてっきりペット保険がきくんだとばかり思っていたら、実は保険がきくのは一件の診察につき£85以上かかった場合に限るんだとか。要するに重病などで診療が長期間にわたるような時以外、保険はきかないんですな。

それにしても誤診で£80て……と正直、思いましたが、「獣医に行く」という大冒険のおかげでタムタムの心拍数が上がるところまで上がった揚げ句、ネジが外れてお尻がエクスプロージョン、しかしこれが功を奏し、結果的にここ1、2週間ほど愚図っていたタムタムについに平穏が訪れたので、まあよしとしよう。と、自分たちを納得させるに至りました。ふう。

そしてその後、数ヵ月間は特に何事もなく平和な日々を送っていたタムタムとラミー。問題といえば、時々タムタムが食べ過ぎて吐くことがあったことと、2匹とも数週間に一度ぐらいの頻度で、猫特有のヘアボール(毛玉)を吐くようになったことぐらいでした。しかしこのヘアボール、一見するとフンみたいなので、見つけるたびに一瞬ビビります(どっちにしろ汚物度はまあ、似たり寄ったりか。臭いがないだけマシですが。写真をここでお見せするのさすがに憚られるので、ヘアボールがどんなものなのか見たい方は、ネットで画像検索してみてください)。

そんなある日の朝、いつものようにグルーミングをしているタムタムの横に腰掛けて、ふと見ると、尻尾の上にくるりんと丸まった短いスパゲティのようなものが落ちているではないですか。ん? と思わず手で掴んでしまったものの、すぐに「こ、これは……回虫!?」と気づきました。ぎゃー!

しかし一人で声をあげて大騒ぎしている私を全く気にする様子もなく、変わらず真横でせっせとグルーミングを続けているタムタム……。すぐにネットで形状などを調べると、うん、これは間違いない。フン詰まりが解決したと思ったら、次は回虫かい! しかも室内飼いなのにどうして回虫が発生するのか謎でしたが、ネット情報によれば人間が外から卵を持ち込んできている(靴とか傘とかに回虫の卵がくっついてきている)場合もあるとのことで、いやはや全く油断ならないのでした。さらに、一度感染するとなかなかしぶとくて駆除に時間がかかるとか、人間にも感染する恐れがある、なんていう話もたくさん目にして、急にいろいろ不安になってきました。

夫が獣医に電話して尋ねたところ、回虫用のおくすりを処方してくれるとのことだったので、その日の午後にさっそく取りに行きました。日本の猫関連サイトや掲示板を見たところ、みんな獣医さんにちゃんと検便してもらい、回虫の卵が残っていないか確認してもらっているようだったので、 電話口での問診と処方箋だけで本当に大丈夫なんだろか、と、前回のフン詰まり誤診のことがあったためにことさら懐疑的になっていた私は、思いました。なので、薬をもらう際にいろいろ聞いてみて、できればちゃんと検査してもらおうと意気込んで獣医に向かいました。

しかし受付にいたナースが、これまたインターン生みたいな雰囲気の、英国北部訛りの強い女性スタッフで、にっこり笑って対応してくれるものの、なんだか話がイマイチ噛み合わないのです。

事前に夫が電話で話した内容がよく伝わっていなかったのか、出してきたおくすりがノミ駆除用に月イチで与えているのと同じものだったので、
「いやこれはノミ予防として与えてるので家にあります。今回は回虫が出たんです」と言うと、
「あー回虫。んだば、これなんかどうだんべ、3ヵ月に1回与えるタイプだっぺ」(北部訛り強め)。
いや、どうだんべって言われても、私は獣医じゃないからわからないっぺ。というか、3ヵ月に1回? 予防じゃなくて処方なのに、そんなに間隔あいちゃっていいのかしら。
「あの、今回初めて回虫が出たんですけど、ちゃんと検便しなくていいんですかね?」と聞くと、
「あ、検査ご希望で? その場合は別に予約さ入れてもらわねえと」……いや、ご希望というか……。

とまあ、このように暖簾に腕押しみたいな感じで埒があかないので、もやもやっとした気分のままひとまず回虫用のおくすりだけもらって退散し、なんだかなー獣医、と思いながらもそれを夜タムタムに与えたところ、以後2日間ぐらいフンに回虫が混じって出てきたけれど、その後はピタッと出てこなくなりました。そして3ヵ月後に再び投与、今のところ再発はしておらず、ひとまず一件落着。屋内飼いだけに、初期の段階で回虫を発見できたのがよかったのかもしれません。

というわけで、これまでの獣医体験はなんともビミョーなのですが、結果的に問題は解決しているし、近所で他に選択肢もないので、まあいいかという感じでとりあえずやり過ごしています。みんなどこも似たようなものなんですかねえ。ドリトル先生みたいな獣医さん、どこかにいないかなあ。

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About Author

旅行誌や情報誌、広告等の編集&ライターの仕事を経て2005年に渡英、デヴォン州に約9ヵ月、ロンドンに約4年滞在。2008年頃からベースを弾き始め、バンド活動を開始。2010年より東京—ロンドンを行き来し、2014年に結婚を機に拠点をロンドンに移す。現在は主に翻訳ローカライゼーションの仕事をしながら、DIYパンク/インディポップ/ガレージポップ系の複数のバンドで活動中。 Etsy shopオープン中です:https://www.etsy.com/uk/shop/TubbingRummy

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