プリラヴドにデッドストック…ファッショントレンドは過去のもの?

0


どんどん日が短くなり、しかもこの期におよんで!ますます混迷化するブレグジットのゆくえに、心まで暗くなってしまいそうな初秋のロンドン。それでも、恒例行事のファッションウィークは、無事、開催されました。加えて、英国ファッション業界がこぞって全精力を注ぎこむこのお祭り時に、かならず話題になる環境問題をアピールする活動家たちの抗議運動も、いっそうパワーが増したようです。じつは、今回のショーを総括する記事を読んでいて、「pre-loved プリラヴド」という耳慣れない言葉に出会いました。意味はわかるけど、いったい何を指すの? で調べると、「secondhand 中古」の同義語として使われているようです。なるほど、「中古」というのでは、同じもんでもイメージがちがってくる…。一方の「deadstock デッドストック」は、昔から使われているので、もうお馴染みですね。

記事によると、最新ファッションのトレンドは、その「プリラヴド」と「デッドストック」、そして「レンタル」なんだそう。というのも、ファッションウィーク開幕日に、真夏のような陽射しを浴びたファッショニスタたちが否応なく実感した地球温暖化は、現実を見るより夢を追っているファッションの世界でも、もはや無視できなくなっているのです。アパレル業界はこれまでも、社会的意識の高い消費者のハートとお財布の中身をつかむもうと、ファッションウィークが開催されるたびに、毛皮の不使用を宣言したりステートメントTシャツを着たモデルを登場させたりして、その時々で話題になっている環境問題に取り組む姿勢を見せてきたものの、ここへきて不都合な現実にぶつかり、倫理的商業的の両方で本気度を問われるところまで追いつめられている、といっても過言ではないかもしれません。

今回のファッションウィークではローラン・ムレが「使い捨てハンガー撲滅」の旗を振ったようです、また、ブリストルの織物工場では、安価になりすぎた繊維で作られゴミの山行きとなるファストファッションに挑戦すべく、相応な価格の、環境に優しい「分解性繊維」の生産を開始したというニュースも報じられています。でもね、コストを抑えて新製品をどんどん売ってこそ拡張できるビジネスというのは、アパレルにかぎらず、哲学や倫理観を優先して環境に優しくなればなるほど儲けが減る、という経済の矛盾を抱えているわけで、(環境なんてどうでもえ~と公言する厚顔無恥なトランプ大統領じゃあるまいし?経営者は表向きの顔と裏の顔を使い分けざるをえないのでは? というわけで、企業にしても個人にしても、環境問題でファッションがどこまでチャレンジできるのか、問われているようです。

もっとも、トレンドに乗りたい英国の消費者には、強い味方がいる!とすぐに浮かんだのが、運がよければとびきりの掘り出し物が見つかる、OXFAM のショップでした。そのOXFAM ですが、なんとファッションウィークの開催される9月を狙って、「この30日間は新しい服を買わずにいよう!」という禁欲的な「Second Hand September」キャンペーンを、ファッショナブルに展開中。けど、「プリラヴド」や「デッドストック」で、ホットなヴィンテージものが手に入らないアンラッキーなファッショニスタのために、ヴィンテージに似せた服を安く作って売ろうという企業が、必ずや現れるでしょうし、現に、ジーンズはハイウエストがすっかり主流になってる今日この頃、ローライズのジーンズをはいてられます? クロゼットの奥にあるはずの大昔のジーンズが見つからないなら、お手頃なのを買うしかない?

何しろ、人間の欲には終わりがありません。でも、人為的要因がもたらした異常気象による自然崩壊は、刻一刻と進んでいます。わたしたちがいま真剣に、いちばんに取り組まなければならないのは、(日も米も英も)民主主義を後退させる国家リーダーのつくお粗末な嘘をあばくことではなく(…キリないしさあ)、政党勢力の奪い合いでもなく、ましてや過去のしこりにこだわった国家間の争いでもなく、これからの世代のためにこの地球をどう守れるか、なのです。それでファッションも「これが新しい」式の「トレンドづくり」をやめて、すでにあるものを見直し、活用しようと…。けど、記事中にもあるように、ファッションが「これから先」を向くものでなくなったら、それは「ファッション」ではなくなる? まさに、そうなんですよね、厄介なことに。ああ、このままでは地球がヤバイという現実と、夢も見たいし新しい服も着たい欲望のハザマで悩む、気候変動時代のファッションーー。

The Choice is All Yours!

serendipity blog もよろしく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Share.

About Author

京都東山の生まれ。19歳から雑誌の仕事(編集者/スタイリスト/コーディネーター/ライター)に携わる。英国では、憧れのフローリストの下での花修行や、尊敬するアーティストが学んだカレッジで現代アートを勉強し、通算11年間のロンドンライフをエンジョイした。オーサカン(大阪人)となった今も、“心”はロンドナー。変わらぬ日課として読むUK のオンライン新聞から、旬なニュースをあぶそる~とロンドンのためにピックアップ。帰国後は本の翻訳を手がけ、この5月に『ヴェネツィアのチャイナローズ』(原書房)、2014年7月に『使用人が見た英国の二〇世紀』(原書房)、ほかを上梓。ロンドンで目覚めた世界の家庭料理チャレンジ&花を愛でる趣味ブログserendipity blogは、開設して11年目に突入。

ウェブサイト

Leave A Reply

CAPTCHA