「素敵なお宅訪問!」記事に見る日英の違い

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第2回の今回は前回取り上げたイギリスの著名インテリアデザイナーJo Berrymanの自宅写真をご覧になってからどうぞ(前回記事はこちらです)。

Jo Berrymanはもともとファッションスタイリストでした。 が、1人目のお子さんが産まれた直後にロックバンドColdplayのベーシストだった前夫と別れてシングルマザーとして生活を立て直さなければならず、新しい生活の基盤として改装したのがハムステッドにあるこのおうちです。 このおうちは数々のメディアに掲載され、スタイリストからインテリアデザイナーへの転身のきっかけとなりました。

日英ふたつのモダン系インテリア雑誌に特集されています。 日本のモダンリビング誌の記事がこちら、イギリスのLiving etc誌の記事がこちらなので、両方開いてみてください。

雑誌はタイトルやサブタイトルで読者の注意を惹くのでタイトル・サブタイトルを比べると、雑誌の編集者(すなわち読者)が何を重視しているか一目瞭然です。
まずは、特集のタイトル(以下、拙訳)。
モダンリビング(日)は

イギリスのインテリアデザイナー、ジョアナさんの家で見つけた、インテリア・テクニック

ふむ、なるほど・・・ 日本人は「外国から学ぶ」ことが大好きなので、よくあるタイトルですね。
一方、Living etc.(英)は

Lots of love – Edgy British design and feminine glamour may seem unlikely partners but, in Jo Berryman’s lovingly styled home, they’re perfectly matched
エッジーな英国デザインとフェミニンかつグラマラスは一見合わなさそうだ、でもJo Berrymanが美しくスタイリングした家では、この2つは完璧にマッチしている

おっ、いきなり出ました、インテリアのコンセプト説明。 イギリス人、というよりヨーロッパ人に共通して言えると思いますが、コンセプトが大好きでコンセプトなしのデザインは考えられません。 美術館であれば作品に添えられた説明文。 家は住む人の世界観や個性を現す場所なので、タイトルにも「エッジーなのにグラマラス」という彼女の個性が表現されています。
サブタイトルに続きます。

モダンリビング(日)

Dining&Kitchen – ものが多いのに雑然としないのは「固める・空ける」のメリハリがあるから
Living – 大きな家具を「赤」にしてリビングのポイントに
Bedroom – 壁紙、アート、クッションでロマンチックな空間に
Workspace – サークル型のソファはコミュニケーションの仕掛け
Kids Room – 白い子供部屋には淡い色を散らして「小さく・可愛く」
Garden – 室内とひと続きの庭はリビングの一部

・・・と部屋ごとにテクニックの説明が続きます、「インテリア・テクニック」という特集なので当然なのでしょうが。

一方で、Living etc(英)

‘I love materials that change as they age – a home should be a breathable, organic space.’ 時を経るごとに変化する素材が好き – 家が呼吸するようなオーガニックなスペースであるべきよ
‘Yesteryear inspires me – anything that’s beautifully designed.’ 過ぎし日、美しくデザインされた全てのものにインスパイアされるわ
‘My aim has been to create a sense of contemporary chic, but marry it with my relaxed lifestyle’ コンテンポラリーでシックな感覚と私のリラックスしたライフスタイルを合わせた空間をつくろうとしているの

・・・と彼女のインテリアに対するphylosophy(哲学)が続きます。 もちろんイギリスの雑誌にも実用的な情報は入ります。 が、テクニックや情報や”Get The Look”として記事末尾にまとめられていることが多く主役はあくまで住む人がどう考えてつくったか。 とりわけ「憧れ」を提供するのが目的のハイエンドの雑誌がテクニック情報に溢れているということはまずありません。

例えば、古いもの・完全でないものこそ価値があるという価値観は彼女のこんな言葉にも現れています。

‘I love that the doors are crooked and the floorboards creak – I think that sort of thing gives a home personality.’ 家のドアが歪んでて床材がきしんでいるところが大好き、そういうものが家を魅力的にすると思うの

読者はこうやってプロのコンセプトや哲学に触れながら、自分の家のイメージを膨らませるのです。

全くアプローチが違うと思いませんか? もうひとつ日本と圧倒的に違うのは、「カントリースタイル」、「北欧スタイル」、「プロヴァンススタイル」という曖昧な雰囲気を現す「スタイル」を選ぶのではなく、いくつもの要素を組み合わせて「これが自分」というオリジナルのコンセプトをつくり出すこと。

例えば、下の写真はLiving etc.からですが、どんな言葉が頭に浮かびますか?

jo_berryman_bedroom

“old-style Hollywood glamour with a bit of Chateau Marmont thrown in”古きよき時代のグラマラスなハリウッドにChateau Marmont(ハリウッドにある城を模したホテル)をふりかけたもの

だそう。 ゼブラ柄のラグにアールデコのランプ・・・etc.細かいスタイルやその組み合わせの是非は二の次で自分の世界観を自信を持って表現しています。

次回からは、さらにもう少し「他の誰のものでもないオリジナルな」家をつくりあげた人たちのおうちを見ていきます。

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About Author

クローデン葉子

建築インテリアデザイン事務所 Yoko Kloeden Design 経営。 大学卒業後、総合商社や電機メーカーで海外を飛び回るバリキャリ生活を10年した後、夫婦でロンドンに移住、在英8年。 長い海外出張生活で経験した個性のかけらもないアパートやホテル、味気ない空港ラウンジに、空間がいかに人間の心に影響を与えているかに気づく。ロンドン到着後、猫も杓子も家の改装をする文化に衝撃を受け、建築インテリアデザインを学校で学び直す。 ロンドン内のデザイン事務所で修業した後、独立。現在は、南西ロンドンのスタジオで主に個人住宅や商業施設の改装案件を手掛ける。| Instagram @yokokloedendesign | 個人ブログ:https://blog.ladolcevita.jp/

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